効率的な筋トレの順番 についてのルールに今、決着をつけよう! これでもう悩まない。
我々が筋肥大トレーニングを行う場合、各筋肉部位ごとに2つ以上の種目を取り入れて鍛えることが一般的である。
例えば、大胸筋を鍛える場合、ベンチプレスだけで大胸筋のトレーニングを終える人は非常に稀だろう。
ベンチプレスを終えたら、その次は、ダンベルを使用してフライ系種目を行ったり、インクラインベンチを使用して刺激の入る角度を変えてプレス系を行ったりと、ふつう各部位のトレーニングに2種目以上取り入れるのが一般的な筋肥大トレーニングの中身であろう。
このように、通常は、複数の種目から構成されるトレーニングメニューを組むことが多い。
このとき、多くの方々から頻繁に頂くご質問として、「トレーニング種目の順序はどのように決定すればいいですか?」という類のご質問である。
我々は直感的に、大きな筋肉群(大筋群)から鍛え、そして小さな筋肉群(小筋群)を鍛える流れでメニューを組むことが多い(筋肉の大きさについてはこちら)。
現時点では、このように大筋群→小筋群の順序で鍛えるアプローチ方法が正しいとする見解が広く一般的に受け入れられているが、本当のところはどうなのだろうか?
コンテンツ
効率的な筋トレの順番 の正しい決め方
ボディビルやフィジーク競技を主たる目的とし、筋肥大トレーニングを行う場合、筋トレ種目の順番の決め方には大きく分けて二つの方法が考えられる。
ひとつ目は、コンパウンド種目(複合関節種目)から始める方法。
ふたつ目は、特に強化したい筋肉部位(弱点部位)から始める方法である。
これら2つの筋トレの順番の決め方の利点と欠点を科学的見地からみていくことにしよう。
コンパウンド種目(複合関節種目)から始める
複合関節種目(コンパウンド種目)は、複数の筋肉と関節を動員して行う種目のことで、BIG3(スクワット・ベンチプレス・デッドリフト)に代表されるように、高重量でトレーニングを行えるメリットがある。
一方、単関節種目(アイソレーション種目)は、単一の筋肉と関節のみを運動動作に動員する種目のことで、上腕二頭筋を鍛えるバーベルカールや大胸筋を鍛えるダンベルフライなどがその例である。
ダンベルフライをはじめに行うと、当然のことながら、ベンチプレス動作の主動作筋である大胸筋が疲労するため、その後に行うベンチプレスのレップ数や使用重量が低下する。
このように、あえて、主動作筋をあらかじめアイソレーション種目などで疲労させておき、その後、コンパウンド種目で主動作筋を徹底的に追い込むトレーニングテクニックを「事前疲労法」と呼んでいる。
しかし、この事前疲労法は筋肥大の観点からは、あまり効果的なテクニックではないようだ[1]。
詳しい解説は割愛するが、結局のところ、事前疲労法により主動作筋を先に疲労させてしまうと、その後に行うコンパウンド種目でまだ疲労していない補助筋肉の貢献度が高まるため、本来メインで鍛えたかったはずの主動作筋(大胸筋)への刺激が低下し、ターゲット部位における筋肥大の効果がむしろ低下してしまうことが研究により示されている。
なお、コンパウンド種目を行った後は、ターゲット部位が疲労した状態となり、大きな運動単位を動員することが難しくなるため、トレーニング後半は、高重量を扱わなくてもターゲット部位を集中的かつ効率的に刺激することのできるアイソレーション種目を行うことが望ましい。
これらの事実を簡潔にまとめると以下のようになる。
コンパウンド種目を始めに行うことで、ターゲット部位における筋肥大効果を最大限に高められる
このような、コンパウンド種目から始める方法の他にも、近年、その注目度を高めている方法がもうひとつある。
それは、ズバリ、最も発達させたい優先度の高い筋肉群をアプローチすることのできる種目から始めるという手法である。
この時、その種目がコンパウンド種目かアイソレーション種目であるかは重要ではない。
特に鍛えたい部位から鍛える
近年、ますます多くのトレーナーが、弱点部位などの特に強化したい筋肉部位をまず鍛える方法を採用している。
このとき、トレーニングメニューにコンパウンド種目が含まれているかどうかは重要ではない。
重要なのは、一番発達させたい部位を始めに鍛えるということである。
例えば、他の筋肉部位に比べて、上腕二頭筋の発達に顕著な遅れがみられる場合は、上腕二頭筋をまず始めに鍛えるべきである(時間的余裕のない人は、上腕二頭筋からトレーニングを開始する日を不定期でも良いので率先して設けるべきである)。
これまでに報告されている複数の研究[2,3]によれば(前回記事でも紹介したかもしれないが)、例えば、上腕三頭筋の発達を最優先したい場合は、上腕三頭筋のトレーニングから開始することが望ましいと結論付けられている。
事実、2010年に発表された研究報告[2]では、上腕三頭筋トレーニングを大胸筋トレーニングの前に行った場合、大胸筋トレーニングの後に行った場合と比較して、上腕三頭筋の筋肉増加量が有意義に高かったことが示されている。
さらに、他の研究結果においても、トレーニングの前半で行うことで、トレーニングの後半に行う場合と比較して、最大筋力や総レップ数に大きな伸びが認められたことが報告されている。
これは、鍛えたい部位を始めに鍛えることで、筋肉が全く疲労していない状態で筋収縮を行うことできるようになり、結果としてより多くの筋線維(運動単位)を動員することができるからであると考えられる。
筋トレの順番 のガイドライン
筋トレの順番の決め方は一通りではない。
各個人の目的に応じて筋トレの種目の順序を適切に設定する必要がある。
コンパウンド種目から行う場合
例えば、コンパウンド種目であるスクワットを最初に行う場合、スクワットの主動作筋である大腿四頭筋を構成する筋線維が最も強く運動に関与するため、大腿四頭筋における筋肥大効果が最も高くなる一方で、臀筋(お尻の筋肉)やハムストリングスの貢献度は低い。
そして、スクワットを終えた後に、殿筋やハムストリングスを主動作筋とする、デッドリフトなどの種目を行ったとしても、スクワットの実施により殿筋およびハムストリングスはすでにいくらか疲労しているため、これらの筋肉はその後、効率的に筋収縮を行うことができず、結果としてオーバーロードの達成が難しくなり、筋肥大効果は低下してしまうと考えられる。
別の例を挙げると、コンパウンド種目であるベンチプレスを最初に行う場合、ベンチプレスの主動作筋である大胸筋(および三角筋)を構成する筋線維が最も強く運動に関与するため、補助筋である上腕三頭筋の貢献度は低くなる。
そして、ベンチプレスの後に上腕三頭筋のトレーニングを行っても、先ほどと同様の理由で、すでにいくらか疲労してしまっている上腕三頭筋を効率的に鍛えることは難しくなると考えられるのである。
例えば、脚の筋トレを行う場合を考えてみよう。
脚の筋トレを週に1回行う場合は、トレーニング毎に、種目の順番をピリオダイズさせると良い。
例えば、スクワット→デッドリフトの順番でトレーニングを行い、大腿四頭筋群をメインターゲットとしてメニューを組んだ翌週は、デッドリフト→スクワットの順番で行い、ハムストリングス(および殿筋)をメインターゲットとして組むといったように、筋トレの順番をピリオダイズさせるのである。
脚の筋トレを週に2回程度行うことのできる場合は、筋肥大トレーニングの具体的メニューを紹介した記事でも紹介したように、大腿四頭筋メインの日、ハムストリングスメインの日を交互に行うようにすると良い。
また、一般に上腕三頭筋や上腕二頭筋は、大筋群(大胸筋や背中)のトレーニングの後に鍛えることが多いが、通常のトレーニングルーティンとは別に、定期的に、上腕二頭筋&三頭筋からトレーニングを開始する、いわゆる腕の日を設けるのも、上腕の発達には効果的な方法である。
効率的な筋トレの順番 のまとめ
筋肉疲労、神経系の疲労はトレーニングの後半に差し掛かるにつれ次第に蓄積する。
これにより、疲労した筋肉部位においては、多くの運動単位の動員が困難となるため、結果としてトレーニング後半で行う種目の筋肥大効果は低下する。
《参考文献》
[1] Gentil P,et al (2007) Effects of exercise order on upper-body muscle activation and exercise performance
[2] Simao R,et al (2010) Influence of exercise order on maximum strength and muscle thickness in untrained men
[3] Spineti. J,et al (2010) Influence of exercise order on maximum strength and muscle volume in nonlinear periodized resistance training