増量すべきか減量すべきか を確実に見極める方法(ガイドライン)を科学的根拠を基に詳しく解説します。
この記事を読んでわかること
- 増量すべきか減量すべきかを見極める方法
- 減量(または増量)を先に行うべき理由
- 適切な減量(および増量)方法
- 減量を手助けするサプリメント
「増量(バルクアップ)を先に行った方が良いですか?それとも、まず減量してから増量した方が良いですか?」という趣旨のご相談(ご質問)を頂く機会が非常に多い。
例えば、
- 増量したいが、今現在の体脂肪率から増量を行っても良いのか?
- 増量するよりも、先に減量をして筋肉のメリハリをはっきりさせた方が良いのではないか?
といった疑問により、増量すべきか減量すべきかを決断しかねるケースが実に多いのである。
そして現実問題として、増量を一旦中断して減量を先に行った方が良いにもかかわらず増量を長らく続けている人、または減量を一旦中断して増量にシフトした方が良いにもかかわらず減量を長らく続けている人が常に一定多数見受けられるのも事実である。
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増量すべきか減量すべきか
目標とするなりたい体型(ボディビルダー、フィジーカーまたはフィットネスモデル等)は明確に決まっているものの、その体型になるためにはどのようにアプローチをしていけば良いのか悩む人は非常に多い。
例えば、ボディビルダーのような低体脂肪率でかつ筋肉質の体型を目指す場合、増量を優先的に行えば良いのか?それとも減量してから増量を開始すべきなのか、ついつい悩んでしまうのも無理はない。
中には過去に減量を行った結果、自分が想像してたよりも一回りも二回りも小さい仕上がりになってしまい、それならば目標となる筋肉量を手に入れるまではとにかく増量し続けて十分な筋肉量を手に入れた後、減量期間を設けて理想の体型を手に入れるという戦略が正しいのではないか?と考える人もいるかもしれない。
このような様々な理由により、増量すべきか減量すべきかの正しい判断が一見、複雑かつ困難に感じてしまうのである。
しかし実際のところ、増量すべきか減量すべきかの正しい判断はこれから紹介するガイドラインを参考にすれば、非常にシンプルかつ明快に行うことができる。
増量すべきか減量すべきか のガイドライン
つまり、現時点での体脂肪率が高い場合は減量から開始し、体脂肪率が比較的低い場合は増量から行うといった具合である(理由については後述)。
増量すべきか減量すべきかのガイドライン
減量を先に行うべきケース
- 体脂肪率がちょっと高いなと感じている場合
- 体脂肪率が15%を大きく超えている場合
(女性の場合は25%)
増量を先に行うべきケース
- 体脂肪率が10%前後と低い場合
(女性の場合は20%前後)
それでは早速、減量を先に行うべきケースと増量を先に行うケースの両方のケースについて詳しく見ていくことにしよう。
まずは、上記ガイドラインにより、減量を先に行うべきであることが判明した場合について。
減量を先に行うべきケース
上記ガイドライン(の一つ目)にあるように、今現在の体脂肪率に対して率直に「ちょっと高いな」と感じている場合は、その時点からの増量は推奨されない。
当然のことながら、増量を行えば筋肉のみならず(ある程度の)体脂肪の蓄積も避けられない(しかし、リーンバルクを行えば体脂肪の蓄積は最小限に抑えることができる)。
つまり、すでに現在の体脂肪率がすでに「ちょっと高い」と感じている時点から増量を開始すれば、増量後はその時点よりもさらに体脂肪が高くなってしまう。
このような状況下でのさらなる増量の実施は、筋トレに対するモチベーションの低下を招く可能性がある。
モチベーションが低下しやすい
体脂肪率が高い状態で筋トレを行うと、筋トレに対するモチベーションが低下する可能性が高くなる。
もちろん、コンテストに出場できるくらいの極端な低体脂肪率(例えば5~10%未満)を年がら年中維持する必要性やメリットは全くないが、1年の少なくとも半分以上を増量期間に充てる以上、体脂肪率をできるだけ低く維持して増量を行った方が見た目も格好よく保つことができ、ジムに通うモチベーションも維持しやすいのではないだろうか。
増量期だからといってタップリと体脂肪を蓄積させてしまえば、それだけでモチベーションがガクンと下がってしまうのは私だけだろうか。
例えば、上写真の左の状態でジムに通うよりも、右の状態でジムに通う方が楽しいに決まっている(少なくとも私の場合は)。
自分の筋肉を鏡で見るのが楽しい!と感じる状態を維持することこそが筋トレや食事管理に対するモチベーションを高く維持する秘訣であり、筋トレライフがより楽しいものとなるのではないだろうか。
また体脂肪率を低く維持することは単に見た目だけの問題ではなく、高い筋肥大効率の維持および太りにくい体質を維持する上で非常に重要となる(後述)。
上記ガイドライン(の二つ目)にあるように、男性の場合で体脂肪率が15%を大きく超えている(女性の場合は25%)場合においても、その時点からのさらなる増量は筋肥大効率の最適化の観点からは推奨されない。
理由は次の通りである。
体脂肪率が高くなると太りやすい体質になる
一般に体脂肪率が高くなると体脂肪が蓄積しやすい体質へ変化[1]するだけでなく、筋肥大効率が鈍化[2]することが明らかとなっている。
これは、体脂肪量の増加につれてインスリンに対する感受性が低下することが主な原因であると考えられている。
インスリンとは、筋タンパク質合成(筋肉の合成)のスイッチをオンにしたり、アミノ酸などをはじめとする各栄養素を筋肉に運搬する働きを担う筋肥大において非常に重要なアナボリックホルモンであるが、体脂肪量の増加につれてインスリンに対する感受性が鈍化し、結果として筋タンパク質合成(筋肥大)の効率が著しく低下する[1]のである。
さらに、インスリンに対する感受性の低下は体脂肪の燃焼効率の低下を招き[2]、体脂肪がますます蓄積しやすい体質へと変化するのである。
つまり、体脂肪率を低く維持しておくことで、
- 筋タンパク質合成(筋肥大)の効率を高く維持し、
- 体脂肪が蓄積しずらい体質を維持することができるのである。
体脂肪率が高くなるとテストステロン値が低下する
体脂肪率が高くなるとテストステロン(男性ホルモン)値が低下し、エストロゲン(女性ホルモン)値が上昇することが研究報告[3]により明らかとなっている。
テストステロンとは、筋肉増大(タンパク同化作用)を持つアナボリックホルモンのことで、筋肉および骨格の発達、そして性機能の維持には欠かせない男性ホルモンの一種である。
これらの理由により、体脂肪率が15%を大きく超えた時点で一旦増量期を終え、減量期間を設けることが強く推奨されるのである。
また減量の結果、自分が想像していたよりも一、二回り小さい仕上がりになってしまってもがっかりする必要は全くない。
これは誰もが一度は通る道であり、適切に増量期と減量期を交互にサイクルしていけば生涯かけて手に入れることのできる大半の筋肉量を僅か2~3年程度で手に入れることができる(上図は私の筋肉増加の推移)。
減量に役立つサプリメント
残念ながら、市場に出回っている多くの脂肪燃焼系サプリメントはその効果が過剰に広告されていたり、あるいは使用者側が誤った解釈の下(例えば、減量用のサプリメントさえ飲めば、摂取カロリーを減らさなくても体重が減るという誤解釈の下)で脂肪燃焼系サプリメントを摂取し、結果として脂肪燃焼効果が全く出ないというケースが多い。
しかしながら、減量期の摂取カロリーおよびPFCバランスを適切に設定した上で、適切に使用することにより脂肪燃焼効率を高める効果が期待できる脂肪燃焼系サプリメントが存在するのも確かである。
そこで、減量を本気で考えている人におすすめの脂肪燃焼系サプリメントをいくつか紹介しておきます。
カフェイン
カフェインは、その興奮作用によりトレーニングでの集中力を高めるプレワークアウトサプリの主成分として良く知られているが、実はカフェインには代謝を上げる効果もあることはあまり広く知られていない。
カフェインの代謝アップ効果
カフェイン摂取600 mgあたり100 kcalのカロリーが余分に消費されることが実証されている。
この100 kcalというのは一見して大したカロリー消費には聞こえないかもしれないが、日々コーヒー、プレワークアウトサプリ、ファットバーナーから摂取するカフェイン量を考えると、決して無視することのできない消費カロリー数となる。
例えば、1日あたり300 mgのカフェインを1ヶ月間摂取した場合、カフェインが持つ代謝アップ効果により追加で消費されるカロリーは、
100 kcal×300/600×30日=1,500 kcal
となり、この消費カロリーが体脂肪を燃焼することで消費されたと仮定するとカフェインを摂取するだけで知らず知らずのうちに約200 gもの体脂肪が減少することになるのである。
カフェインの摂取目安量
現実的なカフェイン摂取の上限量としては1日あたり400~600 mg程度に留めておくのが無難である。
これは一般的なプレワークアウトサプリだと2~4スクープ、ホットコーヒーだと約10杯分に相当する。
私の場合は、プレワークアウトサプリを自作しており、1回あたりのカフェイン摂取量が200 mlとなるようにしている(コーヒーをたくさん飲むため、プレワークアウトに配合するカフェインは少なめにしている)。
ファイナルバーン(ファットバーナー)
私が以前ミニ減量を行った際に使用した脂肪燃焼系サプリメントが、ファイン・ラボから発売されているファイナルバーンである。
ファイナルバーンには主成分として、
- カルニチン 1,200mg
- 唐辛子粉末 150mg(カプサイシン 2 mg)
- ガラナ末 450mg(カフェイン 20mg)
- 緑茶抽出物 300mg(カテキン 96mg)
といった脂肪燃焼効果を高める成分が配合されており、適切な食事管理と組み合わせて摂取することで減量の速度を高めることができると考えられる(各成分についての詳しい解説はこちら)。
これらの結果、まずは減量から開始しようと思われている方は、以下の関連記事にて減量期の摂取カロリーおよびPFCバランスの正しい設定方法について詳しく解説しているので是非ご一読下さい。
増量を先に行うべきケース
ここまでは、減量を先に行うべきケースについて紹介してきました。
ここからは、増量を先に行った方が良いケースについて紹介していきます。
その理由は次の通りである。
低体脂肪率は筋肥大効率を最適化する
これまでに紹介したように、体脂肪率が10%前後と低い場合はインスリンに対する感受性が高まり、結果として筋タンパク質合成(筋肉の合成)効率を高く維持することができるのである。
それだけなく体脂肪率が低い場合、テストステロン(男性ホルモン)値を高く維持し、エストロゲン(女性ホルモン)値を低く抑えることができるので、筋肥大効率を最適化し、なおかつ太りにくい体質を維持することができるのである。
増量期間を長く設けられる
また、増量開始の時点で体脂肪率が低いということは、増量(筋肉量を増やす)期間を長く設定できることを意味する。
つまり、体脂肪率が低い場合は体脂肪を極力増やさないようにして増量(=リーンバルク)を行うことで、1年のうちより長い期間を増量期間に充てることができるため、筋肉量を効率的に増加させていくことができるのである。
リーンバルクのすすめ
今紹介したように、増量期間をできるだけ長く設けるにはリーンバルクと呼ばれる増量方法を行うことが強く推奨される。
リーンバルクとは
体脂肪率を極力増やさないようにして筋肉量を増やす増量方法のことである。
これに対して、体脂肪の蓄積を恐れずに摂取カロリーを大幅に増やして筋肉量を増やす増量方法をダーティーバルクと呼ぶ。
このリーンバルクを行うには、自分が消費するカロリー(消費カロリー)よりも少しだけ多いカロリー(摂取カロリー)を摂取することにより、実現することができる。
一見して、摂取カロリーを大幅に増やすダーティーバルクの方が、摂取カロリーを僅かに増やすリーンバルクよりも、より多くの筋肉を増やせるのではないか?と思われる方もおられるかもしれないが、一定間内に増やすことのできる筋肉量には限界があるため[4]、摂取カロリーを大幅に増やしたからといって筋肉量の増加速度が増えることはない。
事実、2011年に発表された「リーンバルクとダーティーバルクの両者における筋肉増加量の違い」について調査した研究報告[3]では、リーンバルク(2900 kcal/日)とダーティーバルク(3600 kcal/日)との間には、筋肉増加量には顕著な差が見られなかったと報告されている。
また、ダーティーバルク(3600 kcal/日)を行った被験者らの体脂肪の増加量は、リーンバルクを行った被験者らのおよそ5倍に達した事も分かった。
これらの理由により、男性の場合で体脂肪率が10%前後、女性の場合で体脂肪率が20%前後の場合には、減量を行うのではなく増量から先に行うべきなのである。
これらを踏まえて、まずは増量から開始しようと思われている方は、以下の関連記事にて体脂肪を極力付けずに増量する増量方法(リーンバルク)の摂取カロリー数、PFCバランスの設定方法およびその他ポイントについて詳しく解説しているので是非、ご一読下さい。
<関連記事>
増量すべきか減量すべきか のまとめ
本記事では、増量から行うべきなのか?あるいは減量から行うべきなのかを適切に見極めるガイドラインについて詳しく解説を行いました。
筋肉量を最も効率的に増やしていくには、体脂肪率を低く維持したまま、できるだけ長期間にわたって増量を行い、体脂肪率が15%を大きく超えた時点で一旦増量を中断して減量を行い体脂肪率を10%前後まで戻す、というように増量期と減量期を交互に繰り返す戦略が最も合理的である。
本記事のポイントをを以下にまとめておくので参考にして下さい。
本日のTAKE AWAY
減量から行うべきケース
- 自身の体脂肪率が直感的に高いと感じる場合
- 体脂肪率が15%を大きく超えている場合
(女性の場合:25%)
増量から行うべきケース
- 体脂肪率が10%前後の場合
(女性の場合:20%)
体脂肪率が高い場合の欠点
- モチベーションが低下する
- 筋肥大効率が低下する
- 太りやすい体質になる
参考文献
[1]Jin Zhang,et al (2005) Insulin disrupts β-adrenergic signalling to protein kinase A in adipocytes
[2] Wang X,et al (2006) Insulin resistance accelerates muscle protein degradation
[3] Rohrmann S, et al (2011) Body fatness and sex steroid hormone concentrations in US men
[4] Eric R Helms,et al (2014) Evidence-based recommendations for natural bodybuilding contest preparation: nutrition and supplementation