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レップ数が異なると筋トレ効果も異なる
ご存知の通り、レップ数の取り方によってトレーニングで得られる効果は異なってくる。
そして、2016年に発表された筋肥大とレップ数の関係について調べた有名な研究報告[1]によると、高負荷トレーニング(2~4 RM)と、中負荷トレーニング(8~12 RM)における筋肥大率と最大筋力の伸び率をそれぞれ調べたところ次のような結果が得られたという。
筋肥大(筋量増加)について
- 中負荷(8~12RM)グループ:筋肉サイズ10%UP
- 高負荷(2~4RM)グループ:筋肉サイズ4%UP
※大腿四頭筋サイズ
最大筋力の向上について
- 中負荷(8~12RM)グループ:筋力16%UP
- 高負荷(2~4RM)グループ:筋力29%UP
※スクワットの1 RM記録
(※中負荷・高負荷、両者とも3セットで限界回数まで挙上を繰り返した)
このように、筋肉量の増大(筋肥大)を主たる目的としてトレーニングを行う場合は、高負荷のウエイトよりも中負荷のウエイト(8~12 RM)を使用してトレーニングを行う方が筋肉量の増大にはより効果があるといえるのである。
これらの事柄を一言でまとめると以下のようになる。
筋肥大を主たる目的とする場合、中負荷(8~12レップ)でトレーニングを行うとよい(セット数が同じ場合)。
しかし、話はまだここで終わらない。
さらに重要なポイントを押さえておく必要がある。
それが筋肉増加量とトレーニングボリュームの重要な関係である。
筋肥大の主要ファクターはトレーニングボリューム
実は、筋肥大の成果を大きく左右する張本人は、レップ数などではなく、トレーニングボリュームなのである。
というのも、多くの研究報告[2~5]により「高負荷トレーニングと中負荷トレーニングを比較した場合、両者のトレーニングボリュームが等しい限り、両トレーニングで合成される筋肉の増加量は等しい」ことが分かっているのだ。
つまるところ、こういうことである。
実際のところ、これまでに発表された数多くの研究報告[2~4]が、この事実を強くサポートしている。その具体例をいくつか紹介しよう。
つまり、レップ数よりもトレーニングボリュームこそが筋肥大の成果を大きく左右する主要ファクターなのである。
この問いに対する答えを得るために、ここで筋肥大を誘発する3つのメカニズムを思い出してみよう(前回記事より)。
筋肥大を誘発する3つのメカニズム
筋肥大を誘発するメカニズムはたったひとつではなく、少なくとも3つあることがこれまでの臨床研究により分かっている[5]。
筋肥大を誘発する3つのメカニズム
- プログレッシブテンションオーバーロード(斬進的な過負荷)
- メタボリックストレス(代謝ストレス)
- マスキュラーダメージ(筋肉の損傷)
これらの各メカニズムが、筋肥大プロセスにおいてある一定の役割を担っているのである。
それでは、これらの各メカニズムがどのように作用するのか順番に確認してみよう。
プログレッシブテンションオーバーロード
プログレッシブテンションオーバーロードは、高重量ウエイトを使用して筋肉に強烈な張力を生じさせ、扱うウエイト重量を段階的に達成していくことで誘発される(オーバーロードについて詳しく)。
メタボリックストレス
メタボリックストレスは、高レップで筋肉の収縮を繰り返す(低負荷・高回数でパンプアップさせる)ことで誘発される。
このパンプアップ作用により、乳酸やクレアチニンをはじめとする代謝物質が産生され、これが成長ホルモンの分泌を促進させ、結果的に筋肥大が誘発されるのである[6]。
マスキュラーダメージ
マスキュラーダメージは、筋肉の損傷させることで誘発される。
例えば、トレーニング翌日に良くみられる筋肉痛は筋肉が損傷を受けた証であり、この筋肉の損傷により筋肉の回復および合成に必要なシグナルが生成され、筋肥大が誘発される。
冒頭でも紹介したように、これら3つのメカニズム全てが筋肥大を誘発する主要ファクターであるため、全メカニズムを考慮した幅広いレップ数の範囲(5~20RM)で筋肉を刺激することこそが筋肥大のポテンシャルを最大限に引き出す方法なのである。
つまり、単調な10レップ×3セットといったレップ・セットの設定では、筋肥大のポテンシャルを最大限に引き出すことは極めて難しいのである。
これらを踏まえて筋肥大のポテンシャルを最大限に引き出すトレーニングプログラムを指南しよう。
筋肥大に最適なレップ数 の具体例
筋肥大トレーニングにおいては、十分なトレーニングボリュームを確保し、幅広いレップ範囲(5~20 RM)で筋肉を刺激することが重要となる。
つまり、以下に示す3つの異なるレップ範囲をバランスよく組み合わせてトレーニングメニューを組むことで筋肥大のポテンシャルを最大限に引き出すことができる。
- 高負荷・低回数トレーニング:5レップ×4セット(インターバル:3~5分)
- 中負荷・中回数トレーニング:8~12レップ×4セット(インターバル:1~2分)
- 低負荷・高回数(パンプ) :15~20レップ×3~4セット(インターバル:30秒)
まずは高負荷・低回数(5 RM)で筋肉および神経系の発達を促し、最大筋力の向上に努める。(プログレッシブテンションオーバーロード)。
続いて、高負荷・低回数トレーニングだけでは十分なトレーニングボリュームを確保するのが難しいので中負荷・中回数(8~12レップ)トレーニングを取り入れて筋肥大に必要となるトレーニングボリュームを確保する。
また、マスキュラーダメージを誘発するためにネガティブ動作は重力に逆らうようにしてゆっくりと行うようにする(TUTを長く取ることでも筋肥大を誘発できる)。
そして、トレーニングの仕上げに低負荷・高回数のトレーニングを取り入れて仕上げに筋肉をパンプアップさせ成長ホルモンを分泌させ、筋肥大を引き出す(メタボリックストレス)。
このアプローチを大胸筋トレーニングに応用してみよう。
大胸筋トレーニングに応用した場合
ベンチプレス
5レップ×4セット(インターバル:3~5分)
インクラインダンベルプレス
8~12レップ×3セット(インターバル:1~2分)
ダンベルフライ
8~12レップ×3セット(インターバル:1~2分)
ケーブルクロスオーバー
15~20レップ×4セット(インターバル:30秒)
合計セット数:24セット
筋肥大に最適なレップ数 のまとめ
今回は、 筋肥大に最適なレップ数 に焦点を当ててみました。
筋肉量の増大を限りなく追及するには、決まりきったレップ数だけでアプローチを図るのではなく、ウエイト重量、レップ数、インターバル、トレーニング種目、ネガティブ動作といった様々な要素に変化を加えつつも十分なトレーニングボリュームを確保することが何よりのポイントとなる。
筋肥大を誘発する3つのメカニズムを日々のトレーニングに効果的に取り入れていこう。
参考文献
[1] Brad J. S,et al (2016) Differential Effects of Heavy Versus Moderate Loads on Measures of Strength and Hypertrophy in Resistance-Trained Men
[2] Schoenfeld BJ, et al (2014) Effects of different volume-equated resistance training loading strategies on muscular adaptations in well-trained men.
[3] Schoenfeld BJ, et al (2015) Effects of Low- vs. High-Load Resistance Training on Muscle Strength and Hypertrophy in Well-Trained Men.
[4] Weiss A, et al (2000) High intensity strength training improves strength and functional performance after stroke
[5] Schoenfeld BJ, et al (2010) The mechanisms of muscle hypertrophy and their application to resistance training
[6] Lowery RP,et al (2014) Practical blood flow restriction training increases muscle hypertrophy during a periodized resistance training programme.