筋トレ で増やせる筋肉量の限界を求めよう|9年間の筋トレで筋肉量はこう増える

[記事公開日]2019/01/26
[最終更新日]2020/03/23

筋トレ

筋トレ を懸命に行う人であれば、「ナチュラルで自分は一体どこまで大きくなれるのだろうか?」と疑問に思うこともあるのではないだろうか。

筋肉量の限界

 

その他にも、トレーニーが抱く疑問あるあるとして、

  • 筋トレを真剣に頑張ればカルム・ボン・モガーと同じくらい大きくなれるのだろうか?
  • 筋トレを始めた頃は筋肉はすぐに成長したのに最近は筋肉が大きくならないな。
  • 自分は効率的に筋肥大を達成できているのだろうか?

 

といった疑問を抱くのは至極当然のことである。

 

一般に、これらの疑問に対する明確な答えを得ることは容易ではないが、筋肉増加に関するモデル(簡単な計算式)を使えば、我々がナチュラルで増やせる筋肉量の限界値を非常に単純な計算を使って見積もることができる。

ナチュラル

 

本記事では、筋トレ歴9年のワークアウトサイエンス管理人の筋肉増加の推移(実際のデータ)と文献データ[1,2]を参考にしながら、ナチュラルで増やせる筋肉量の限界値の求め方を分かりやすく紹介します。

 

あとどのくらいの筋肉量を増やすことができるのかという、自分の客観的な立ち位置を把握しておくことで、これまでに行ってきた筋トレや食事管理が適切であったかどうかを振り返ることができ、これからの筋肥大プロセスを最適化することができるはずである。



 

 

1ヵ月間に増やせる筋肉量は?

筋肉量の限界

 

我々が1ヵ月間に一体どれだけの筋肉量を増やせるのかを知るには、筋肉量増加に関する有名なモデルを利用すれば簡単に求めることができる。

現在、1ヵ月間に増やせる筋肉量を見積もるモデルはいくつか提唱されているが、その中でも最も有名かつ信頼のおけるモデルを今回は紹介しよう。

 

アラゴンの筋肉増加モデル

オーバーロード

 

フィットネス界における権威として知られるアラン・アラゴン氏のモデルによれば、ほぼ全ての一般男性は1ヵ月あたり以下の割合で筋肉量を増加させることができるという[1]。

初心者(トレーニング継続1年以下)
体重の1~1.5%

中級者(トレーニー継続年数2~3年)
体重の0.5~1%

上級者(トレーニング継続年数4年以上)
体重の0.25~0.5%

※1ヵ月あたり




このモデルでは、筋トレの継続年数が1年以下の人を初心者として定義する。

また、同じように筋トレの継続年数が2~3年の人を中級者筋トレの継続年数が4年以上の人を上級者として定義する。

そしてこのモデルでは、筋トレの継続年数が長くなるにつれて、筋肉量の増加速度は徐々に緩やかになるという想定がなされている。

筋肉量の限界

 

ワークアウトサイエンス管理人の場合を例として挙げると、筋トレを始めた頃の体重は63 kg程度だったので、初心者の頃の私が1ヵ月間に増やせる筋肉量は体重の1~1.5%なので(63×0.01=)0.63 kg~(63×0.015=)0.945 kgということになる。

逆に、筋トレの継続年数が9年目を迎えた今現在は上級者に分類されるが、上級者が1ヵ月間に増やせる筋肉量は体重の0.25~0.5%なので(85×0.0025=)0.2 kg~(85×0.005=)0.4 kgということになる。

このように、ワークアウトサイエンス管理人にアラゴンの筋肉増加モデルを当てはめた場合の計算結果をまとめると、以下のようになる。

月あたりの筋肉増加のペース

筋トレ0~1年目:
630~950 g

中級者2~3年目:
350~700 g

上級者4年目以降:
200~400 g

 

これらの数値結果からも分かるように、筋トレの継続年数が長くなるにつれて筋肉量の増加ペースは次第にスローダウンすると考えられるのである。

 

 

実データでモデルの真偽を検証

減量期

 

上記の筋肉増加モデルは一体どのくらい信頼できるのか? 懐疑的になられている方も多いはず。

そこで今回は、私が筋トレを開始した2011年から記録した筋肉増加の推移を紹介し、上記のモデルがどの程度信頼のおけるモデルなのかを検証したいと思います。

 

なお、筋肉量(除脂肪体重)の測定には、インボディ(InBody)を利用をしています。

インボディ

 

インボディ(公式サイトとは、体内に微弱な電流を流すことで得られる電気抵抗値(インピーダンス)を基にして、体重、除脂肪体重、骨格筋量、体脂肪量といった基本的な情報から部位別(右腕・左腕・体幹・右脚・左脚)の筋肉発達レベルを診断することができる高精度体組成計のことである。

このインボディ測定を定期的に行うことによって、筋トレの成果を客観的に判断することができるので、インボディが利用できる環境にある人は3ヵ月~半年に1回程度のペースで利用したいところである。

 

なお、インボディの測定結果の正しい見方については以下の関連記事を参考にして下さい。



 

 

 

筋トレ を9年間継続して増えた筋肉量

筋肉量の限界

 

上のグラフは、私が筋トレを開始した月を”0“として、除脂肪体重(筋肉量)の増加量の推移のデータをプロットしたものである。

上のグラフからはっきりと読み取れるように、初心者(赤い部分)の期間における除脂肪体重の増加量(グラフの傾き)が著しく大きいことが分かる。

この赤い部分は、いわゆるニュービーゲイン(Newbie Gains)と呼ばれる期間で、筋トレを開始して間もない初心者が短期間のうちに筋肉量を大幅に増やせる期間のことである。

その後、月日が経過するにつれ、除脂肪体重の増加速度は次第に緩やかになっていくことが見て取れる。

広く一般に言われている「筋トレを始めてからの数年間は筋肉が最も発達しやすい期間」という事柄はどうやら事実のようである。

 

次に、上のグラフから、初心者、中級者、上級者の各期間における月あたりの筋肉増加量の平均値を求めてみることにした。

その結果を示すと以下のようになる。

月あたりの筋肉増加のペース

筋トレ0~1年目:
モデル: 630~950 g
実データ:570 g

中級者2~3年目:
モデル:350~700 g
実データ:170 g

上級者4年目以降:
モデル:200~400 g
実データ:50 g

 

このように、私の月あたりの筋肉増加量はアラゴンの筋肉増加モデルよりもやや緩やかなペースで推移していることが分かる。

 

ポイント

このように、実際の筋肉増加のペースがモデルよりも遅い場合であっても落ち込む必要は全くない。

最も大事なのは、着実に筋肉量を増大させていく取り組み(適切な筋トレと食事管理)を継続して行うことと、定期的に筋肉増加の推移を記録することである。

 

 

ナチュラル で筋肉量はどこまで増やせるか

ボディビル大会

 

ナチュラルで増やせる筋肉量のポテンシャルは、自分のFFMI値(=マッチョ指数)を求めることで簡単に知ることができる。

FFMI値とは、Fat Free Mass Indexの頭文字をとったもので日本語に訳せば、除脂肪量指数となる。

 

このFFMI値を求めることで、自分の今現在の筋肉の発達レベル(レベルの一覧表は以下に掲載)を客観的に判断することができるのである。

 

FFMI値は以下の数式に自分の値(除脂肪体重および身長)を代入するだけで簡単に求めることができる。

FFMI値=除脂肪体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

 

ここで、除脂肪体重(FFM=Fat Free Mass)の求めた方が分からない人のために、除脂肪体重の求め方について簡単に説明します。

除脂肪体重とは、体重から体脂肪量を差し引いた量のことで、例えば体重が70 kgで体脂肪率が15%の場合、除脂肪体重は70×(1-0.15)=59.5 kgとなる。

 

計算するのが面倒な人はこちらのサイトにアクセスし、自分の体重体脂肪率(おおよそでOK)を入力するだけで簡単に除脂肪体重を求めることができるので是非活用してもらいたい(下のスクリーンショット画像で、aに体重を、bに体脂肪率を入力すると除脂肪体重が求められます)。

 

FFMI値の計算例

ナチュラル

 

そして、今求めた除脂肪体重身長(メートル単位)を以下の数式に入力して実際にFFMI値を求めてみよう。

FFMI値=除脂肪体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

 

私の場合を例に挙げて計算方法を紹介します。

私の除脂肪体重はおよそ73.1(kg)で身長は1.68(m)であるので、上記の数式にこれらの値を代入すると、次のようになる。

FFMI値=73.1÷1.68÷1.68=25.9

 

このように、簡単にFFMI値を求めることができるのである。

 

 

ナチュラルで到達できるFFMI値は?

 

一般に、ナチュラルで到達できるFFMI値は25前後が限界だと言われている(上の論文)[2]。

筋肉量の限界

この「ナチュラルで到達できるFFMI値の限界は25である」という見解は、ステを使用していないナチュラルボディビルダー74名と、ステを使用している非ナチュラルボディビルダー83名のFFMI値を比較した研究報告[2]から導き出されたものである。

同報告によれば、調査対象となったナチュラルボディビルダーの中でFFMI値が25を超える者はおらず、その一方で、約半数の非ナチュラルボディビルダーのFFMI値は25を超えていたと報告されている(以下のグラフ)。

 

以下のグラフは、ナチュラルボディビルダー非ナチュラルボディビルダーのそれぞれのFFMI値の分布を示したものである。

筋肉量の限界

 

上のグラフから読み取れるように、ナチュラルボディビルダーのFFMI値は17~25にかけて分布している一方で、非ナチュラルボディビルダーのFFMI値は25を大きく超えて分布していることが分かる。


ナチュラル で到達できるFFMI値は25が限界?

筋肉はどれだけ減るか

 

では、ナチュラルの場合、25を超えるFFMI値をたたき出すことは不可能なのか?

実際のところ、必ずしも不可能という訳ではなさそうなのである。

 

というのも、同研究報告によれば、ステが使用される前の時代(1930~1950年代)に活躍していた(ナチュラル)ボディビルダーたち(ミスター・アメリカの歴代優勝者)のFFMI値を調査したところ、彼らのFFMI値は平均で25.4、そして彼らの中にはFFMI値が27を超える者が3名28を超える者が1名存在していたという。

 

つまり、当時の彼らがナチュラルであったという仮定が正しいとするならば、ナチュラルで25を超えるFFMI値を有することは不可能ではないということになる。

しかしながら、FFMI値を求める際に必要になる除脂肪体重の測定にはある程度の誤差が避けられないため、厳密なFFMI値を求めるのは困難であるということを付け足しておきたい。

 

FFMI値による筋肉発達レベルの指標化

筋肉の発達レベルFFMI値
一般人18~19.5
一般的なトレーニー20~21
上級者トレーニー21.5~22.5
遺伝的にも優れたトレーニー23~23.5
(一般に)ナチュラルで到達できる限界24~24.5
遺伝的に恵まれていれば到達できる限界25~25.5
ナチュラルかどうか疑われるレベル26~
上記で計算した自身のFFMI値がどのレベルに分類されるのかを調べることで今現在の筋肉の発達度合いを客観的に判断することができるので是非活用して頂きたい。

 

 

FFMI値から分かること

筋肉量の限界

 

同報告から得られるデータをさらに分析すると、次の2つのポイントを導き出すことができる。

その1.ステロイドを使用した場合、ナチュラルの場合と比較してFFMI値は平均で3増加する。

これを筋肉量(kg)に換算すると、ステを使用した場合、ナチュラルの場合よりも平均で約8~10 kg多く筋肉量を増やすことができるという計算になる(どおりで非ナチュラルの人たちは桁違いに大きいはずだ)。

 

その2.ナチュラルで25を上回ることは可能。

FFMI値ナチュラルでFFMI値=25を達成するには、筋トレや食事管理を徹底して行うだけでなく、遺伝的要素にも大きく左右されるため、容易なことではないが、決して不可能ではない


筋トレ で得られる筋肉量の限界

筋肉量の限界

 

ナチュラルの場合、筋トレにより増やせる筋肉量の限界量男性の場合で18~22 kg女性の場合で9~12  kg程度であると言われている。

 

私の9年間の筋トレにより筋肉量は(=除脂肪体重)は54.8 kgから74 kgまで増加したので、正味の筋肉増加量は、 (74-54.8=)19.2 kgとなり、私が生涯で増やせる筋肉量の限界に近づきつつあるということが言える。

このことは、上のグラフ(除脂肪体重の推移)のグラフの傾きが筋トレ継続4年目以降、限りなく緩やかになりつつあることからも容易に分かる。

 

 

筋トレ で増やせる筋肉量の限界のまとめ

筋トレ

 

今回の記事では、アラゴンの筋肉増加モデルおよびFFMI値による筋肉の発達レベルの診断方法について詳しく紹介しました。

自分はあとどのくらいの筋肉量を増やすことができるのか?これまでの筋肉増加のペースは適切なペースであったかという事柄を確認することで、これまでの筋トレ内容および食事管理が適切であったかどうかを振り返ることができ、今後より効率的に筋肥大を達成できるようにになるはずである。

今回紹介した内容に関する参考記事(以下のリンク)も是非一読ください。

 



 

参考文献

[1] ALAN’s VAUIT

[2] Kouri Elena M,et al (1995)  Fat-Free Mass Index in Users and Nonusers of Anabolic-Androgenic Steroids