筋肉を最も効率的に増やすための、タンパク質(プロテイン)の摂取方法に関する6つの最重要ポイントを再確認し、筋トレの成果を最大限に引き出そう。
この記事で分かること
- 推奨されるタンパク質の摂取量
- 摂取すべきタンパク質の種類
- 筋肥大に最適な食事回数
- 1回の食事で摂取すべきタンパク質の量
- プロテインを摂取すべきタイミング
コンテンツ
筋肥大におけるタンパク質の重要性
タンパク質(=プロテイン)は単に筋肉の材料となるだけでなく、筋タンパク質合成(筋肉合成)を引き起こすトリガーとしての役割も担っている。
つまり、筋肉の合成を引き起こすキッカケを作るのもプロテインの重要の役割なのである。
そして、筋タンパク質合成(筋肉の合成)を引き起こすキッカケは大きく2つあり、1つ目は今お話ししたタンパク質の摂取、そして2つ目は筋トレの実施である。
つまり、今ある筋肉よりも多くの筋肉を手に入れるためには、筋トレの実施とプロテインの摂取を並行し、筋タンパク質合成のレベルを常日頃から高く引き上げる取り組みを行うことがとりわけ重要になってくるのである。
そして、プロテインの摂取は、筋トレを行うのと同じくらい筋肥大を最適化する上で重要な要素となるため、タンパク質の摂取の仕方次第で最終的な筋肥大の成果は大きく異なってくるのである。
一流アスリートのタンパク質摂取量
まずは、世界で活躍するアスリートたちが1日に一体どれくらいのタンパク質を摂取しているのかを見ていくことにしよう。
ここに、オリンピックをはじめとする国内外の諸大会の第一線で活躍する一流のアスリートたち(ただしこのデータにはボディビルダーは含まれていない)の食事内容を追跡・調査した研究報告[1]がある。
この調査結果[1,2]によれば、クロスフィットや体操といった競技を行うアスリートたちの場合、1日あたりのタンパク質の総摂取量は体重1 kgあたり1.5 g(各選手の平均値)であることが分かった。
つまり、体重70 kgの人の場合、1日のタンパク質摂取量は(70×1.5=)105 gということになる。
この体重×1.5 gというタンパク質の量は、アスリートに推奨されるタンパク量[体重(kg)×1.3~1.8 g]のガイドライン内にうまく収まっている[3]。
そして、筋肉量を効率的に増やす必要のあるボディビルダーの場合は、上記タンパク質量よりも多くのタンパク質を摂取することが推奨されている。
つまり、筋肥大を最優先に考えている人は、1日あたり体重(kg)×2.2 gのタンパク質を確保することを第一目標にするとよい。
また、減量期間中は、タンパク質の摂取量を増やすことが推奨されている(減量期における筋肉量の減少を最小限に抑えるため)[3]。
また、上記のタンパク質の推奨量は良質なタンパク質(以下で説明)を摂取した場合における推奨量であり、良質でないタンパク質を摂取する場合は、上記推奨量を上回るタンパク質の摂取が推奨される。
筋肥大を最適化したい場合:体重(kg)×1.7 gのタンパク質を摂取
筋肥大を最大化したい場合:体重(kg)×2.2 gのタンパク質を摂取
筋肥大に最適な”良質なタンパク質”とは
ここからは、筋肥大を最適化するにはどの種類のプロテイン(動物性?それとも植物性?)を摂取するのが望ましいのかについて考えてみよう。
まず、意外に気がつきにくいのだが、一般的な食事に含まれるタンパク質のうち、およそ30~40%が植物性タンパク質から構成されているという事実がある(もちろん個人差あり)。
我々の普段の食事に含まれている主な植物性タンパク質として挙げられるのが米類、パスタ類、パン類といった食品類である。
そして、これらの植物性タンパク質は、牛肉や鶏肉などの動物性タンパク質よりも筋肥大効果が低いことがこれまでの研究報告により明らかとなっている[5]。
これは、植物性タンパク質には、筋タンパク質合成応答を効果的に高める働きのあるロイシンをはじめとする必須アミノ酸の含有量が少ないため、筋タンパク質合成の最適化が難しいと考えられているからである[5]。
つまり、動物性タンパク質を100 g摂取して得られる筋タンパク質合成応答と同レベルの筋タンパク質合成応答を植物性タンパク質で達成するには、100 gを超える植物性タンパク質を摂取する必要があるということである。
つまり、筋肥大の観点からは、ロイシンをはじめとする必須アミノ酸を豊富に含む牛肉、鶏肉または魚類といった動物性タンパク質が良質なタンパク質に分類され、一方、動物性タンパク質と同等の筋肥大効果が期待できない植物性タンパク質は非良質タンパク質に分類することができるのである。
つまり、動物性タンパク質よりも植物性タンパク質の摂取量の割合が高い傾向にある人は、筋肥大効率を最適化するために先ほど紹介した摂取推奨量を超えるタンパク質の摂取が必要となる。
タンパク質は何回に分けて摂取すべきか
ここまでのところで、筋肥大の最適化に必要となるタンパク質の摂取量、そしてタンパク質の種類を紹介しました。
ここからは、これらのタンパク質を1日の中でどのように配分して摂取すれば最も効率的に筋肥大を引き出せるのかを考えてみよう。
多くの人の場合、1日に摂取するタンパク質のほとんどは朝食、昼食、夕食の3回の食事から摂取され、朝食よりも昼食の方が、また昼食よりも夕食の方がタンパク質の摂取量は高くなる傾向にある(特に日本人の場合)。
つまり、各食事から摂取されるタンパク質量は、均一ではないことが多いのである。
そして、ここにポイントが隠されている。
それは、1日の中でのタンパク質の配分方法が筋タンパク質合成応答に影響を与えるという研究報告である[7]。
これらの諸研究報告によれば、1回の食事でたった5 g程度の(良質な)タンパク質を摂取するだけでも筋タンパク質合成を引き起こすことができることが分かっている。
これは、卵1個を食べるだけでも筋肉の合成スイッチがオンになるということである。
しかし、たった5 gのタンパク質を摂取しただけでは筋タンパク質合成レベルをMAXに高めることはできない。
逆に、1回の食事で良質なタンパク質を約20 gすれば、筋タンパク質合成応答をほぼ最適化できることが明らかとなっている[8]。
しかし、一度に40 gを超えるタンパク質を摂取した場合の筋タンパク質合成応答は、一度に20 g摂取した場合に比べてわずか10~20%ほどしか増加せず、1回の食事でタンパク質を含む食事をドカ食いしても筋肥大効率を効率的に高めることは難しいと考えられているのである[8,9]。
多くの人は、朝食時に良質なタンパク質を上記量摂取できていないことが多いので、ゆで卵やプロテインシェイク等を朝食のメニューに追加する等して上記タンパク質量を確保することが望ましい。
1回の食事で全てのプロテインを摂取したらどうなるか
ときどき「1回の食事で1日に必要なタンパク質を一度に摂取したらどうなりますか?」との質問を頂くことがあるので、今回はこの事についても言及しておこう。
分かりやすく言い換えると、1回の食事で大量のタンパク質量を摂取したからといって、我々の体がそれ以降の食事で摂取するタンパク質を拒絶・吸収しなくなるかと問われれば、そうではなく、各食事で摂取するタンパク質はそれぞれのウィンドウで筋タンパク質合成レベルを引き上げ、筋肥大を誘発するのである。
したがって、朝食でたくさんのタンパク質を摂取したからといって、昼食時・夕食時に摂取するタンパク質量を減らしてしまえば、昼食・夕食のタイミングで期待できる筋肥大のポテンシャルを阻害することになりかねないのである。
寝る前のプロテインは必要か
就寝中は筋トレで損傷した筋肉の修復・回復が行われるため、筋肥大において非常に重要な時間帯となる。
無論、寝ている間は食事を一切摂ることができないので、就寝前の食事の仕方によっては寝ている間にカタボリック状態に陥る可能性が大い考えられる。
さらに、別途研究報告[12]によると、就寝前にプロテインを摂取した場合、摂取しなかった場合と比較して、より多くの筋肉増加量が認められたという。
したがって、睡眠中の筋肉の修復・合成プロセスを最適化するためには、就寝前に十分な栄養補給を行っておくことが重要となる。
繰り返しにはなるが、夕食で摂取したタンパク質量に関わらず、就寝前にプロテインパウダーなどのタンパク質を摂取することで、就寝中の筋肥大ウィンドウにおいて筋タンパク質合成レベルを高く引き上げることができるため、この観点からも就寝前のプロテイン摂取が推奨される。
プロテインと筋トレ のまとめ
全ての人がみな同じ目標を持ち、筋トレを行っている訳ではない。
筋トレに対する熱意や目標、筋トレに費やす時間、そして日々の生活における筋トレの重要度は、人それぞれに異なる。
そこで今回は、①最低限の労力・努力で筋肥大の成果を合理的に手に入れたい人、②最大限の労力・努力で筋肥大の成果を最大限に引き出したい人のそれぞれの場合のタンパク質摂取におけるポイントをまとめておきます。
①最低限の努力で合理的成果を得たい人
- 1日につき、体重(kg)×1.7 gのタンパク質を確保する
- 1日の食事回数は3~6回の範囲で個々のライフスタイルに合わせる
- タンパク質の配分はとりわけ気にしなくて良い
②最大限の努力で最大の成果を得たい人
- 1日につき、体重(kg)×2.2 gのタンパク質を最低限確保する
- 良質なタンパク質の摂取を心がける
- 食事回数は4~6回の範囲で個々のライフスタイルに合わせる
- 各食事で摂取するタンパク質量をできるだけ均一にする
- 各食事につき20~40+ gのタンパク質を必ず摂取する
- 就寝前のプロテイン摂取を行う
参考文献
[1] Gillen JB,et al (2016) Dietary Protein Intake and Distribution Patterns of Well-Trained Dutch Athletes
[2] Wardenaar FC,et al (2015) Validation of web-based, multiple 24-h recalls combined with nutritional supplement intake questionnaires against nitrogen excretions to determine protein intake in Dutch elite athletes
[3] Phillips SM,et al (2011) Dietary protein for athletes: from requirements to optimum adaptation
[4] Bandegan A,et al (2017) Indicator Amino Acid-Derived Estimate of Dietary Protein Requirement for Male Bodybuilders on a Nontraining Day Is Several-Fold Greater than the Current Recommended Dietary Allowance
[5] van Vliet S, et al (2015) The Skeletal Muscle Anabolic Response to Plant- versus Animal-Based Protein Consumption
[6] Gorissen SH, et al (2016) Ingestion of Wheat Protein Increases In Vivo Muscle Protein Synthesis Rates in Healthy Older Men in a Randomized Trial
[7] Mamerow MM, et al (2014) Dietary protein distribution positively influences 24-h muscle protein synthesis in healthy adults
[8] Witard OC,et al (2014) Myofibrillar muscle protein synthesis rates subsequent to a meal in response to increasing doses of whey protein at rest and after resistance exercise
[9] Macnaughton LS,et al (2016)The response of muscle protein synthesis following whole-body resistance exercise is greater following 40 g than 20 g of ingested whey protein
[10] Wall BT,et al (2016) Presleep protein ingestion does not compromise the muscle protein synthetic response to protein ingested the following morning
[11] Res PT,et al(2012) Protein ingestion before sleep improves postexercise overnight recovery
[12] Snijders T,et al (2015) Protein Ingestion before Sleep Increases Muscle Mass and Strength Gains during Prolonged Resistance-Type Exercise Training in Healthy Young Men