今回は、筋トレ中級者がついつい犯してしまう筋トレにおける間違いを4つ紹介するとともに、それらの改善ポイントを文献データ[1~7]に基づいて詳しく解説します。
それでは早速、4つの間違い&改善策を順番に見ていくことにしよう。
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1.トレーニングボリュームが多すぎる
トレーニングボリュームこそが筋肥大を誘発する最重要ファクターであることはこれまでにも当サイトで紹介してきた(トレーニングボリュームって?)[文献1~3]。
一般に、トレーニングボリュームと筋肉増加量の関係は以下のように完結にまとめることができる。
- トレーニングボリュームが増えれば筋肉の増加量も増える
- トレーニングボリュームが同じなら扱うウエイト重量が異なっても筋肉増加量はほぼ同じになる
つまり、トレーニングボリュームを増やせば筋肉も増加するのだが、トレーニングボリュームを無限に増やせば筋肉も無限に増大するのかというと、そういう訳ではない。
というのも、トレーニングボリュームはある一定量を超えたときに、トレーニングボリュームと自身の回復能力(休養)のバランスが崩れ始め、これにより疲労が蓄積し、やがてトレーニングパフォーマンスの低下が始まる。
そして、この状態でさらにトレーニングボリュームを増やしていくと最終的にはオーバートレーニングの状態となり筋力低下・筋肉量の減少を招いてしまうのだ。
以下の図を見てみてほしい。
トレーニングボリューム(セット数)が増加するにつれて筋肉増加量(曲線)も増加するが、トレーニングボリュームがある一定値(10~15セット)を超えたあたりから筋肉増加量の伸びは減少し始め、20+セット/週を超えたあたりで筋肉の増加は見込めなくなることが見て取れる。
つまり、20~25セット/週を大きく超えるセット数でトレーニングを継続すると、トレーニングと回復のバランスが崩れ、筋肥大効果が低下するのである。
週当たりの合計セット数を22セットに設定した場合の大胸筋のトレーニングメニューの一例を紹介しよう。
例)大胸筋のトレーニングを週に2回行う場合
セッション1
- ベンチプレス4セット
- インクラインベンチプレス4セット
- ケーブルクロスオーバー3セット
セッション2
- ダンベルプレス4セット
- ディクラインベンチプレス3セット
- 加重ディップス4セット
セット数の合計:22セット/週
2.トレーニングの度にオールアウトしている
トレーニングの度にオールアウトしている場合は注意が必要である。
しかし実際は、トレーニングの度にオールアウトするようなトレーニング戦略は最適なアプローチ方法とは言えないのである。
これにはいくつかの理由があるのだが、ひとつは筋肥大における本質的な原則が関係している。
それが、オーバーロードの原則である。
そして、段階的に増やしていくべき負荷というのが、トレーニングボリュームなのである。
先ほど、トレーニングボリュームこそが筋肥大を誘発する最重要ファクターであることを紹介した。
ということは、毎回オールアウトするようなトレーニング戦略を組んでしまうと、徐々に負荷を増やす戦略であるオーバーロードを達成するのが困難になるだけでなく、疲労が蓄積しやすくなりオーバートレーニング状態に陥ってしまうのである(毎度オールアウトしようとすると結果的にトータルボリュームが低下してしまい、筋肥大効率が鈍化するというのも理由のひとつである)。
オーバーロードの具体的方法
オーバーロードの具体的な達成方法を紹介しよう。
先ほど紹介したグラフをもう一度見てもらいたい。
各筋肉部位の週当たりのセット数の合計が10セットに達するまではトレーニングボリュームと筋肉増加量はほぼ比例関係にあることが見てとれる(もちろん個人差あり)[7]。
そして、さらにセット数を増やしていくと筋肉増加量は徐々にスローダウンし、20+セット(赤線)を超えたあたりが筋肉増加を見込めるセット数の上限値となっていることが分かる(先ほども紹介した)。
このようにトレーニングメニューを組めば、確実にトレーニングボリュームを段階的に増大させることできるので筋肉の増大を効果的に達成することができる。
オーバーロードの具体的なプランを紹介するので参考にしていただきたい。
オーバーロードの具体的プラン
オーバーロード (1~7週) | セット数 | 負荷設定(1 RMの%) |
---|---|---|
1週目 | 15 | 65% |
2週目 | 17 | 65% |
3週目 | 19 | 70% |
4週目 | 21 | 70% |
5週目 | 23 | 75% |
6週目 | 25 | 75% |
7週目(ディロード) | 8 | 65% |
3.ディロード期間を設けていない
トレーニングに熱心なトレーニーになればなるほど、ディロードを取り入れない傾向が高い。
ディロード期間を定期的に設けず、毎度のトレーニングでオールアウトし続けると、最終的にオーバートレーニング状態に陥ってしまい、症状が進行すると最終的に筋力および筋量の低下を招く。
その心配はご無用。
2011年に発表された研究報告[5]によると、ディロード期間を設けずにトレーニングを継続したアスリート選手群と、6週間ごとに3週間のディロード期間を設けたアスリート選手群との間に筋肉量および筋力の差は認めらなかったとしている。
それどころか、ディロード後のトレーニング再開時において筋肉量および筋力に大きな飛躍が認められたと報告されている。
2017年に発表された最新の研究報告[6]によれば、トレーニングを丸2週間休んだ場合においても筋肉の減少は全く認められなかったと結論付けている。
もちろん、トレーニングを丸2週間休めば筋肉は一回り小さくなったように感じるが、これは筋肉に蓄えられる筋グリコーゲンと水分量が一時的に減少することによるものであり、筋肉そのものが実際に減少してる訳ではないのでご安心を。
また、オーバーロードの原則に従いトレーニングボリュームを段階的に増やしていくトレーニングプログラムを組んでいる場合は、オーバーロードの最終週の後にディロード期間を必ず取り入れる必要がある。
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4.睡眠の重要性を過小評価している
筋肉を大きくしたくてうずうずしているそこのあなた。
ジムで筋トレに励んだ後は、良質な睡眠時間を十分に設けるように心がけよう。
睡眠時はテストステロンやIGF-1(インスリン様成長因子)といった筋肥大プロセスに極めて重要な役割を果たすアナボリックホルモンが多く分泌される時間帯であり、筋肉を効率的に回復および成長させるには十分な睡眠時間を確保する必要がある。
諸研究により、慢性的な睡眠不足に陥ると、アナボリックホルモンであるテストステロン値が低下し、逆にカタボリックホルモンであるコルチゾール値が上昇することが分かっている。
とりわけテストステロン値については、睡眠時間が8時間から1時間減少するごとにテストステロン値がおよそ15%ずつ低下すると報告[4]されている。
筋肥大における睡眠の重要性の詳しい内容については<【筋トレと 睡眠 】 睡眠 が筋肥大にもたらす4つのプラスの効果>のページをご覧いただきたい。
筋トレ方法の間違い のまとめ
今回は、中級トレーニーによくみられる筋トレ方法の間違いを4つ紹介しました。
今回のポイントをもう一度簡潔にまとめると、
トレーニングボリュームは多ければ多いほど良いというものではない
- トレーニングボリュームがある一定値を超えると疲労が蓄積し、トレーニングパフォーマンスが低下し、最悪の場合筋力・筋量が減少する
毎回オールアウトする戦略は最良のアプローチではない
- オーバーロードの原則に従い段階的にトレーニングボリュームを増やしていくことで、オーバートレーニングを防ぎ、筋肉への負荷を着実に増やしていくことができる
ディロードは積極的に取り入れるべきである
- オーバーロードの原則によりトレーニングボリュームを増大させていくと神経系・筋肉へのストレスおよび疲労が蓄積するが、ディロード期間を取り入れることで筋肉を完全に回復させ以前よりも大きく成長させることができる
睡眠は筋肥大の成果を大きく左右するファクターである
- 睡眠時は筋肉が大きく成長するための重要な時間帯であり、良質な睡眠時間を十分に(8時間程度)確保することにより、アナボリックホルモンの分泌を促進し、カタボリックホルモンの分泌を抑制することができる
これらのポイントが少しでもお役に立てれば幸いです。
参考文献