いつも限界まで追い込んでトレーニングを行っているのにも関わらず、思うように筋肉が大きく成長しないと悩んでいるそこのあなた。
むやみに全てのセットでオールアウトさせてトレーニングを行うと疲労の蓄積が加速し、トレーニングパフォーマンスの低下を招き、最終的に筋肥大効率が低下することが報告されている[1]。
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オールアウト は筋肥大に必須か?
これまでは、もうこれ以上挙上できないという限界までレップ数を重ね、オールアウトさせることで筋肉に十分な刺激を送り込み、疲労させることで筋肥大のポテンシャルを最大限に引き出すことができると考えられていた。
YouTubeやトレーニングマガジンなどをひとたび開けば、筋肉隆々のボディビルダーたちが極限まで追い込みオールアウトさせている姿が目に飛び込んでくる。
その姿を目の当たりにすると、あたかも全てのセットでオールアウトさせるのが筋肥大を加速させる最も良い方法であるかのように錯覚してしまいそうになる。
例えば、2016年に発表された研究報告[2]では、実験に協力した若年男性を、アームカール(4セット)を限界回数まで行うグループと、限界回数に達する1~2レップ手前でアームカールを終えるグループの2つに分け、12週間にわたりトレーニングを継続させたところ、両グループで上腕二頭筋の筋肉増加量は同程度を値を示したことが報告されている。
この結果をサポートするように、2018年に発表された研究報告[3]では、レッグエクステンション(3セット)をオールアウトさせるグループと、オールアウトさせないグループとの2つに分け、12週間にわたりトレーニングを継続させたところ、両グループで大腿四頭筋の筋肉増加量は同程度の値を示したことが報告されている。
その他にも、オールアウトさせた場合とオールアウトさせなかった場合とで筋肉増加量に大きな差は認められなかったと主張する上記同様の研究報告[4,5]は多くなされている。
しかし、これは筋肥大のポテンシャルを最大限に引く出していく上でオールアウトさせる必要が全くないと言っているのでは決してない。
オールアウト はオーバーロードに必要
筋肉量を着実に増加させ続けるには、トレーニングの度にこれまで経験したことのないような過負荷を筋肉に与え続けていくことが必要不可欠となる。
これをオーバーロードの原則という。
つまり、筋肉を着実に増やしていくには、前回のトレーニングよりも高重量のウエイトを使うか、レップ数を伸ばすか、あるいはセット数を増やして、徐々に負荷(つまりトレーニングボリューム)を増大させてく必要があるのである。
事実、2010年の研究報告[5]においても、オールアウトさせることで筋肥大のポテンシャルを最大限に引き出せる可能性があると結論付けられている。
それでは「全てのセットでオールアウトさせれば、筋肥大のポテンシャルをさらに高められるのでは?という疑問が浮かんできそうである。
全てのセットでオールアウトするデメリット
一般に、オールアウトするセット数を増大させると、1回のトレーニングあたりの総トレーニングボリュームが顕著に減少することが分かっている(疲労によりレップ数が減少するため)[6]。
当サイトワークアウトサイエンスを長くご利用いただいている読者の方であればもうお気づきかもしれないが、トレーニングボリュームは筋肥大の成果を最も大きく左右するファクターであり、トレーニングあたりのトレーニングボリュームの減少は、筋肥大効率の低下を意味する。
さらに、全てのセットでオールアウトさせてトレーニングを行うと、疲労が早い段階で蓄積し、トレーニング後半で行う種目に悪影響を及ぼしたり、オーバートレーニングの状態に陥りやすくなり、トレーニングパフォーマンス、筋力、筋量の低下を招く恐れが出てくるのである。
事実、最新の研究報告[3]では、オールアウトは筋肥大において効果的なトレーニングテクニックではあるが、あまりに高頻度でオールアウトさせるとテストステロン値の低下、そしてストレスホルモン”コルチゾール”値が上昇し、筋肥大を最適化できない可能性があると結論付けられている。
筋肥大を最適化するオールアウトの取り入れ方
筋肥大を最適化するオールアウトの具体的な取り入れ方を紹介しよう。
例)1種目につき3セット行う場合
- 1セット目:オールアウトの1~2セット前で動作を終える
- 2セット目:オールアウトの1セット前で動作を終える
- 3セット目:オールアウトさせる
オールアウトさせる1~2セット前で動作を終える時のポイントとしては、完全にはオールアウトさせないが、オールアウトする一歩手前(限りなくオールアウトに近い)のところまで通常通り高強度で鍛えるようにすることである。
この感覚を掴むのに最初は苦労するかもしれないが、次のレップで「もう挙げらないかもしれない…」という限界に達する直前でそのセットを終わらせる。
そして最終セット(3セット目)では(必要に応じて)オールアウトさせると良い。
上記の方法でオールアウトを取り入れることで、疲労の蓄積を低減し、トレーニングボリューム(セット数)を効果的に増大させながらも、筋肥大の誘発に十分な刺激を筋肉に与えることができるようになる。
コンパウンド種目において特に効果的
このオールアウトのマネジメントはBIG3をはじめとする高重量を扱うコンパウンド種目で特に有効である。
というのも、コンパウンド種目ではアイソレーション種目に比べて、疲労度が大きく、また神経筋システムにも大きな負担がかかるため、上記のオールアウト・マネジメントが特に有効となる。
一方、アームカールやトライセプスエクステンションといったアイソレーション種目の場合は、オールアウトさせた場合でもコンパウンド種目に匹敵するレップ数の低下やダメージをもたらさないことから、積極的にオールアウトさせて良いと考えられる(研究報告[10]より)。
オールアウト マネジメントは筋トレ中上級者におすすめ
これまでに紹介したオールアウトのテクニックの導入が特に勧められるのは、トレーニング中・上級者である。
というのも、トレーニング経験が長くなるにつれ、扱うウエイト重量を増大させていくのが徐々に難しくなるため、トレーニングボリュームを増大させるためにはレップ数かセット数のどちらかを増大させる必要がある。
しかし増やせるセット数には限界があるので結局のところ、いかに各セットでのレップ数を増大させていけるかがトレーニングボリュームを増大させる上でのポイントとなる。
オールアウトは”過ぎたるは猶及ばざるが如し”である。
筋トレの オールアウト のまとめ
今回紹介した筋肥大のポテンシャルを最大限に高めるオールアウトの導入が勧められるのは次に当てはまる場合である。
- トレーニング中・上級者
- いつもオールアウトさせている
- トレーニングの疲れが次の日に残りやすい
- トレーニング後半で力を発揮できない
- 追い込んでるのに思うように筋肥大しない
- 高頻度(週5以上)でトレーニングを行う
- セット数をうまく増大させられない
そして、今回の記事における要点を最後にまとめておこう。
オールアウトを適切に取り入れることで、
- トレーニングパフォーマンスを維持
- 疲労の蓄積を軽減
- トータルのレップ数を増大
- 筋肥大のポテンシャルを最大化
オールアウトをうまくマネジメントして筋肥大のポテンシャルを最大限に引き出していこう。
参考文献
[1] Gandevia, S. C,et al (1998) Neural control in human muscle fatigue: changes in muscle afferents, moto neurones and moto cortical drive
[2] Sampson, J. A,et al (2016) Is repetition failure critical for the development of muscle hypertrophy and strength?
[3] Nóbrega, S. R.,et al (2018) Effect of Resistance Training to Muscle Failure vs. Volitional Interruption at High-and Low-Intensities on Muscle Mass and Strength
[4] Izquierdo, M,et al (2006) Differential effects of strength training leading to failure versus not to failure on hormonal responses, strength, and muscle power gains
[5] Willardson, J. M.,et al (2010) Training to failure and beyond in mainstream resistance exercise programs
[6]Schoenfeld, B. J.,et al (2017) Dose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass
[7] Martorelli, S.,et al (2017) Strength training with repetitions to failure does not provide additional strength and muscle hypertrophy gains in young women
[8] Marx, J. O.,et al (2001)Low-volume circuit versus high-volume periodized resistance training in women. Medicine and Science in Sports and Exercise
[9]Kumar, V.,et al (2012) Muscle Protein Synthetic Responses to Exercise: Effects of Age, Volume, and Intensity.
[10]Nóbrega, S.et al (2016) Is Resistance Training to Muscular Failure Necessary?