筋トレで成果(筋肥大)を出していく上で最も重要なことはトレーニングを継続することである。
前回の記事オーバーロードの原則でも紹介したように、筋肥大および筋力アップを継続的に達成し続けるには、身体がこれまでに経験したことのないような過負荷を段階的に与えていく必要がある。
高強度かつ高ボリュームのトレーニングをオールアウトし続けることはできないのである。
➡<参考>筋トレとストレスの物凄く深い関係|ストレスを溜めない生活をしよう
したがって今回は、つい軽視してしまいがちな休養の重要性に焦点を当て、筋肥大にプラスの効果をもたらす積極的休養(ディロード)の正しい取り方を紹介しよう!
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ディロード (Deload)とは
ディロードとは、トレーニングの強度やボリュームを一定期間意図的に減らすことで、蓄積した疲労を完全に回復させ、ディロード後の筋肥大を加速させる積極的休養法である。
ディロードを行わないとどうなるか?
ディロードを定期的に取り入れず、毎度のトレーニングでオールアウトしようとすると、オーバートレーニング状態に陥る。オーバートレーニング状態に陥ると、まず朝の目覚めが極端に悪くなる。そしてあらゆる事に対する意欲が減退する。さらに、慢性的な倦怠感により食欲が減退することがある。
症状が重度になると、食事をすることすら困難となる。さらに厄介な問題が、夜眠れなくなることである。疲れているはずなのにとにかく眠れない。そして極めつけが体重の減少である。一生懸命トレーニングしているはずなのに体重が減少するのである。
これはすべて私の実体験に基づくオーバートレーニングによる症状である。
ディロードを検討すべきトレーニーとは
前述したように、トレーニング上級者(高ボリューム+高重量)は、身体の回復により長い時間を要するため、休養が十分にとれない日々が続くと疲労が蓄積しやすくなる。したがって、トレーニングパフォーマンスの低下等の具体的症状がみられる場合は、ディロードを積極的に検討した方が良いかもしれない。
また、前回オーバーロードで筋肥大を加速させる具体的方法の中で紹介したように、オーバーロードの原則に従ってトレーニングサイクルを組む場合は、そのサイクルの最終週にディロードを取り入ることが必要となる。
ディロードの頻度および時期
身体からのメッセージにしっかりと耳を傾けて、オーバートレーニング気味だと感じたら積極的にディロードを検討すべきである。
トレーニング上級者の場合、2~3ヶ月毎に1~2週間のディロード期間(個人差あり)を設けると良い。ディロード期間中に身体の回復を実感したらその時点でディロードを中止しても良い。
オーバートレーニングかどうかを自己診断したい場合は以下の記事を参考にしていただきたい。
➡<参考>オーバートレーニングかどうかを見極める5つのポイント
ディロードに必要な期間
ディロードの期間は1~2週間を目安にする。身体の回復度合いに応じてディロードを中断しても良い。
ディロードの2つの効果
1.身体への負担を軽減
筋トレは生涯スポーツである。高重量のウエイトを扱う筋トレは関節などに負担をかけやすい。筋トレを長期的スパンで捉えたとき、ディロードにより身体を定期的に回復させ、怪我を防ぐことで末永く筋トレを楽しむことができる。
2.蓄積疲労を完全回復させ、トレーニングの刺激に対する感受性を高める
ディロードを適切に取り入れることにより、疲労した筋肉を完全に回復させるとともに、ディロード終了後のトレーニング再開時に、トレーニングの刺激に対する筋肉の応答が敏感になり、筋肥大を加速させることができる。
2011年に発表された研究報告[1]によると、ディロード期間を設けずにトレーニングを継続したアスリート選手群と、6週間ごとに3週間のディロード期間を設けたアスリート選手群との間に、筋肉量および筋力の差は認めらなかったという。
それどころか、ディロード終了後にトレーニングを再開した際、筋肉量および筋力に大きな飛躍が見られたという。
これはディロードにより筋肉が完全回復したのに加えて、トレーニングの刺激に対する感受性が高まったからだと考えられる。
ディロード の2つの具体的方法
方法1.トレーニング強度を下げる方法
トレーニングの強度(扱うウエイト重量)をおよそ半分にし、レップ数およびセット数は維持する。
例えば、ベンチプレス100 kgを8レップス、4セット行っている場合は、ウエイトを50 kgに設定して8レップス、4セット行う。
方法2.トレーニングボリュームを下げる方法
トレーニングのボリューム(セット数)をおよそ半分にし、ウエイト重量およびレップ数は維持する。
例えば、ベンチプレス100 kgを8レップス、4セット行っている場合は、ウエイト重量を維持したまま8レップス、2セット行う。
実際にディロードを行う際は上記の方法1または方法2から自分に合う方法を選択し、必要に応じて1~2週間行う。
ディロード時における注意点
ディロード期間中は過度な有酸素運動(HIITなどを含む)を行わないようにする(筋肉量の減少を招く恐れがあるため)。
ディロードのまとめ
ディロードの主たる目的は、トレーニング強度(またはボリューム)を意図的に一定期間下げることで蓄積した疲労を回復させ、筋肥大を再加速させることである。
トレーニング初心者や、オーバートレーニングになるほど高頻度かつ高強度でトレーニングを行っていない場合は、ディロードの必要性は低いがオーバーロードの原則に従ってトレーニングを行う場合はディロードは積極的に取り入れたい。
トレーニングは生涯スポーツである。ひとたび肩、肘、腰、その他関節を痛めてしまうと、トレーニングでオールアウトできなくなりトレーニングを楽しめなくなってしまう。
そうなってしまう前に、有意義にディロードを取り入れて、怪我を未然に防ぎ、筋肥大を加速させながら、より良いトレーニングライフを送ろう!
参考文献
[1] Ogasawara R, et al (2013) Comparison of muscle hypertrophy following 6-month of continuous and periodic strength training.