ドロップセット は筋肥大に本当に効果があるか

[記事公開日]2018/02/09
[最終更新日]2019/11/25

ドロップセット

ドロップセット は、筋肥大トレーニングにおける数あるテクニックの中で最も広く取り入れられているテクニックのひとつである。

 

今回はこのドロップセットの筋肥大への効果を科学的視点で検証し、ドロップセットの効果をワンランク高めるポイントを科学的根拠[1]を基に紹介しよう!

 

ドロップセットの効果に関するに関する最新情報(2019年11月現在)も本記事の最後に追記しています。

どうぞご覧ください。




 

 

ドロップセット とは

ドロップセット を行うマッチョ

 

ドロップセット とは、ウエイトの挙上が限界回数(オールアウト)に達したところでウエイト重量を(30~40%)落としてすぐさま(インターバルなしで)限界まで再度ウエイトを挙上させるサイクルを3~4回繰り返すトレーニングテクニックである。

 

 

ドロップセット の効果

 

ドロップセットを行うことで期待できる主な効果は以下の2つである。

  1. 筋肉を限界まで追い込むことによりメタボリックストレスを引き起こし、筋肥大を誘発する
  2. 短時間でトレーニングを終えることができる

 

このように、ドロップセットを行えば限られた時間でターゲット部位を効率的に追い込むことができるのでトレーニングの時間が十分に確保できない場合や、トレーニングを早く終わらせたい場合に非常に有効な手段であると考えられる。

 

ドロップセットの具体的方法

ダンベル
  1. まず筋肥大に適した重量(8 RM: 8 Repetition Maximum:8回の反復で限界となる重量)のウエイトを選ぶ
  2. ウエイトの挙上が限界回数に達したら即座にウエイト重量の70~80%の重量のウエイトに持ち替え、再び限界回数まで挙上を繰り返す
  3. 2が終わったらすぐさま、2で扱ったでウエイト重量の70~80%の重量のウエイトに持ち替え、再び限界回数まで挙上を繰り返す
  4. このサイクルを3~4回繰り返す

 

このすべての過程を終えたところで1セットとしてカウントする。

しかし、疑い癖の強い私はこんな疑問を抱いてしまうのである。


ドロップセットは筋肥大に本当に効果をもたらすか

減量期

 

この疑問を解決してくれる研究報告[1]を紹介しよう。

 

ドロップセットの効果を検証した実験

 

まず、実験に参加する16名の被験者(活動レベル:アクティブ)を2つのグループ、グループAグループBに分ける。

ドロップセット

 

グループA(通常のトレーニング方法)

  • トライセプスプッシュダウンを12レップス×3セット行う(通常のトレーニング方法)
  • セット間のインターバルは90秒

 

グループB(ドロップセット)

  • トライセプスプッシュダウンをドロップセット法で行う
  • 1セット目(12レップス)を終えてすぐ、ウエイト重量を20%落として直ちに2セット目を開始し、限界回数に達したらさらにウエイト重量をさらに20%落として限界回数まで動作を行う

 

 

そしてグループA(通常)およびグループB(ドロップセット)に属する被験者らはそれぞれ、上記トレーニングを6週間継続した後、最大筋力量および筋肉増加量の測定を行った。

 

実験結果

ドロップセット

 

両グループA、Bに属する被験者らの最大筋力の増加量および筋肉の増加量は以下のような結果となった。

まずは最大筋力の増加量について。

最大筋力について

  • グループA(通常)の筋力増加量:25.2%
  • グループB(ドロップセット)の筋力増加量:16.1%

 

このように、両グループ(A:通常、B:ドロップセット)において最大筋力の増加が認められたが、その増加度合いはグループA(通常のトレーニング)の方が高い結果となった。

 

➡つまり、ドロップセットは筋力向上を目的としたトレーニングには向かないことが分かった。

したがって、筋力向上を目指す場合は通常のトレーニングを行うべきである。

 

 

次は、筋肉増加量について。

筋肉増加量について

  • グループA(通常)の筋肉増加量:5%
  • グループB(ドロップセット)の筋肉増加量:10%

 

この結果からも分かるように、ドロップセットは筋肉量の増大に効果的なテクニックであることが分かった。

 

➡筋肥大を目的としたトレーニングを行う場合は、通常のトレーニングに加えて、ドロップセットを取り入れることで通常のトレーニングのみを行う場合よりも効率的に筋肉量を増加させられるのである



まとめ:ドロップセットを取り入れるべきか否か

ドロップセット yesno?

 

上記結果を考察すると、トレーニングにドロップセットを取り入れるべきかどうかはトレーニングを行う目的に応じて決定するのが良い。

 

筋力向上を目的とする場合

オールアウト

 

ドロップセットをトレーニングに取り入れる必要性はあまり(ほぼ)ないと考えられる。

 

筋肥大を目的とする場合

オールアウト

 

ドロップセットをトレーニングメニューに積極的に取り入れることで、通常のトレーニングで得られる筋肉増加量よりも多い筋肉量増加が期待できる。

ここで、押さえておくべきポイントがいくつかある。

 

 

ドロップセットは疲労度が高いテクニック

3分割の筋トレ

 

ドロップセットは筋肉の疲労度が非常に高いテクニックでもある。

研究報告によればグループA(通常のトレーニング)の疲労度は5.3であったのに対しグループB(ドロップセット)の疲労度は7.7であり、ドロップセットは通常のトレーニングよりも疲労が蓄積するテクニックであることが分かった。

ということは、例えばドロップセットをトレーニングの前半に取り入れるとトレーニング後半で疲労が蓄積しパワーダウンする可能性が非常に高くなる。

したがって、ドロップセットはトレーニング前半には取り入れない方が良い

 

 

ドロップセットの効果的な取り入れ方

筋トレでオールアウト

 

上記の理由により、トレーニング時間が限られている等の特別な理由がない限り、ドロップセットはトレーニングの終盤に追い込み種目として導入するのが良い。

その具体的な例を以下に示す。

 

例)上腕二頭筋の仕上げとしてケーブルカールを行う場合

  • 1セット目 12レップス
  • 2セット目 6レップス
  • 3セット目 8レップス

 

   ドロップセット

  • 4セット目 12レップス
    +限界回数(ウエイト重量30%減)
    +限界回数(ウエイト重量30%減)

 

このように、最終セットにドロップセットを取り入れることで、上腕二頭筋を極限まで追い込むことができる。

筋肥大と筋力アップには一定の相関関係があるため、筋肥大を効率的に目指すには通常のトレーニングとドロップセットの両方をうまく組み合わせることが重要となる。

 

 

ドロップセットを取り入れるポイント

自作プレワークアウトサプリ

ドロップセットをトレーニングに取り入れる上で押さえておくべきポイントを以下に示す。

  1. 筋肥大を目指す場合
  2. トレーニング後半の追い込みとして取り入れる
  3. 回数は決めず限界回数まで徹底的に追い込む
  4. フォームが崩れかけたらすぐさまウエイト重量を落とす
  5. ドロップセットにかける時間(TUT)を意識する

 

5.について補足

tut

 

筋肥大は、筋肉にかかるテンションを長く取るように意識して反復運動を繰り返すことで誘発される。

したがってドロップセットを行う際は、時計の秒針あるいはストップウォッチを使用してドロップセットの継続時間が45~60秒程度になるように意識しながら行うと良い。

 

ドロップセットで強烈なショックを筋肉に与えて筋肥大をさらに加速させよう!

 

ドロップセットの効果についての追記(2019年11月20日)

ドロップセット

 

2019年11年20日現在、ドロップセットの実質的な筋肥大効果について明らかになってきた。

結論は至極単純である。

筋力トレーニングを行うことで得られる正味の筋肥大効果は結局のところ、筋肥大を誘発するのに十分なレップ数(以後、筋肥大誘発レップ数と呼ぶことにする)を何回得られるか?という点に帰着する。

 

つまり、ドロップセットを取り入れようが取り入れまいが、トータルで得られる筋肥大誘発レップ数が同じである限り、得られる筋肥大効果も同じになるということである。

この観点から導き出されるドロップセットを取り入れる最大のメリットは、(通常のトレーニングで得られる筋肥大誘発レップ数とドロップセットで得られる筋肥大誘発レップ数が同じである限り)ドロップセットを行うことで短時間でトレーニングを終えられるという点である(時間のない忙しい人が、通常のトレーニングと同等の筋肥大効果を得たい場合にはドロップセットは効果的)。

逆に、ドロップセットを行うことにより筋肥大誘発レップ数が減少してしまえば、それだけ筋肥大効果は薄らいでしまうということである。

例えば、ドロップセットを取り入れることにより疲労が蓄積し、ウエイト重量を落としてすぐさまウエイトの挙上を開始したにも関わらず、すぐに限界回数を迎えてしまうような場合は、通常のトレーニングよりも筋肥大効果は減少してしまうということである。

(追記以上)




参考文献

[1] Julius Fink, et al. (2017) Effects of drop set resistance training on acute stress indicators and long-term muscle hypertrophy and strength