寝る前にプロテインを摂取すると筋肥大は加速するのか?それとも太る原因となるのか?
この記事を読んで分かること
- 寝る前のプロテイン摂取は太るのか
- 寝る前にプロテインは摂取すべきか
- 筋肥大を最適化する食事の条件とは
- 良質なタンパク質とは
- 筋肥大に最適な就寝前の食事内容とは
コンテンツ
寝る前に食事をすると太る?
誰もがこんなフレーズを一度は耳にしたことがあるだろう。
しかし、寝る前に食事をしたら太るという直感に基づいた認識は全くもって正しい解釈ではない。
2017年に発表された“夜食と体重増減の関係について調べた研究報告[1]においても、太るか太らないか(体重が増えるかどうか)は、1日を通した摂取カロリーと消費カロリーのバランスによって決まるものであり、就寝前に摂取する食事量には左右されないとはっきりと結論付けられており、やはり寝る前に食事をすると太るという解釈は誤りであることが分かる。
「就寝中は代謝が下がるのだから寝る前に食事をすれば太りやすいのでは?」とか「夜間のインスリン値は早朝時に比べて高いのだから寝る前に食事をすれば太りやすいのでは?」といった疑問を解決したい人は以下の記事を参考にして下さい。
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このように、筋肥大のポテンシャルを最大限に高めたいが「寝る前に食事をすると余分な脂肪が付くかもしれないから...」という理由でこれまで寝る前に食事(プロテイン摂取)を避けてきた人は、今後心配することなく寝る前に食事を摂って構わない。
筋肥大効率を高める 寝る前のプロテイン 摂取について
筋肥大効率を高める就寝前のプロテイン摂取につい考える前に、まずは筋肥大を最適化する食事の条件を押さえておこう。
筋肥大を最適化する食事の条件
前回記事でも紹介したように、食事を行う度に筋タンパク質合成(筋肉の合成)レベルを最大限に高めるには、1回の食事あたりに(最低でも)20 g~40 gのタンパク質が含まれている必要がある[1]。
というのも、良質なタンパク質20 g中には約3 gのロイシンが含まれており、この3 gのロイシンが筋タンパク質合成の応答を最大限に高める働きがあることがこれまでの研究により分かっているからである[2]。
また、同研究報告により1回の食事につき、十分量(約3 g)のロイシンが確保できない場合、筋タンパク質合成応答を最適ができない可能性が示唆されている[2]。
筋肥大効率を高める 寝る前のプロテイン 摂取
就寝中はトレーニングで損傷した筋肉の修復・回復が行われる筋肥大において非常に重要な時間帯となる。
もちろん、就寝中は食事を摂ることができないので、就寝前の食事の摂り方によっては就寝中にカタボリック状態に陥る可能性が大いにある。
また、先ほども紹介したように、寝る前に食事を摂ると太ると思い込んでいる人の場合は、就寝前2~3時間前までにその日最後の食事を摂り終えることが多く、栄養補給が行われない時間はさらに増大するため、カタボリック状態がさらに長引く可能性がある。
ゆえに、睡眠中の筋肉の修復・合成プロセスを最適化するためには、就寝前に十分な栄養補給を行っておくことが重要となるのである。
寝る前のプロテイン で筋肥大を加速
これまでの話の流れからも分かるように、就寝前にプロテイン(またはタンパク質を豊富に含む食事)を摂取しておくことで、プロテイン非摂取時に比べて、就寝中の筋タンパク質合成レベルを高く引き上げられることが複数の研究により明らかとなっている。
2017年に発表された研究報告[3]によれば、就寝前にカゼインプロテインを40 g摂取した場合、半分量(20 g)を摂取した場合と全く摂取しなかった場合に比べて、就寝中における筋タンパク質合成のレベルが顕著に増大し、そしてその効果が長時間持続することが分かった。
上のグラフからも読み取れるように、十分量(40 g)のカゼインプロテインを就寝前に摂取した場合、血中のアミノ酸濃度が長時間にわたり高く維持しているのが分かる。
また、筋タンパク質合成の応答を最大限に高めるのに必要となるタンパク質量は年齢にも大きく左右される。
同報告によれば、年齢が20~30歳の男性の場合は20 gのカゼインプロテイン摂取で筋タンパク質合成の応答を最適化することができるが、さらに年齢を重ねる場合は40 g程度のタンパク質が必要になると述べられている。
また、寝る前のプロテイン摂取と筋肥大との関係を調査した別途研究[4]において、20歳台前半の被験者らに12週間にわたる脚トレーニング(週3回)を行わせるとともに、就寝前に27.5 gのプロテインと15 gの炭水化物を就寝前に摂取させたところ、就寝前に何も摂取しないグループと比較して、大腿四頭筋の筋肉量が顕著に増加するとともに、最大筋力(1 RM記録)も有意義に増加したことが分かった。
これらの結果により、就寝前にプロテインを摂取することで、就寝中のアナボリック状態を長時間にわたり維持し、筋肥大プロセスを最適化することができると言えるのである。
就寝中の筋肥大効率を最大化する食事内容
ここまでのところで、
- 寝る前に食事をしても太らない
- 寝る前のタンパク質摂取は筋肥大効率を高める
ということは分かった。
次は、就寝中の筋肥大効率を最大限に高める食事内容について考えてみよう。
これまでに多くの研究機関により筋肥大効率やトレーニングパフォーマンスを高める食事内容に関する研究が行われてきた。
タンパク質と炭水化物の両方を含む「寝る前の食事」が筋肥大にどのような影響を与えるかについての詳細な調査を行った研究報告は現在のところあまり多くは存在しないが、プロテインを単体で摂取するよりも、プロテインと炭水化物の両方を含む食事を就寝前に摂取しておくことで食物の消化により多くの時間が必要となるため、結果として栄養素の吸収速度が緩やかになり血中のアミノ酸濃度を長時間にわたり高く維持することができると考えられている。
就寝前に最適なプロテインの種類は?
就寝中の筋タンパク質合成ベルを効果的に高めるには、良質なタンパク質を摂取する必要がある。
良質なタンパク質とは、筋肉の合成に重要な役割を果たす9種類の必須アミノ酸(=EAA: Essential Amino Acids)を含んだタンパク質のことで、牛肉、鶏肉、魚介類といったほとんどの動物性タンパク質にはEAAが含まれているため、良質なタンパク質源といえる。
言うまでもなく、ホエイプロテインは必須アミノ酸の含有率の高さや、タンパク質効率(=吸収効率)の高さの観点から最も良質なタンパク質の一種である[7]。
ソイプロテインも(ほぼほぼ)良質なタンパク質であるといえる。
実際のところ、摂取するタンパク質が良質なタンパク質である限り、どのタンパク質をしても筋肥大効率において大きな差は生まないが、就寝中の筋タンパク質合成レベルを少しでも長く維持したい場合は、吸収速度の速いホエイプロテインよりも吸収速度の遅いカゼインプロテインを寝る前に摂取するのが最良の選択である。
事実、2014年に発表された研究報告[6]によると、カゼインプロテインを就寝前に摂取した場合、ホエイプロテインを摂取した場合に比べて、起床時の空腹感をより効果的に抑制できることが分かった。
筋肥大を最適化する寝る前のプロテイン摂取のまとめ
今回は、就寝時における筋肥大効率を最大限に高める方法について文献[1~7]に基づいて紹介しました。
筋肥大効率を最適化するための就寝前の食事内容についてのポイントをまとめると次のようになる。
今回のTAKE AWAY
- 寝る前に食事をしても太る原因にはならない
- 食事毎に最低20 gの良質なタンパク質を含める
- 就寝前には十分量の良質なタンパク質を摂取する
- 就寝時はカゼインプロテインを摂取する
- タンパク質と共に(少量の)炭水化物を摂取する
ちなみに私が日本に住んでいた時は、バルクスポーツのビッグカゼイン(2kg)を寝る前に低脂肪乳に混ぜて摂取していました(アマゾンで買える国産カゼインプロテインの中ではコストパフォーマンスが最も良い)。
参考になれば幸いです。
参考文献
[1] Fong M,et al (2017) Are large dinners associated with excess weight, and does eating a smaller dinner achieve greater weight loss? A systematic review and meta-analysis
[2] Norton LE,et al (2009) Optimal protein intake to maximize muscle protein synthesis: examinations of optimal meal protein intake
[3] Kouw, Imre Wk, et al (2017) Protein Ingestion before Sleep Increases Overnight Muscle Protein Synthesis Rates in Healthy Older Men
[4] Snijders T, et al (2015) Protein Ingestion before Sleep Increases Muscle Mass and Strength Gains during Prolonged Resistance-Type Exercise Training in Healthy Young Men
[5] Wang, Wanyi, et al (2017) Co-Ingestion of carbohydrate and whey protein increases fasted rates of muscle protein synthesis immediately after resistance exercise in rats
[6] Ormsbee, Michael J, et al (2014) The influence of nighttime feeding of carbohydrate or protein combined with exercise training on appetite and cardiometabolic risk in young obese women
[7] Pasin, G.,et al (2000) whey products and nutrition