多くのトレーニーが抱く疑問。
例えば、
- 脂肪燃焼を促進するために高レップトレーニングにシフトした方が良いのか?
- トレーニングボリュームは減らした方が良いのか?
- 減量期間中のトレーニングのセット数はどのように決めれば良いか?
といった疑問が多く寄せられる。
コンテンツ
減量期のトレーニング における目標設定について
まず大前提として、摂取カロリーが消費カロリーを下回り、エネルギー不足の状態が慢性的に続く減量期においては、特殊なケースを除いて筋肉量の増大は望めない。
特殊なケースというのが、以下の4つのケースに該当する場合である。
- トレーニング初心者
- 一時的に中断していたトレーニングを再開した場合
- 超肥満体質の場合
- ナチュラルトレーニーではない場合
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つまり、上記の特殊ケースに該当しない場合、減量期間中に筋肉量を増やしていくことは事実上困難であり、減量期に行うトレーニングにおける第一目標は、いかに筋肉量・最大筋力を維持したまま(低下させないように)減量を進めていけるかという点に帰着する。
減量期のトレーニング で気を付けるべき4つのポイント
トレーニングメニューは劇的に変更しない
減量期になると、増量期で行っていたトレーニングプログラムを大きく変更する人が後を絶たない。
もちろん、必要に応じてトレーニングプログラムを一部変更するのは戦略の一環として大いに結構なのだが、問題はトレーニングプログラムを一変させてしまうことである。
最も良く見られる誤った例が、ウエイトの使用重量を極端に落としてレップ数を増大させ、脂肪燃焼を促進させるトレーニングプログラムに変更してしまうケースである。
ここで注目すべき重要ポイントがある。
先ほど説明したように、減量期におけるトレーニング目標は、筋量・最大筋力をいかに維持するかであった。
つまり、減量期であってもウエイトの重量を極端に落とすことなくトレーニング強度を極力維持するように努めることで減量期における筋肉の減少量を最小限に抑えることができる。
また、トレーニングボリューム(特にセット数)についても同じことが言える。
当サイトでは何度も紹介してきたが、筋肥大の成果を大きく左右する主要ファクターはズバリ、トレーニングボリュームである。
したがって、単に減量期だからという理由でトレーニングボリュームを極端に減らしてしまうと、筋肉への刺激が著しく低下するため、オーバートレーニングに陥らない範囲でトレーニングボリュームを極力維持するように心がける(翌日に疲れが大きく残るようであればセット数を少し減らして様子を見るようにする)。
筋肉を落とさないためのセット数を熟知しておく
これまでの多くの研究報告[1,2,3]により、筋肥大(筋肉量の維持)の効果をより高めるためには、各部位につき週に1回よりも週2回のトレーニング頻度が推奨されている。
さらに、各種目についても、1セットだけ行うよりも複数のセット数をこなす方が筋肥大の効果は高いことが明らかとなっている(常識的に当たり前だが)[4]。
これらの事実に加えて、他の研究報告[5,6]では、1回のトレーニングにおいて同一種目を5セット以上行っても筋肥大の効果はそれ以上増大しないことが示唆されている。
これら全てのデータを考慮して各筋肉部位における週あたりに推奨されるセット数をまとめると以下のようになる。
大筋群(三角筋・大胸筋・三頭筋・広背筋・大腿四頭筋・ハムストリングス)の場合
各部位につき、10~20セット/週(つまり70~120レップ/週)
小筋群(二頭筋・腹筋・カーフ)の場合
各部位につき、6~12セット/週(つまり40~70レップ/週)
※自身のトレーニング経歴および、減量期における回復能力を考慮した上で具体的セット数を決めると良い。
オールアウトのし過ぎに注意
筋肥大(筋肉量の維持)効果を最大化するためには、以下の関連記事でも紹介しているように、全てのセットでむやみにオールアウトさせないようにするのがポイントとなる。
全てのセットをオールアウトさせてしまうと疲労の蓄積が加速し、結果として筋肥大のトリガーであるトータルボリューム(特にレップ数)が減少してしまう。
減量期間中のオーバートレーニングは結果として筋力・筋量の低下を招くため、何としても避けなければならない。
また、2018年に発表された最新の研究報告[7]によれば、オールアウトは筋肥大において効果的なトレーニングテクニックではあるが、あまりに高頻度でオールアウトさせるとテストステロン値の低下、そしてストレスホルモン”コルチゾール”値が上昇し、筋肥大を最適化できない可能性があると報告されており、減量期におけるオールアウトは特に気を付けなければならない。
減量期に推奨されるオールアウトのセット数は各筋肉部位につき2~4セット/週であり、可能な限りオールアウト種目はトレーニング後半で取り入れるようにする。
オールアウトに関するその他の詳しい解説については以下の関連記事を参考にして下さい。
出場カテゴリーによってトレーニングメニューを調節する
例えば、あなたがメンズフィジーク大会への出場を計画している場合、下半身のトレーニングよりも上半身のトレーニングに重点を置いた方が良い。
というのも、スクワットやレッグプレス等の下半身トレーニングは、上半身トレーニングに比べて、エネルギー消費量が大きいため疲労の蓄積を加速させ、全筋肉の回復能力が低下する恐れがある。
出場する大会にもよるが、メンズフィジークの大会で脚部を露出させる必要のない場合は、下半身よりも上半身により重点を置いたトレーニングプログラムを組むことが望ましい。
また、出場するカテゴリーにかかわらず、弱点部位がある場合は、
- 弱点部位をトレーニングの最初に鍛える
- 弱点部位のトレーニングボリューム(特にセット数)を増やす
- 弱点部位のトレーニング頻度を増やす
といった対策を立て、弱点の補強に励むようにする。
これまでに発表されている複数の研究報告[8,9]においても、弱点部位はトレーニング後半よりも、トレーニング前半でアプローチを行うことで高い筋肥大効果が得られることが分かっている。
また、弱点部位をトレーニングの後半で鍛えると、疲労がある程度蓄積した段階でトレーニングを行うことになるため、必然的にレップ数やセット数(つまりトレーニングボリューム)が低下する。
この観点からも、弱点部位はトレーニングの前半で鍛えるようにし、可能な限りトレーニング頻度を増やすようにすることが重要となる。
また、減量期間中にチートデイを定期的取り入れている場合は、チートデイに弱点部位を鍛えるようにする。
チートデイは、普段以上に炭水化物の摂取が増えるため、エネルギーレベルが高い状態で弱点部位のトレーニングを高強度で行うことができるようになる。
弱点部位のアプローチ方法に関する詳しい解説については以下の関連記事を参考にして下さい
。
減量期のトレーニング のまとめ
今回は、特にボディビルおよびメンズフィジークへの大会出場に向けた減量期のトレーニングで気を付けておきたい4つのポイントを紹介してみました。
減量期に行うトレーニングにおける目標は、前述の通り、いかに筋肉量を維持したまま目標体重まで減量を行えるかであり、上記のポイントを押さえておけばまず問題なく減量を成功に導けるはずである。
減量期間中のトレーニング頻度は4~6日/週とし、弱点部位を優先的に鍛えられるようにトレーニングプログラムを組み、コンテスト当日に最高の自分を仕上げられるように全力を尽くしてみよう!
筋肉を減らしたくない人は、以下の記事も参考にしてみて下さい。
参考文献
[1] Schoenfeld BJ,et al (2016) Effects of Resistance Training Frequency on Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis.
[2] Jozo Grgic,et al (2018) Effect of Resistance Training Frequency on Gains in Muscular Strength
[3] Brigatto, Felipe,et al (2018) Effect of Resistance Training Frequency on Neuromuscular Performance and Muscle Morphology after Eight Weeks in Trained Men
[4] La Scala Teixeira CV,et al (2017) Effect of resistance training set volume on upper body muscle hypertrophy: are more sets really better than less?
[5] Kumar V,et al (2012) Muscle protein synthetic responses to exercise: effects of age, volume, and intensity
[6] Daniel A. Hackett, et al (2018) Effects of a 12-Week Modified German Volume Training Program on Muscle Strength and Hypertrophy
[7] Nóbrega, S. R.,et al (2018) Effect of Resistance Training to Muscle Failure vs. Volitional Interruption at High-and Low-Intensities on Muscle Mass and Strength
[8] Simao R,et al (2010) Influence of exercise order on maximum strength and muscle thickness in untrained men
[9] Spineti. J,et al (2010) Influence of exercise order on maximum strength and muscle volume in nonlinear periodized resistance training