チートデイ で減量の停滞期は本当に乗り越えられるか|科学的効果と正しい方法

[記事公開日]2018/08/04
[最終更新日]2019/11/08

チートデイ

 

減量を行う誰もが経験するであろう停滞期。

そして体重が思うように減らなくなったときにしばしば取り入れられるのが、そう、チートデイ(或いはリフィード

チートデイ

 

減量期間中に、週に1回程度の爆食いデイを設けて代謝を上げ、脂肪燃焼を加速させるのが狙いのようだ。

しかし、チートデイを「週に1度の爆食いデイ」と捉えて無計画に行うと、チートデイは単なる「脂肪を蓄積する日」になってしまう。



本記事では、減量期間中の停滞期を乗り越えるためにチートデイは取り入れるべきなのか否か?そして、チートデイの正しい行い方について最新の文献データ[1~5]に基づいて詳しく解説します。

 

 

チートデイ の目的

チートデイ

 

チートデイの主たる目的は、週に1回程度、摂取カロリーを増やす日を設けて、減量期間中に低下した代謝を上げ、減量(体脂肪燃焼)を加速させることである。

我々人間は、減量によるカロリー不足の状態が長く続いた場合、代謝量(体のエネルギー消費量)を落として体の状態を一定に保とうとする。

この働きはホメオスタシス(恒常性)と呼ばれ、我々の生命維持には欠かせない重要な機能であることは確かなのだが、減量を行う者にとっては厄介な存在となる。

 

そこで登場するのが、チートデイである。

チートデイを設けて一時的に摂取カロリーを増大させることで、レプチンの分泌量を増やし代謝量を上げ、体脂肪を燃やしやすい体質へと変化させ、減量期の停滞期を乗り越えるというのが減量期間中にチートデイを取り入れる主たる目的である。

 

 

チートデイ は脂肪燃焼を加速させる?

体脂肪

 

先ほど、チートデイを設けることでレプチンの分泌量が増大すると紹介した。

レプチンとは、脂肪細胞から分泌されるホルモンで、レプチンの分泌量が増大すると、食欲が抑制され、さらに代謝量が増加することが分かっている[5]。

 

よって、レプチンの分泌量が低下すると、代謝量が落ち、体脂肪が減りにくくなってしまうのである。

 

確かに、チートデイを設けることでレプチンの分泌量が有意義に増加することは複数の研究報告[1,2]により明らかとなっている。

 

そして、このレプチンの分泌量をより効果的に増大させるにはタンパク質や脂質よりも、炭水化物を優先的に摂取することが効果的であることも分かっている[2]。

つまり、減量期間中にチートデイを設けることでレプチンの分泌量が増大し、その結果として代謝量が上がるため体脂肪の燃焼効率が向上するというのである。

理論は分かった。だから減量で停滞期に陥った多くの人々がチートデイを取り入れている。

しかし、現実はそう単純にはいかないようなのだ。

 

確かに、チートデイを設けることで代謝量が増加することは前述の研究報告により示されている。

しかし、この代謝量の(回復)増加は、ほんの一時的な現象であり、チートデイの後、普段の減量生活に戻ると、代謝量とレプチンの分泌量はすぐにベースライン(元の値)にまで低下することが分かっている。

そして残念ながら、この一時的な代謝量の増加およびレプチンの分泌量の増加が体脂肪のさらなる燃焼に結びつくということをはっきりと示した研究報告はいまのところなされていない[3,4]。

もっと分かりやすく言うと、チートデイを設けて行う減量が、チートデイを設けないで行う減量に比べて、脂肪燃焼効果が高いということを示した研究報告は発表されていないのだ。

 

確かに、チートデイで代謝量が一時的に増加するのは我々にとって非常に嬉しい話だが、忘れてはいけない。

チートデイで代謝量を上げるには、その分食事量を増やして摂取カロリーを増大させなければならないということを。

 

例えば、チートデイで普段よりも1500 kcal余分に摂取したとしよう。そして、このチートデイの効果により、代謝量が普段よりも1000 kcal増えたとしよう。

するとどうだろう、結果として、チートデイを取り入れたことにより、1500-1000 kcal=500 kcal余分なカロリーが体に蓄積することになり、減量を加速させるどころか単なる体脂肪の蓄積という結果に終わるのである。

そして、これまでに発表された複数の研究報告を総括すると、体重がどれだけ減少するのかは、週単位のエネルギー不足量の総和で決まるのであり、チートデイの有無には左右されないという見方が有力である。

 

つまり、チートデイには巷で言われているような魔法のような脂肪燃焼効果は無いのである。

 

 

結局のところチートデイは無駄なのか

チートデイ

 

ここまでのところで、チートデイには脂肪燃焼を加速する効果はあまり期待できないことを紹介した。

しかし、それでもなおチートデイはそのやり方次第で我々にメリットをもたらす可能性を秘めている。

現実として、チートデイはボディビルダーやフィットネスモデルをはじめ、多くの人たちに取り入れられている。



チートデイ は減量生活を楽しくする

チートデイ

 

例えば今現在、あなたが減量を行っていると仮定しよう。

そして減量期の1日あたりの摂取カロリーを2500 kcalとして設定している場合、1週間あたりの総摂取カロリーは2500 kcal×7日=175,00 kcalとなる。

もちろん、この2500 kcalのカロリー摂取を毎日律義に守り抜いても良いが、例えば、1日あたりの摂取カロリーを2500 kcalよりも200 kcal だけ低い2300 kcalに設定し、それを月曜日から土曜日まで続けたとしよう。

こうすると、日曜日には普段よりも多い摂取カロリー(2500+200×6=3700 kcal)を摂取できるようになる。

先ほど説明したように、体重がいくら減るかは週単位での摂取エネルギー総和により決まるのであり、体重増減は1週間の中で摂取カロリーをどのように配分するのかには大きく左右されない。

 

つまり、毎日同じカロリー数:2500 kcalを律義に摂取する減量方法と、1日の摂取カロリーを2300 kcalに摂取して日曜日にチートデイとして3700 kcal摂取する減量方法とでは、最終的に落とせる体脂肪量は同じになるのである。

そして、どちらの食事プランを採用するのかは個人の好みによる。

 

大切なのは、どちらの食事プランが自分の減量生活をより楽しいものにしてくれるのかであり、減量を挫折せずに継続的に続けられるプランを採用すると良い。

私であれば、1日の摂取カロリーを僅かに減らして、日曜日にいつもより多くのカロリーを摂取できる日を設けるやり方の方が、自分にご褒美を与えられているような気がして、向いている。

 

ここからは少しだけ研究報告の範囲外の話になるのだが、実際としてチートデイを取り入れることによりその後体重の減少速度が加速したという実例は多く報告されている。

もちろん、その効果の程度は個人により大きく異なるので、本人が実際に試してみないことにはチートが効果的かどうかハッキリとしたことは分からない。

しかし、ここで一つ言えるのが、チートデイによる体脂肪燃焼(体重減少)効果を期待するには、チートデイを1日だけ取り入れるよりも、最低2日間連続してチートデイを取り入れた方が、チートデイ後の体重減少効果が現れやすいという事例が多く報告されているということである。

 

これは、チートデイを1日だけ設けた場合、代謝量やレプチンの分泌量はすぐにベースラインに戻ってしまい体重減少効果はほぼほぼ期待できないが、チートデイを複数日にわたり設けることで、体重減少効果を得るのに十分な効果をもたらすのではないかと考えられているためである(今後、さらなる追加研究が必要)。

総じて、これまでに発表された研究報告を基にすると、チートデイによる脂肪燃焼効果は過度に期待しない方が良い。

 

しかし、チートデイをうまく取り入れることによって、減量中の食生活はより楽しいものになり得るのである。

 

 

失敗しないチートデイの方法

チートデイ

 

これまで紹介してきたように、チートデイを単なる「爆食いできる日」と捉え、とにかく好きなものを食べまくってしまうと、結果としてチートデイは「体脂肪を蓄積する日」となり体重は増えてしまう。

チートデイをうまく活用し、チートデイ後の体重減少効果を期待するには、計画的な方法でチートを行う必要がある。

チートデイは計画的に行わないとまず失敗する。

ここからは、チートデイを計画的に行う方法を順を追って紹介します。

 

 

チートデイ の具体的方法



1.炭水化物の摂取量を増やす

炭水化物

 

チートデイでは、レプチンの分泌量を効果的に増大させて代謝量のアップを狙うため、主として炭水化物の摂取量を増やして摂取カロリーを増大させる。そして、タンパク質および脂質の摂取量は普段摂取している量を維持するようにする。

 

2.チートデイの摂取カロリーはメンテナンスカロリーに

チートデイ

 

効果的にチートを行うには、減量期の摂取カロリーをメンテナンスカロリーあるいはそれを僅かに上回るカロリーまで増やす。

例えば、減量期の摂取カロリーが2500 kcalで、メンテナンスカロリーが3100 kcalの場合は、チートデイでは3100(またはそれ以上) kcalを摂取する。

1.でも説明したように、600 kcal分のカロリーアップは炭水化物で行うようにする。

参考までに、炭水化物1 gあたりのカロリーが4 kcalであることを考慮すると、600 kcal分の炭水化物をグラムに換算すると、600÷4=150 gとなる。

 

メンテナンスカロリーの詳しい求め方は以下の記事を参考にして下さい。

 

 

3.チートデイはトレーニング日に取り入れる

チートデイ

 

チートデイで普段よりも炭水化物の摂取量を増やすことで、血中グルコース濃度および筋グリコーゲン(=トレーニングのエネルギー源)の充填を効果的に行えるようになり、トレーニング強度を増大させることができ、アナボリック環境を最適化することができる。

トレーニングにおける炭水化物摂取の重要性については以下の記事をご覧ください。

 

 

チートデイ の具体例

チートデイ

 

減量期の摂取カロリーが2500 kcalの人の場合を例にして効果的なチートデイの方法をデモンストレーションしてみよう(この人のメンテナンスカロリーは3100 kcalとする)。

チートデイ

例えば、週に2日連続(土曜日・日曜日)でチートデイを取り入れると決め、チートデイではメンテナンスカロリー分を摂取するとしよう。

そして、この人の1週間あたりの総摂取カロリー数は、2,500×7=17,500 kcalとなるが、2日のチートデイで3100×2=6,200 kcalを摂取するので、月曜日から金曜日に摂取する総摂取カロリー数は、17,500-6,200=11,300 kcalとなる。

そして、この総摂取カロリー数を5日で割れば、月曜から金曜日にかけて摂取する1日あたりの摂取カロリー数が求まる。

つまり、11,300÷5=2,260 kcalが月曜から金曜日に摂取する1日あたりの摂取カロリー数となる。

これらをまとめると以下のようになる。

減量期の摂取カロリー

  • 月~金曜:2260 kcal/日
  • 土日(チートデイ):3100 kcal/日

 

このように計画的にチートデイを取り入れることで、チートを取り入れるたびに内分泌系の回復を図り(レプチン分泌量を増大させ)、代謝アップを狙いつつ、血中グルコース濃度および筋グリコーゲンの充填を促しトレーニングパフォーマンスを良好に維持することができる。

また、ある程度好きなものを食べられるという精神的なプラスの効果も期待することができる。

 

 

チートデイのまとめ

チートデイ

 

今回は、チートデイに関する正しい知識とその行い方について詳しく解説してみました。

チートデイを正しく適切に取り入れた場合に期待できる効果を改めておさらいしておこう。

チートデイの効果

  1. 減量により低下した代謝量を増大させる
  2. トレーニング日にチートデイを取り入れることでトレーニングパフォーマンスが向上する
  3. チートデイを取り入れることで、減量生活をより楽しめる
  4. チートデイに過剰な期待をしない
  5. 週あたりの総摂取カロリーの管理がより大切

 

チートデイを正しく取り入れて減量生活を成功させよう。


参考文献

[1] Dirlewanger M,et al (2000) Effects of short-term carbohydrate or fat overfeeding on energy expenditure and plasma leptin concentrations in healthy female subjects

[2] Vajiheh Izadi,et al (2014) Dietary intakes and leptin concentrations

[3] Keogh JB,et al ( 2014) Effects of intermittent compared to continuous energy restriction on short-term weight loss and long-term weight loss maintenance.

[4] Harvie MN,et al (2011) The effects of intermittent or continuous energy restriction on weight loss and metabolic disease risk markers: a randomized trial in young overweight women

[5] Rosenbaum M,et al (2004) Low-dose leptin reverses skeletal muscle, autonomic, and neuroendocrine adaptations to maintenance of reduced weight