これまでは、ベータアラニンが筋力および筋量アップの両方に効果をもたらすという確固たる科学的根拠を探し出すことが出来なかったため、ベータアラニンに関する記事は控えてきた。
しかし2018年になってようやく、トレーニング経験者を対象とした研究において、ベータアラニンの摂取により筋力および筋量が明らかにアップしたとの確かな研究報告が得られたので、今回は筋トレをこよなく愛する読者の皆様に、ベータアラニンが持つ筋力アップ・筋肥大効果を詳しく解説していきます。
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ベータアラニン とは
ベータアラニンは体内で合成が可能な非必須アミノ酸(=体内で合成が可能なアミノ酸)の1種で、我々の筋肉中に多く存在しており、筋トレをはじめとする高強度トレーニングのパフォーマンス向上に効果がある成分として注目が高まりつつある成分である。
ベータアラニン の効果
ベータアラニンの摂取により期待できる効果は主として以下の4つである。
- 疲労軽減によるトレーニングパフォーマンスの向上
- レップ数の増大
- 最大筋力の向上
- 筋肉量の増大
要するに、ベータアラニンが持つ筋肉の疲労軽減効果により、トレーニングパフォーマンスが向上することで反復回数(レップ数)が増大し、結果として、最大筋力の向上と筋量の増加が有意義に達成できるというメカニズムである。
ベータアラニンの働き
筋トレのような筋肉を瞬発的に強く収縮させる運動を行うと、筋肉中で水素イオンの濃度が上昇し、これが筋肉の酸性化を招き、筋肉は次第に疲労していく。
ベータアラニンには筋肉中のカルシノン濃度を高めて筋肉の疲労原因となる水素イオン濃度の上昇を抑える働きがあり、この働きにより筋肉の酸性化を遅らせて、筋収縮のパフォーマンスを飛躍的に向上させることができるのである[2,3]。
ベータアラニンは筋トレに最適なサプリメント
これまでの研究報告[4,5,6]によると、上記で紹介したベータアラニンの疲労軽減効果は、強烈な筋収縮を6~60秒間の範囲で繰り返す運動時に期待できるとしている。
事実、オーストラリア国立スポーツ研究所では、ベータアラニンは運動パフォーマンスの向上に明らかな効果をもたらすという確かな科学的根拠により、ベータアラニンをクラスAのサプリメントに分類している[1]。
クラスA(最高ランク)のサプリメント例
- クレアチン
- ベータアラニン
- カフェインなど
クラスBのサプリメント例
- HMBサプリ
- フィッシュオイル
- カルニチンなど
ベータアラニンで1 RMを更新する
これまでの研究報告[6]ではベータアラニンが持つ疲労軽減効果によりレップ数が増大し、筋肉量の増大に効果があることは報告されていたが、ベータアラニンの最大筋力向上への効果については十分な研究結果が得られていなかった。
研究では、トレーニング経験のある若年男性(30名)を2グループに分け、一方のグループにベータアラニンを、もう片方のグループには偽薬を摂取させ、バックスクワットおよびランジ等の種目から成る脚のトレーニングを5週間にわたり行わせ後、両グループの最大筋力(1 RM)を測定した。
さらにベータアラニン摂取の前後でトレーニングボリュームが顕著に増加(伸び率:1.2倍)したことも分かった。ちなみに偽薬グループの伸び率は1.12倍だった。
トレーニングボリュームは筋肥大の最重要ファクターであるので、トレーニングボリュームの増加は筋量増加を意味する。
その他にも、ベータアラニンを10週間継続して摂取したことによりバックスクワットの1 RMの負荷重量が25 kgアップした(偽薬グループは5 kgアップ)との研究報告[8]もあることから、ベータアラニンには疲労軽減によるレップ数の増大だけなく、最大筋量の向上にも明らかな効果をもたらすと言えるだろう。
ベータアラニンの正しい摂取方法
ベータアラニンは、シトルリンマレートなどといった即効性のあるサプリメントとは異なり、規定量を継続的に摂取することで、筋肉中のカルノシン濃度を高めて運動パフォーマンスを向上させるサプリメントである。
国際スポーツ栄養学会の見解[8]では、1日あたり4~6 gのベータアラニンを2~3回に分けて、少なくとも2~4週間継続して摂取することで、筋肉中のカルノシン濃度を効果的に高めて上記の効果が得られるとしている。
また、ベータアラニンは上記推奨量を継続的に摂取しても安全であることが分かっており、唯一報告されている副作用は、人によってはベータアラニンフラッシュと呼ばれる「ピリピリ感」がまれに生じる点である。
しかし、この症状は1回あたりのベータアラニンの摂取量を減らし(1回あたり1.6 g程度)、摂取回数を増やすことで回避することができる。
プレワークアウトサプリにも配合されているベータアラニン
ベータアラニンは、各サプリメントメーカーから市販されているプレワークアウトサプリにも配合されていることが多い。
有名どころのプレワークアウトサプリでいえば、ゴールドスタンダードプレワークアウト(1回あたりのベータアラニン配合量:1.5 g)、セルコアC4(1.6 g)、プレケージド(1.6 g)、N.O-XPLODE(2.7 g未満)、ENGN(1.6 g)、ザ・カース(2 g)にベータアラニンが配合されている。
また、ベータアラニンは先ほども紹介したように、その効果を十分に得るために継続的な摂取が必要となるが、市販のプレワークアウトサプリからベータアラニンを摂取する場合、トレーニングのオフ日にはプレワークアウトサプリを摂取しないため、ベータアラニンの摂取ができなくなる。
このような理由から、ベータアラニンが持つ効果を確実に得るにはベータアラニンのサプリメントを単体で摂取するのが最も賢い方法であると考えられる。
コストパフォーマンスの良いベータアラニンサプリメントのリンクを以下に貼っておくので興味のある人は是非チェックしてみて下さい。
ベータアラニン サプリメントのまとめ
今回はベータアラニンが有する疲労軽減、レップ数増大、トレーニングボリュームの増大、最大筋力の向上、筋肉量の増大という数々の効果について文献データ[1~9]に基づいて紹介しました。
ベータアラニンをまだ試したことがない人は、規定量のベータアラニンを2~4週間継続的に摂取して上記効果を実際に確かめてみてはいかがだろうか。
1日あたりのコスト:47.7円(1日6 g摂取時)
1日あたりのコスト:46.1円(1日6 g摂取時)
参考文献
[1] (2017) Australian Institute of Sport. ABCD Classification System [2] Dutka TL,et al (2012) Effects of carnosine on contractile apparatus Ca2+ sensitivity and sarcoplasmic reticulum Ca2+ release in human skeletal fiber [3] Begum G,et al (2005) Physiological role of carnosine in contracting muscle [4] Van Thienen R,et al (2009) Beta-alanine improves sprint performance in endurance cycling [5] De Salles V,et al (2013) The ergogenic effect of beta-alanine combined with sodium bicarbonate on high-intensity swimming performance [6] Smith AE,et al (2009) Effects of beta-alanine supplementation and high-intensity interval training on endurance performance and body composition in men; a double-blind trial. [7] José Luis Maté-Muñoz,et al (2018) Effects of β-alanine supplementationduring a 5-week strength training program:
a randomized, controlled study [8] Hoffman JR,et al Effect of creatine and A-alanine supplementation on performance and endocrine responses in strength/power athletes [9]Eric T. Trexler,et al(2015) International society of sports nutrition position stand: Beta-Alanine