筋肥大をひたすら探求する当サイトにおいてここ最近、常に1位、2位を争う人気記事となっているのが➡筋肥大を引き起こす3つのメカニズムとはの記事である。
この記事では、筋肥大を誘発する3つのメカニズムを紹介し、それらのメカニズムを日々のトレーニングに取り入れる具体的方法を提案している。
詳しくは上記記事を参照して頂きたいのだが、筋肥大を誘発する3つのメカニズムとはズバリ以下の3つのメカニズムである。
- メカニカルテンション(mechanical tension)
- メタボリックストレス(metabolic stress)
- マスキュラーダメージ(muscular damage)
今回は、これら3つメカニズムのひとつであるメカニカルテンションをさらに高める方法について深く掘り下げ、筋肉の成長を驚くほど成長させる具体的テクニックを紹介しよう。
前回までのあらすじ
前回、筋肥大のカギを握っている最重要要素として、トレーニングのトータルボリュームの概念と、トレーニングのトレーニングボリュームを戦略的に増やして筋肉の成長を引き出すオーバーロードの原則について紹介した。
まだご覧になっておられない方は是非一ご覧ください。
<前回記事>
実のところ、筋肥大のトリガーとなる要素は上記の要素が全てという訳ではなく、他にも存在しているのである。その張本人がTUTである。
TUTとはTime Under Tension の略で、筋肉を緊張状態下に置く時間の長さの事である。
コンテンツ
筋肉の緊張持続時間( TUT )は筋肥大のトリガー
筋肥大を実現するにはトレーニングのトータルボリュームを増やすことの他にも筋肉を極限まで強く、そして長時間緊張させることが重要な要素であるという事実はあまり知られていない。
この事実を知るだけでもトレーニングはもっともっと効果的なものとなる。
2012年に発表されたTUTに関する研究報告[1]をひとつ紹介しよう。
TUT を長く取ることで筋肥大が加速した一例
研究内容
- 被験者ら(24±1歳・8名男性)にレッグエクステンションを片脚ずつ3セット行わせる
- 右脚・左脚トレーニング時のウエイト重量およびレップ数は同じ
- 片方の脚を鍛える際、他方の脚を鍛えるときよりも約8倍長い緊張持続時間をかけて鍛えさせる
そして、両脚の筋タンパク質合成レベル(筋肥大レベル)の差異を計測した。
実験結果
- トレーニング後の筋タンパク質合成レベルを測定した結果、8倍長い緊張持続時間をかけて鍛えた脚において114%の上昇が認められたのに対し、他方の脚においてはわずか77%の上昇に留まった。
- さらに、トレーニング終了24時間経過後も、8倍長い緊張持続時間をかけて鍛えた脚の筋タンパク質合成レベルは、他方の脚よりも高いレベルを維持していることが分かった。
筋肉を長い緊張状態下に置くとは?
筋肉を長い緊張状態下に置くとは、ウエイト動作の終始、ウエイトの負荷がターゲット部位から抜けてしまうことなく、その負荷がターゲット部位に常にかかり続けるように意識しながらトレーニングを行うことを意味する。
例えば、バーベルカールを行う際、ボトムポジションで「ふっ」と力を抜き、腕をだらんとするとそれだけでウエイトの負荷が二頭筋から逃げてしまい、筋肉の緊張状態は解かれ、トレーニング強度は低下してしまう。
一度やってみれば分かるがウエイト動作の終始、筋肉の緊張状態を維持してトレーニングを行うと、ターゲット部位が焼けるような感覚になり、強烈にパンプアップするのを実感することができるはずである。
また、TUTを意識してトレーニングを行うと、トレーニング強度が増すため普段扱っているウエイト重量が扱えなくなる場合がある。そんな場合は、ウエイト重量を少々落としてトレーニングを行うと良い。
このように筋肉の緊張状態を維持することがトレーニング強度を爆発的に高め、筋肥大を加速させる要素となることが分かったところで、次は筋肉の緊張状態を長時間維持する4つの具体的なテクニックを習得しよう。
TUT を長く取る4つの具体的テクニック
筋肉の緊張持続時間(TUT)を長くとるトレーニングを行う際に、押さえておくべき最大のポイントがひとつある。それは以下のポイントである。
これから以下に示す、TUTを長く取る4つの具体的テクニックは、言い換えれば1セットに費やす時間を40~60秒に引き伸ばすテクニックでもあり、各テクニックは一見全く異なるテクニックのように見えるが、その根底にある目的は筋肉を長時間強い緊張状態下に置いて筋肉の成長を引き出すという点で一致していることを理解しておこう。
それでは、TUTを長く取る4つのテクニックを順番に見ていこう。
1.エキセントリック収縮をゆっくりと行う
エキセントリック収縮とは、簡単に言えばネガティブ動作のことである。つまり、筋肉が伸びながら力を発揮している時の筋収縮の状態を指す。例えば、バーベルカールでトップポジションからボトムポジションにバーベルを戻す際、筋肉が引き伸ばされながらブレーキをかけるように力を発揮する状態の事をエキセントリック収縮という。
エキセントリック収縮時は、コンセントリック収縮時に比べて動員される筋線維数が減少するため、筋繊維1本あたりに加わる刺激が大きくなる。
「コンセントリック収縮時は爆発的にウエイトを挙上させ、エキセントリック収縮時にはウエイトをゆっくりと戻す」ようにと言われるのはそういった理由からである。
2.ドロップセットを行う
ドロップセットとは、ウエイトの挙上が限界に達したところでウエイト重量を(30~40%)落としてすぐさま(インターバルなしで)限界まで再度ウエイトを挙上させるというサイクルを3~4回繰り返す方法である。このサイクルを1セットとしてカウントする。
例えば、ケーブルカールを60 kgの負荷で10レップス(限界回数まで)行ったとしよう。この時、素早くウエイト重量を40 kgに落としてウエイト挙上を即座に開始すれば、筋肥大の大原則の一つであるトレーニングのトータルボリュームを増やすことができ、かつTUTを長く取ることができるので、結果としてトレーニング強度を飛躍的に高めることができる。
3.フォーストレップを取り入れる(補助者の助けを借りる)
フォーストレップとは、限界回数までウエイトを挙上した後、補助者にウエイト挙上の補助をしてもらうことで自分の限界を超えて筋肉を追い込む方法である。
ウエイト挙上が限界回数に達したら補助者にウエイトの挙上を補助してもらい、追加で3~4レップス行う。この時、ネガティブ動作は補助者の力を借りずに極力自力で行うようにする。
そうすることで、 エキセントリック収縮をゆっくりと行えるだけでなく、セット自体の時間を長く引き伸ばすことができる。その結果、TUTを長く取ることができるのである。
さらに、トレーニングをトレーニングパートナーと合同で行うのには、単なる補助以外にも様々なメリットがあることが研究により分かっているので、そちらについてはトレーニングパートナーの存在はトレーニング強度およびボリュームを増大させる効果があるをご覧い頂きたい。
4.アイソメトリックを取り入れる
アイソメトリックとは別名、等尺性収縮ともよばれる。簡単に言えば、筋肉が長さを変えずに力を発揮する収縮状態のことを指す。例えば、壁を強く押す場合、力を発揮しているにも関わらず、筋肉の長さは変わらない。これがアイソメトリックである。
例えば、大胸筋を鍛えるダンベルプレスを行っている場合を考える。この時、ウエイト挙上の限界回数に達したら、そこで諦めてダンベルを床に落とすのではなく、胸を強烈にストレッチさせた状態(つまりはボトムポジションの位置)でダンベルを保持し続けるのである。目安時間は1セットの時間がトータルで1分を超えるようにする(可能であれば、1分を超えて保持してよし)。
これにより、筋肉を長時間にわたって強い緊張状態下に置くことができ、トレーニング強度を飛躍的に高めることができる。
TUT を長く取るテクニックのまとめ
今回は、筋肉の緊張状態を長時間維持して筋肥大を加速させる4つの具体的テクニックを紹介した。
いずれのテクニックにおいても、筋肉を可能な限り強い緊張状態に長時間置くことを主たる目的としている。
これらのテクニックを駆使することにより、筋肉はこれまで体験したことのないような強いストレス下に置かれるため、脳は「筋肉を大きく発達させて身体を守らなければならない」と判断する。
やみくもにウエイト重量を求めるだけでは怪我のリスクが増すだけで、目的とする筋肥大を効果的に手に入れることは難しい。
筋肥大の大原則であるトレーニングのボリュームを増すことと筋肉を強い緊張状態下にさらすことを常に念頭に置き、常に新鮮な刺激とストレスを筋肉に与え、爆発的に筋肉を大きく発達させよう!
参考文献
[1] Nicholas A Burd,et al (2012) Muscle time under tension during resistance exercise stimulates differential muscle protein sub-fractional synthetic responses in men