パーシャルレップ とフルレンジではどちらが筋肥大に効果的か

[記事公開日]2018/02/24
[最終更新日]2019/12/01

一般に、筋肉量を最も効率的に増やす(筋肥大)には パーシャルレップ よりもフルレンジの方が効果があると言われることが多いが、果たして本当なのだろうか?

文献データ[1~5]に基づいて徹底的に検証してみよう。



 

 

パーシャルレップ 法とは

パーシャルレップ

 

パーシャルレップ法とは一部の可動域のみで(可動域を限定して)ウエイトの挙上動作を行うトレーニングテクニックのひとつである。

 

このパーシャルレップ法は果たして筋肥大に効果的なテクニックであるのか否かというのが今回深く追求するテーマである。

 

 

パーシャルレップ の効果

パーシャルレップ

 

パーシャルレップ法のメリットは一般に次のように解釈されることが多い。

  • 通常よりも高重量のウエイトを扱うことができる
  • パーシャルレップで行えばレップ数を稼げる
  • 一部の可動域で動作を行うためターゲット部位のテンションを維持することができる

 

<参考>筋肉の緊張持続時間(TUT)を長く取ると筋肥大はさらに加速する

 

確かにパーシャルレップでトレーニングを行えば、通常よりも高重量のウエイトでトレーニングができるし、レップ数も稼げるし、筋肉のテンションも抜けてしまわないのだから、筋肥大にとっては良いこと尽くしのはずである。

しかし、このパーシャルレップをトレーニングに取り入れる場合、あるポイントをしっかりと押さえておかないと筋肥大の効果を半減させることになってしまうので注意が必要なのである。

 

 

筋肥大および筋力アップの両面においてフルレンジが効果的との結論

 

プリーチャーカールをパーシャルレップ法で行った場合フルレンジで行った場合筋肉増加量および筋力増加量の差を比較した研究報告[1]がある(被験者らは若年男性)。

 

パーシャルレップ

 

そして実験結果は以下のようになった。

実験結果

プリーチャーカールをフルレンジ(0~130°)で行った場合

  • 筋肉増加量:+9.52%
  • 筋力増加量:+25.7%

 

プリーチャーカールをパーシャルレップ(50~100°)で行った場合

  • 筋肉増加量:+7.37%
  • 筋力増加量:+16%

 

上記の結果から見て取れるように、筋肉増加量および筋力増加量のいずれにおいてもフルレンジでプリーチャーカールを行った場合に高い値(成長率)が得られたのだ。

 

➡つまり、筋肥大および筋力アップを狙うにはフルレンジでトレーニングを行った方が良いということになる。

 

しかしなぜフルレンジで行うトレーニングが筋肥大により効果的なのか。

その理由を探ってみよう!


フルレンジが筋肥大により高い効果を生む理由

 

筋肥大を誘発するメカニズムの詳しい説明については筋肥大を引き起こす3つのメカニズムとはのページをご覧頂きたいのだが、実は筋肥大を誘発させる最大のスイッチのひとつが「筋肉に強烈なテンション(張力)をかけること」なのである。

「筋肉に強烈なテンション(張力)をかける」とは、筋肉を十分に引き伸ばした状態で筋肉に強烈なテンションをかけるということである。

出典:http://everkinetic.com/

 

プリーチャーカールを例に挙げると、上腕がプリーチャー台に接触する直前まで上腕二頭筋を徐々にストレッチさせていく過程(つまりネガティブ動作を強く意識)で強いテンションが生まれる。

もちろん、強いテンションを生み出すには、適切な重量のウエイトを選択することが重要となる。

このテンション(つまりネガティブ動作)により、IGF-1をはじめとするアナボリックホルモンの分泌が促され、筋肥大が誘発されるのである。

 

これらの事実は2014年に発表された研究報告[2]からも説明がつく。

プロテインと筋トレ

 

研究では2種の異なる可動域で脚のトレーニング(レッグエクステンション、スクワット、レッグプレス)を被験者に行わせ、成長ホルモンの分泌量、筋力増大量、そして筋肉増大量の違いを調査した。

 

出典:http://everkinetic.com/

 

そして実験結果は以下のようになった。

実験結果

可動域1:脚を最大限にストレッチさせた状態(90°)から40°

  • 成長ホルモン分泌量:+31%
  • 筋力増加量:+26%
  • 筋肉増加量:+53%

 

可動域2:50°から0°まで

  • 成長ホルモン分泌量:+7%
  • 筋力増加量:+7%
  • 筋肉増加量:+18%

 

この実験結果からも分かるようにターゲットとなる部位を最大限に引き伸ばした状態でテンションをかけることが、成長ホルモンの分泌および筋量(筋力)を大幅に増加させるトリガーとなるのである。

事実、この実験研究をサポートする研究報告は複数なされていて、パーシャルレップがフルレンジの場合と同程度の筋肥大効果をもたらすのは、ターゲットとなる筋肉を最大限に伸展させた状態(引き延ばした状態)となる可動域を含むパーシャルレップを行ったときであるとの見解が最も有力である[3,4]。

 

逆に、ターゲット部位を完全に伸展させない可動域でパーシャルレップを行った場合は、フルレンジを行った場合と同等の筋肉の増加量が得られない可能性を示唆している[5]。



まとめ:パーシャルレップとフルレンジではどちらが筋肥大に効果的か

筋肥大トレーニング

 

筋肥大および筋力アップを効果的に狙うには、パーシャルレップ法を積極的に採用するよりかはフルレンジモーションを基本としたトレーニングを行う方がより大きな筋肥大トリガーを生み出すことができると言える。

(※例外が無いわけではないが、大部分の種目において)

どうしてもパーシャルレップを取り入れたければ、ターゲット部位が完全に伸展する可動域を含む範囲でパーシャルレップを行うと良い。

 

ただしパーシャルレップ法が無能なのかと問われればそういう訳でもない。

もちろんパーシャルレップ法をうまくトレーニングに取り入れて筋肥大をさらに加速させる方法はある。

 

 

パーシャルレップ法の効果的な取り入れ方

筋トレでパワーアップ

 

上記で紹介したようにパーシャルレップを行うときはターゲットとなる筋肉が最大限に引き伸ばされる(筋肉が十分にストレッチされる)可動域を選択して動作を行うことが重要となる。

さらに、トレーニングはフルレンジモーションを基本とし、ウエイト挙上が限界に達したところで追い込みとしてパーシャルレップ法を取り入れるのが良い。

これによりフルレンジモーションのみでトレーニングを行った場合よりもレップ数をさらに稼ぎ、筋肉の緊張持続時間(TUT)を長く取ることができるのでトレーニングボリュームをさらに増大さでることができる。

※トレーニングボリュームは、筋肥大を誘発する主要ファクターである。

 

トレーニングのトータルボリュームに関する内容については以下の記事を参考にしていただきたい。

<参考>【筋肥大とレップ数】筋肥大に最も効果的なレップ数とは

 

パーシャルレップ法のポイント

 

パーシャルレップ法をトレーニングメニューに取り入れる際のポイントをまとめておこう。

  • トレーニングはフルレンジモーションを基本とする

➡フルレンジモーションは筋肥大により効果的であるため

 

  • フルレンジで挙上できなくなったらパーシャルレップ法を取り入れる

➡レップ数およびTUTを稼ぐことができる

 

  • パーシャルレップは筋肉が最大にストレッチされる可動域で行う

➡筋肥大のトリガーであるメカニカルテンションを増大させることができる

 

ジムを見回してみると、一部の可動域だけでトレーニングを行っているトレーニーを見かけることがあるが(特にバーベルカールの場合は上半分のハーフレンジだけなどといったように)、この場合せっかくの筋肥大のチャンスを半減させている可能性があるので是非注意したい。

 

補足:パーシャルレップ法の具体例

バーベルカール

 

パーシャルレップ法の効果的な取り入れ方をバーベルカールを例にして紹介しよう。

 

バーベルカール

1セット目 フルレンジモーション(8レップス)

2セット目 フルレンジモーション(8レップス)

3セット目 フルレンジモーション(8レップス)

4セット目 フルレンジモーション(8レップス)
+パーシャルレップ法(下半分ハーフレンジで+5レップス)

 

1~3セット目まではフルレンジでウエイト挙上を行う。

4セット目はフルレンジで通常通りバーベルを挙上させ、限界に達したところで間髪入れずパーシャルレップ法を取り入れて、ウエイト挙上を5レップス追加する。

この時、パーシャルレップは筋肉が引き伸ばされた状態(ボトムポジション)から約45°の可動域で行うのがポイントとなる。

 

パーシャルレップ をうまく利用して筋肥大をさらに加速させよう!



参考文献
[1] Pinto RS, et al (2012) Effect of range of motion on muscle strength and thickness.
[2] McMahon G, et al (2014) Muscular adaptations and insulin-like growth factor-1 responses to resistance training are stretch-mediated
[3] McMahon G,et al (2014) Muscular adaptations and insulin-like growth factor-1 responses to resistance training are stretch-mediated
[4] Angeliki Nikoletta Stasinaki,et al(2018) Triceps Brachii Muscle Strength and Architectural Adaptations with Resistance Training Exercises at Short or Long Fascicle Length
[5] Valamatos MJ,et al (2018) Influence of full range of motion vs. equalized partial range of motion training on muscle architecture and mechanical properties