筋肉 は何日で落ちるか?|多忙でも筋肉を維持するテクニック

[記事公開日]2018/01/19
[最終更新日]2024/10/07

トレーニーであれば誰もが懸念すること。

それは、 筋肉 が落ちてしまうことではないだろうか。



 

筋肉 が落ちてしまうのではという懸念

 

筋トレを懸命に行うトレーニーであれば、筋肉を増やすのがいかに時間を要する長期的プロセスであり、筋トレを行わない日が長く続くと 筋肉 が落ちてしまうことくらい重々承知だろう。

筋トレに対するモチベーションがなかなか上がらない時でも、筋肉が落ちてしまうか心配になり無理やりにでもジムに向かうこともあるのではないだろうか。

しかし、不測の事態というものが誰にでも起こり得る。

 

怪我、多忙、病気、モチベーションの低下などの様々な事情により筋トレをある一定期間行えない事態は誰にでも起こり得る。

2~3日間、筋トレが行えないくらいで筋肉が落ちたと考えるトレーニーはそう多くないと思うが、筋トレが出来ない期間が1週間、あるいは2週間と長引くと、筋肉は一回り小さくなり、扱えるウエイト重量も低下するため、筋肉量が減少しているように感じる。

そこで今回は、スポーツ科学の力を借りて一体何日間筋トレを休んだら筋肉が減少し始めるのかを調べてみよう。

 

 

筋トレを休んでからどれくらいで筋肉は落ち始めるか?

 

筋トレを長期間休むとどうなるのかを筋出力(パワー)筋肉量(筋量)の両点についてみてみよう。


筋出力(パワー)

デカい肩

 

筋出力はトレーニングを3週間程度休んだ場合に、顕著な低下が認められるようになる。

一般人よりも高いレベルでスピードやパワー出力を求められるアスリートの場合は、早ければ2週間程度で筋出力(パフォーマンス)の低下が顕著に認められるようになる。

 

 

筋肉量(筋量)

筋肉

 

これまでに発表された複数の研究報告を総括すると、トレーニングを2~3週間休んだ場合に筋肉量が減少し始めることが分かっている。

しかし、ここで考慮すべき事柄がある。

 

この2~3週間の間に減少した筋肉量の実際の正体は、筋肉そのものではなく筋肉に貯蔵されていた筋グリコーゲン(糖分)と水分であるという報告[1]がある。

 

➡確かに、筋トレを2週間休んだ場合、筋肉中の筋グリコーゲン量は約50%減少することが研究により明らかとなっている。

 

筋グリコーゲンは水分を保持する性質があるため、筋グリコーゲンの減少に伴い、筋肉中に含まれる水分量も減少するため、筋肉の見た目は明らかにしぼみ、筋肉量が減少したように見えるが、実際のところ筋肉量そのものは減少していないという見解である。

 

 

筋肉が萎んだように感じるのは筋肉中の水分量の減少が主原因

筋肉

 

実際のところ、筋トレを3週間行わなかった場合、700 gもの筋肉量が減少したとの報告があるが、その700gの正体は筋肉中に蓄えられていた水分だったという。

 

したがって、2~3週間筋トレを行えず筋肉が萎んだように見えても実際に減少したのは筋グリコーゲンおよび水分であると考えるのが合理的であり、筋肉の減少を過度に心配する必要はなく、トレーニングを再開すれば筋肉中のグリコーゲン量と水分量は比較的早期に回復すると考えてよい。

 

ポイント
やむを得ない理由で筋トレを2~3週間休む事態に陥っても栄養管理(特にタンパク質を確保)を適切に行えば、ほぼ筋肉は落ちることはないと考えてよい。



年齢を重ねるごとに筋肉の減少スピードは増加

 

さらに、筋肉量の減少速度は年齢にも左右される。一般に、歳を重ねるごとに筋肉量の減少速度は加速する[2]。

また、怪我などにより筋肉をほとんど(或いは全く)動かさない期間が長期間に渡った場合、筋肉の萎縮(筋肉量の減少)はさらに加速すると考えられている。

 

➡事実、病気等の理由により、完全に寝たきりの状態が続いた場合、1週間程度で筋肉の減少が始まったことが報告されている(研究報告[3])。

​​

 

人間の身体は、生命維持のため可能な限り無駄なエネルギー消費を避けようとする。

筋肉

 

そのため、維持に非常に多くのカロリー(エネルギー)消費を必要とするジェットエンジン的存在の筋肉は身体にとってはお荷物であり、筋肉が使用されない期間が続くと身体は筋肉が必要ないと判断し、エネルギー消費が多い筋肉を優先的に減らそうとする。

 

➡つまり、筋肉は使い続けない限り失う運命にあるのである。

 

筋肉量を維持するポイント
筋トレに十分な時間が確保できない場合であっても筋肉量を維持したい場合は、例え僅かな時間であっても筋トレを行う努力をすることである。

 

ここで、多忙を極めるあなたでも可能な限り筋肉を維持する方法を紹介しよう。

 

 

筋肉 量を可能な限り維持する方法

 

可能な限り筋トレの時間を確保する

ベータアラニン

 

これまで90分行っていた筋トレのボリュームを1/3に減らしてもよいので、定期的に筋肉に刺激を送り込むことが筋肉量の維持には重要である。

この際、筋トレの強度は維持するようにしよう。

つまり筋トレのボリュームが減っても筋トレの強度(使用するウエイトの重量)は下げないように努めるのである。

 

筋トレのボリュームを下げるとは

  1. これまで筋トレを90分行っていたのなら30分に減らしてでも筋トレを継続する努力をする
  2. これまで筋トレを週に5~6回行っていたのなら、回数を2回程度に減らして筋トレを継続する

 

とにかく筋トレのボリュームが減っても、筋トレの強度を維持し、筋肉を使う習慣を継続することが筋肉を落とさない秘訣である。

 

 

我々にはマッスルメモリーという強い味方が付いている

 

やむを得ず筋トレが長期にわたって行えない場合であっても我々には“マッスルメモリー”という強い味方が付いている。

マッスルメモリーとは

その名の通り“筋肉の記憶”であり、一度大きく成長した筋肉が筋トレの長期間の中断により衰えて萎縮してしまっても、トレーニングを再開すれば短期間のうちに以前の筋肉量まで回復させることができるというものだ。

 

筋トレにより筋肥大が起こると、筋繊維中に存在する“筋核”と呼ばれる核の数が増加する。

トレーニングを長期間中断した場合でもこの筋核数はそう簡単には減少しないことが分かっており、ひとたびトレーニングを再開すれば、この筋核を再び生成するプロセスを省けるため、筋繊維が以前の大きさまで短期間のうちに回復できるのである。

 

 

まとめ

 

総じて、諸事象によりトレーニングが2週間程度行えなくても筋肉の減少をあまり心配する必要はない。

筋肉の減少を心配し過ぎるあまりストレスを貯める方が、よほど筋肥大には悪影響を及ぼす。

筋トレが行えない期間が長引いても、リフレッシュ(ディロード)の良い機会だと思って、栄養管理(特に十分量のタンパク質を確保)だけはしっかりと行うようにしよう。



参考文献

[1] Iker Mujika, et al. (2001) Muscular charateristics of detraining in humans

[2] Astrid Zech, et al. (2012) Residual effects of muscle strength and muscle power training and detraining on physical function in community-dwelling prefrail older adults: a randomized controlled trial

[3] Dirks ML, et al. (2016) One Week of Bed Rest Leads to Substantial Muscle Atrophy and Induces Whole-Body Insulin Resistance in the Absence of Skeletal Muscle Lipid Accumulation.