ボディビル大会前の減量期間中に 筋肉はどれだけ減るか

[記事公開日]2018/08/15
[最終更新日]2020/03/14

筋肉はどれだけ減るか

ボディビルやフィジークの大会に向けた減量期間中に筋肉は一体どれだけ減ってしまうのか?

減量のプロでもあるボディビルダーが減量期間中に筋肉量を落とすことなどあり得るのか?

 

本記事では、ボディビルダーおよびフィジーカーが大会に向けた減量期間中に一体どのくらいの筋肉量を失ってしまうのか、そして、減量期間中における筋肉量の減少を最小限に抑えるにはどうすれば良いのかについて最新の文献データ[1~9]に基づき徹底的に解説します。



この記事を読んでわかること

  • 減量期間中に落ちる筋肉量の平均
  • 筋肉の減少を最小限に抑える方法
  • 大会に向けた適切な減量期間の設定方法

 

 

減量期間中に筋肉は落ちてしまうのか?

筋肉はどれだけ減るか

 

ボディビル大会に向けた減量期間中に一体どれだけの筋肉量が落ちてしまうのか?

筋肉の大きさ

 

その謎を解決する手掛かりとなる文献を調査してみた。

すると、大会準備期間中のボディビルダーたちを調査対象とした研究はあまり積極的になされてはいないことが分かった。

それでもなお、ボディビルダーが減量期間中に失う筋肉量を追跡した文献データをいくつか見つけることができたのでその結果を報告しよう。

 

減量期間中に落ちる筋肉量の平均

筋肉はどれだけ減るか

 

大会に向けて減量を行ったナチュラルボディビルダー11名を対象とした文献データ[1~8]を基にすると、減量期間中に減少したLBM(=除脂肪体重)は、減量で落とした全体重のおよそ30.1%を占めることが分かった(各データに基づいた管理人による計算)。

 

つまり、10 kgの減量を成功させた場合、その10 kgのうちの約30%つまり3 kgはLBM(除脂肪体重)から失われたと言い換えることができる。

また、この30%という値は11名のボディビルダーから得られた平均値であるが、各ボディビルダーから得られた個別データに注目してみると、減量期間中に最も多くのLBM(除脂肪体重)を失ったボディビルダーの場合で51.18%[4]、そして最もLBMを減らさなかったボディビルダーの場合で9.90%[2]という結果になったことが分かった。

 

このように、筋肉を極力落とさずに減量を行うプロであるボディビルダーであっても、減量期間中に落とした全体重のうち、約10~50%(平均:30%)はLMB(除脂肪体重)から落ちてしまうのである。

 

また、他の文献を参考にして判明したことは、非ナチュラルボディビルダーよりもナチュラルボディビルダーの方が減量期間中にLMBを失いやすいということも明らかとなった。

ポイント

つまり現実として、ナチュラルボディビルダーが減量期間中にLBMを全く減らすことなく減量を行うのはほぼほぼ不可能なのである。



LBM(除脂肪体重)=筋肉?

 

前述したように、減量期間中には、ある一定量のLBM(除脂肪体重)の減少はほぼほぼ避けられないことが分かった。

そして、ここで注目しておきたいのが、LBM=筋肉なのか?という疑問である。

LBM(除脂肪体重)=筋肉というように解釈されることも多々あるが、両者の定義は厳密には異なっている。

LBMとは

LBM(=Lean Body Mass:除脂肪体重)とは、全体重から脂肪組織を差し引いた総量のことである。

つまり、LBMには骨格筋(つまり筋肉)、臓器組織、血液成分、さらに細胞内水分や細胞外水分といった、脂肪組織以外の全ての組織が含まれている

 

そして、先ほどナチュラルボディビルダーは減量期間中にある一定量のLBMを失ってしまうということを紹介したが、減量期間中に失われるLBMの正体は必ずしも骨格筋(=筋肉)という訳ではないのである。

筋肉はどれだけ減るか

 

事実、減量期間中に失われるLBMの正体は、骨格筋(=筋肉)そのものというよりも、むしろ肝臓や腸などの臓器組織に保持される水分が大半であるという見方が一般的である。

そして、筋肉等を構成するLBMのおよそ70%が水分であることを考慮すると、減量期間中に失われる正味の筋肉量は、失われる全体重の約10%あるいはそれ以下であると考えるのが妥当である。

つまり、これまでの話を簡潔にまとめると、減量期間中に失われる全体重のうち約30%はLBMから失われるが、LBMの大半が水分から構成されることを考慮すると、減量期間中に失われる正味の筋肉量は、減量で失う全体重の10%前後であると考えることができる。

 

 

筋肉量を極力落とさないようにするには

減量時の摂取カロリー

 

ここまでは、減量により一定量の筋肉が失われてしまうという悲しい現実を紹介したが、減量のペースを適切に設定することで、減量期間中に失われる筋肉量を最小限に抑えられることがこれまでの研究報告[9,10]により明らかとなっている。

これまでの諸研究[9,10]により、筋量・筋力を極力維持したまま減量を行う場合、減量のペースは週あたり体重の0.5~1%が推奨されている。

 

かつては、大会向けた減量期間として12週間が推奨されることがごく一般的であったが、現在では筋量・筋力保持の観点から、上記減量のペースを守り、必要に応じて減量期間を十分長く設けることが推奨されている。

また、非常に稀なケースではあるが、一般に推奨されている減量のペース(体重の1%/週)で減量を行った場合でも、減量期間中に筋肉量が大きく減少してしまうケースが報告されている[6]。

 

それ故、何としてでも減量期間中に失われる筋肉量を最小限に抑えたい場合は、減量のペースを上記の推奨ペース(週あたり体重の0.5~1%)よりもさらにゆっくりとした減量ペース(週あたり体重の0.4~0.7%)に設定することが強く推奨される。

これが、「必要に応じて減量期間は十分長く設けるべき」と言われる所以である。

ポイント
一般論として、減量のペースは緩やかに設定すればするほど筋肉量の維持は容易になる。

 

上記事柄を全て考慮した、ボディビル大会に向けた、筋肉量を極力減らさない正しい減量期間の設定方法については以下の関連記事で詳細に解説しているので是非ご覧ください。

 

 

減量期間中に 筋肉はどれだけ減るか のまとめ

 

今回は、多くの人たちが疑問に感じているであろう減量期に失われる筋肉量について複数の文献データに基づき解説してみました。

筋肉量を極力維持するには、余裕を持って計画的に減量を進めていくことが何よりも大切であることを押さえておこう。



参考文献

[1] van der Ploeg GE,et al (2001) Body composition changes in female bodybuilders during preparation for competition

[2] Pardue A,et al (2017) Unfavorable But Transient Physiological Changes During Contest Preparation in a Drug-Free Male Bodybuilder

[3] Trexler ET,et al (2017) Physiological Changes Following Competition in Male and Female Physique Athletes

[4] Rossow LM,et al (2013) Natural bodybuilding competition preparation and recovery: a 12-month case study

[5] Kistler BM,et al (2014)Case study: Natural bodybuilding contest preparation.

[6] Scott Lloyd Robinson,et al (2015) A nutrition and conditioning intervention for natural bodybuilding contest preparation

[7] Samantha G. Gwazdauskas (2016) Female Natural Bodybuilding Competition
Preparation

[8] Lambert CP,et al (2004) Macronutrient considerations for the sport of bodybuilding

[9] Garthe I,et al (2011) Effect of two different weight-loss rates on body composition and strength and power-related performance in elite athletes