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1回の食事で吸収されるタンパク質は30 gが限界?
タンパク質は1回の食事で最大30gしか吸収されないという迷信を耳に挟んだことはないだろうか。
この比較的広く知られている迷信が仮に事実だとすれば、1回の食事で吸収されるタンパク質量は30 gが限度ということになるが、結論から言うと「1回の食事で吸収されるタンパク質量は30 g説」は正しくない。
「1回の食事で吸収されるタンパク質は30g」という迷信が生まれた理由
この迷信は、2006年に発表されたある研究報告[1]から派生して生まれたとされている。
この研究報告では、種類の異なるタンパク質の各吸収速度(1時間当たり)を測定した結果が報告されている。
そのいくつかを引用して紹介しよう。
タンパク質の吸収速度
ホエイプロテイン:8~10 g/h (吸収が速い)
カゼインプロテイン:6.1 g/h
ソイプロテイン:3.9 g/h
卵プロテイン(調理):2.9 g/h
卵プロテイン(生):1.9 g/h (吸収が遅い)
➡つまり、タンパク質の種類により、1時間あたりに体内に摂り込まれるタンパク質の速度(つまり吸収速度)は異なり、各タンパク質の吸収量には限度があるというのである。
そしてここで誤解が生じる
そして、この研究結果とボディビルダー達はおよそ3~4時間ごとに食事を摂取するという事実が妙に絡み合い、
という構図が出来上がり、1回の食事でタンパク質は30 gしか吸収されないという迷信(誤解)が生まれてしまったのである。
しかし、この迷信は全くもって正しくない。
我々の身体の機能は実際のところ、我々が考えているよりも遥かに利口に出来ているのである(後で解説)。
これ以外にも、1回の食事で吸収されるタンパク質は30 gが限界という迷信が生まれた理由はいくつもある。
「1回の食事で吸収されるタンパク質は30 g」という迷信が生まれたもう一つの理由
「1回の食事で吸収されるタンパク質は30 g」という迷信が生まれたもう一つの理由は次に示す研究報告[2]に由来するとされる。
研究報告
筋トレ直後に卵プロテイン20 gを摂取したグループと卵プロテイン40 gを摂取したグループとでは、筋タンパク質合成(筋肥大)に顕著な差は見られなかった。
そして、この研究報告から新たな誤解が生まれることになるのである。それが、次の誤解である。
新たな誤解
1度にタンパク質を大量に摂取しても筋タンパク質合成には過剰なタンパク質は使用されない。
それでは、結局のところ、1回の食事につきタンパク質は何グラム吸収されるのだろうか。
1回の食事で吸収できるタンパク質は少なくとも30 g以上
本当は、「1回の食事で吸収できるタンパク質量は〇〇 gです」という明確な回答を読者の皆様に紹介したかったのだが、現時点では1回の食事で吸収されるタンパク質の具体的な数値は明らかとなっていない。
というのも、性別、年齢、トレーニング頻度・経歴・内容、その他の複雑な要素が互いに絡み合い、具体的な数値を導き出すのが非常に困難であるためである。
しかし、2018年に発表された最新の研究報告[3]を基にすると、少なくとも1回の食事で吸収されるタンパク質は30 g以上であることが示されている。
というもの、タンパク質、炭水化物、そして脂質から成るバランスの取れた食事を摂取すれば、食後5~6時間にわたって血中アミノ酸濃度が高く維持され、ゆっくりと栄養素が吸収されるため、1回の食事で吸収されるタンパク質量は我々が考えているよりもはるかに多いと考察できる。
これまでのところ、1回の食事でタンパク質を大量に摂取した場合とタンパク質を小分けして摂取した場合とで、筋肥大(筋肉増加量)には大きな差は認められなかったとする主張と、小分けにして摂取した方が筋肥大は加速するという主張の真っ向から対立する研究報告が複数なされているが、現時点ではタンパク質は一度に摂取するよりも小分けにして摂取した方が筋肥大の成果を最適化する上で望ましいという見解が優勢である。
1回の食事で推奨されるタンパク質摂取量
2018年に発表された最新の研究報告[3]によれば、24時間にわたりアナボリック状態を維持するには、1回の食事につき、体重(kg)×0.4~5.5 gのタンパク質を摂取することが望ましいと結論付けられている(1日4回食事を摂取する場合)。
例)体重80 kgの場合
1回の食事で推奨されるタンパク質量は32~44 g程度となる。
まとめ
1回の食事で吸収されるタンパク質は少なくとも30 g以上である。
具体的な数値は、性別、年齢、筋肉量、活動レベル、トレーニング強度・ボリューム等の諸条件により大きく左右される。
また、筋肥大プロセスを最大化させたい場合は、タンパク質を1度に大量に摂取するよりも、複数回に分けて摂取する方が望ましいというのが現在のところ最も広く受け入れられている見解である。
筋肥大を最大化する食事頻度と食事回数については以下の記事を参考にして下さい。
参考文献
[1] Lyle McDonald (2006) The Protein Book [2] Moore DR, et al (2009) Ingested protein dose response of muscle and albumin protein synthesis after resistance exercise in young men [3] Brad Jon Schoenfeld,et al (2018) How much protein can the body use in a single meal for muscle-building? Implications for daily protein distribution