アダプトゲン |ストレス・精神疲労・肉体疲労に効果があるとされる天然ハーブ

[記事公開日]2018/09/16
[最終更新日]2019/11/17

アダプトゲン

 

筋トレに熱中すると、サプリメントにも興味が湧いてくる。

オススメサプリメント

 

プレワークアウトサプリBCAAカーボドリンクベータアラニンといったトレーニングパフォーマンスを効果的に高めてくれるサプリメントや、筋肥大の最適化には欠かせないプロテインパウダーといったメジャーなサプリメントは多くのトレーニーが摂取している。



その一方で、普段は表立って注目されることは余りないが、その有効性が示されているサプリメントも実は数多く存在する。

その代表的なサプリメントが、一般に”アダプトゲン系サプリ”と呼ばれる天然のハーブを主成分とするサプリメントである。

 

このアダプトゲン系サプリには、多忙な日々を送る”現代人”の多くが抱える問題”ストレス”に対する抵抗力を高める効果があることが分かっている[1,2]。

今回の記事では、アダプトゲンとは一体何なのか?安全なのか?そしてアダプトゲンが持つストレス抑制効果について、これまでに発表された文献データ[1~12]に基づき詳しく解説します。

 

 

アダプトゲン とは?

アダプトゲン

 

アダプトゲンとは、肉体的・精神的疲労、または不安感などの身体へのストレスに対する抵抗力を高める効果がある天然ハーブのことである。

 

ハーブと聞くと何だが危ないイメージが膨らみそうになるが、アダプトゲンはそのような危ないものでは全くない。

高麗人参

 

例えば、栄養ドリンクに配合されることも多い”高麗人参”もアダプトゲンの一種である。

また、アダプトゲンにはストレスに対する抵抗力を高める効果だけでなく、免疫機能を正常に保つ効果も報告されている[2]。

 

 

アダプトゲン は安全?

アダプトゲン

 

アダプトゲンは本当に安全なのか?と疑問に思われる方もおられるだろう。

これに対して、ロシアの学者であるラザレフ氏は1947年、アダプトゲンを「人体には無害であり、特定の原因だけによらないストレスに対する抵抗能力を高める効果のある天然ハーブ」として定義している[3]。

 

これは言い換えれば、「アダプトゲンは規定量を摂取している限り、人体には何ら害を及ぼすものではなく、特定の原因だけに起因しない、物理的、化学的、生物学的に起因する様々なストレス因子に対する抵抗力を高め、身体を正常化する作用を持っている」ということである。

 

ラザレフ氏が定義したように、アダプトゲンは、我々の生理機能に対してある特定の作用のみを持つ訳ではなく、我々の生理機能の状態に応じて、各器官の働きを強めたり弱めたりして、我々の生理機能のバランスを保ち、正常化してくれる働きがあるのである。

3分割の筋トレ

 

例えば、今あなたが何らかの理由で大きなストレスを抱えているとしよう。この場合、アダプトゲンはそのストレスを低減するように働く。

 

逆に、今あなたが幸せの絶頂状態にあり、ストレスをほとんど抱えていないとしよう。この場合、アダプトゲンはその状態が持続するように働く。

このように、アダプトゲンアダプト(adapt:適応する)という単語に由来するように、あらゆる状況に対して身体を常に正常化するように働いてくれるのである。

 

 

 

アダプトゲン の様々な効果

 

前述の通り、アダプトゲンには、

  • あらゆるストレスに対する抵抗力の強化
  • 生理機能の正常化

 

といった効果があるとされている。

ストレスに対する抵抗力の強化に関して言えば、アダプトゲンには我々のストレスに対する感受性を鈍化させ、ストレスを感じにくくする作用があると考えられている。

コルチゾール

事実、これまでに発表された複数の研究報告[1,2]により、アダプトゲンにはストレスホルモンである”コルチゾール”の過剰な分泌を抑え、我々のストレスレベルを低く保つ効果があると報告されている。

このように、我々が慢性的に感じる疲労感やストレス、そして不安感といった長期的なストレス因子に対して効果をもたらしてくれるのである。

 

アダプトゲン

 

それだけでなく、アダプトゲンには、認知機能や身体機能の改善といったより短期的な機能改善にも効果を発揮することが分かっている。

例えば、アダプトゲンについて調査を行った2003年の研究報告[4]によれば、アダプトゲンを摂取することで、非摂取時に比べて、精神疲労がより顕著に低減し、さらに血圧を低くする効果があることが分かっている。

また、アダプトゲンの中には脳内の神経伝達物質の代謝を促進したり、我々の脳の機能を正常化する効果があることも分かっている[5]。

このように、アダプトゲンにはストレスや疲労感といった長期的なストレス因子に対する抵抗力を高めたり脳や身体の機能向上にも効果をもたらすと考えられているのである。

 

 

 

アダプトゲンに分類されるハーブの一例

アダプトゲン

 

アダプトゲンに分類される天然ハーブは数多く存在するが、自分にとって最適な天然ハーブを見つけることはそう容易ではない。

そこで、ここからはこれまでに発表された文献データに基づき、その効果が注目されているアダプトゲンの幾つかを紹介します。


チョウセンニンジン

チョウセンニンジン

摂取推奨量:200~400 mg

 

チョウセンニンジンは、最も有名なアダプトゲンのひとつだが、ストレスに対する抵抗力を高める効果に加えて、認知力の向上(集中力の向上)により効果があると報告されている[6]。

チョウセンニンジンは多くの場合、健康促進、抗うつ、エネルギーレベル向上といった総合的な正常効果が期待できる強壮剤として利用されることが多い。

このように、ある特定の原因によらない様々なストレス因子に対して改善効果をもたらすチョウセンニンジンは、まさにアダプトゲンの代表格といって良い(しかし、チョウセンニンジンが持つとされる上記効果の是非については、文献ごとに見解が異なるため、こらかの効果の真偽については、各自が実際に試してみないと分からない)。

 

 

イワベンケイ

イワベンケイ

摂取推奨量: 50~100mg

 

イワベンケイは、抗ストレス薬に配合されることも多いアダプトゲンのひとつである。

研究報告[7]によれば、イワベンケイはストレスに対する抵抗力を高める効果に加え、疲労感を抑え、エネルギーレベルを高める効果があることが報告されている。

この疲労感の抑制効果により、認知力(集中力)の向上が見られたとも報告されている。

 

 

イチョウ

イチョウ

摂取推奨量:120-240mg(1~3回の複数回に分けて摂取)

 

イチョウは、脳の機能向上に効果があるとして注目されつつあるアダプトゲンのひとつである。

例えば、複数の研究報告[8,9]により、イチョウの摂取により短期記憶力が向上するだけでなく、認知機能の低下を遅らせる効果があることも報告されている。

 

 

レモンバーム

レモンバーム

摂取推奨量:300mg

 

レモンバームは、現時点ではそれほど多くの研究報告はなされていないが、摂取により興奮作用を抑える効果があると報告されている[10]。

また、同研究報告によれば、レモンバームには心を落ち落ち着かせる効果があることも報告されている。

また、マウスを使った実験結果にはなるが、レモンバームの主成分であるロスマリン酸には、抗うつ作用があることが判明しているだけでなく[11]、レモンバームが持つ抗酸化作用により、近年ではアルツハイマー病などの認知症予防に向けた研究も盛んに行われている[12]。

 

 

アダプトゲン のまとめ

アダプトゲン

 

今回はあまり馴染みのないサプリメントであるアダプトゲンについて紹介しました。

現代社会に生きる我々は、様々なストレスに立ち向かいながら生活をしている。

適度なストレスであれば対処できるが、過度なストレスが長期間持続すると、ストレスに対する防御機構が限界に達し、精神面および肉体面において様々な不調が生じる。

こうなってしまうと、トレーニングに対する意欲はおろか、日常生活にも支障が出てしまう。

このような状態に陥ってしまいそうだと感じたら、人体には無害であるとされるアダプトゲンの力を借りてみるのも一つの手になるのではないでしょうか。

 

アダプトゲン

 

トレーニングを日々懸命に行う人たちは見かけによらず繊細で真面目な人が多いので、ストレスを抱え込みやすい人も多いように思います。

当時、ストレスに相当悩まされて大きな挫折を経験した私がいろいろリサーチした結果、アダプトゲンは一度は試してみる価値のあるサプリメントであると確信しています。

今回紹介したアダプトゲンは、アイハーブ等でもたくさん取り扱われているので、本記事を参考にして、自分の症状に最も合いそうなアダプトゲンを見つけて試してみて下さい。

本記事でストレスに対処するための選択肢がひとつ増えれば嬉しく思います。



参考文献

[1] Olsson E,et al (2009) A randomized double-blind placebo controlled parallell group study of SHR-5 extract of Rhodiola rosea roots as treatment for patients with stress related fatigue

[2] Panossian A,et al (2010) Effects of adaptogens on the central nervous system and the molecular mechanisms associated with their stress

[3] Steven M (2007) Adaptogens: Herbs for Strength, Stamina, and Stress Relief

[4] Shevtsov A,et al (2003) A randomized trial of two different doses of a SHR-5 Rhodiola rosea extract versus placebo and control of capacity for mental work

[5] Choudhary M,et al (2004) Cholinesterase inhibiting withanolides from Withania somnifera

[6] Reay JL,et al (2005) Single doses of Panax ginseng (G115) reduce blood glucose levels and improve cognitive performance during sustained mental activity

[7] Panossian, A et al (2005) Stimulating effect of adaptogens: an overview with particular reference to their efficacy following single dose administration

[8] Napryeyenko, O,et al (2007) Ginkgo biloba special extract in dementia with neuropsychiatric features

[9] Mix, J.A,et al (2000) An examination of the efficacy of Ginkgo biloba extract EGb 761 on the neuropsychologic functioning of cognitively intact older adults

[10] Kennedy DO,et al (2004)  Attenuation of laboratory-induced stress in humans after acute administration of Melissa officinalis (Lemon Balm)

[11] Kondo S,et al (2015) Antidepressant-like effects of rosmarinic acid through mitogen-activated protein kinase phosphatase-1 and brain-derived neurotrophic factor modulation[12] 金沢大学 ロスマリン酸認知症予防プロジェクト