スーパーセット とコンパウンドセットの効果と科学的根拠に基づいたやり方

[記事公開日]2018/07/23
[最終更新日]2020/04/03

スーパーセット

 

筋トレ中・上級者が良く取り入れるトレーニングテクニック、スーパーセットとコンパウンドセット。

しかし、スーパーセットとコンパウンドセットが持つメリットを最大限に享受するには、それぞれのメリットと、トレーニングメニューへの正しい導入方法をしっかりと把握しておく必要がある。

 

今回の記事では、スーパーセットとコンパウンドセットのメリットとトレーニングメニューへの具体的導入方法を最新の文献データ[1~3]に基づいて詳しく解説します。



まずはスーパーセットから詳しく見ていくことにしよう。
 

 

スーパーセット とは

スーパーセット

 

スーパーセットとは、主動筋と拮抗筋の関係にある2つの筋肉(後ほど解説)をインターバル挟まずに連続して鍛えるセット法のことで、連続する2種目を終えたところで1セットとしてカウントをする。

そしてセット間のインターバルは1~3分程度設け、合計3~5セット行う。

 

例えば、上腕二頭筋を鍛えるバーベルカールを行った後、すぐさま上腕三頭筋を鍛えるケーブルトライセプスエクステンションを行えば、立派なスーパーセットとなる。

スーパーセット

 

例)上腕でスーパーセットを組む場合(3セット)

バーベルカール+トライセプスエクステンション

インターバル(1~3分)

バーベルカール+トライセプスエクステンション

インターバル(1~3分)

バーベルカール+トライセプスエクステンション

 

 

主動筋と拮抗筋?

スーパーセット

 

スーパーセットは通常、主導筋と拮抗筋の関係にある2つの筋肉を組み合わせてメニューを組む。

 

主動筋と拮抗筋との関係を簡単に説明すると、例えば、上腕二頭筋を収縮させたとき、その裏側にある上腕三頭筋は弛緩した状態となる。

このように、互いに反対の動きをする2つの筋肉(=主導筋と拮抗筋)を連続で鍛えるのが一般的なスーパーセットの組み方となる。

主動筋と拮抗筋の関係にある筋肉対を紹介しておこう。

  • 大胸筋と広背筋
  • 上腕二頭筋と上腕三頭筋
  • 大腿四頭筋とハムストリング

 

ここで、ちょっとした疑問。

スーパーセットを行う場合、どうして主動筋と拮抗筋の関係にある筋肉対を選ぶことが望ましいのか?

 

それは、主動筋と拮抗筋の関係にある筋肉対を連続で(インターバル無しで)鍛えることにより

  • トレーニング時間の短縮(50%減)
  • トレーニングボリュームボリュームの増大(通常のトレーニングと比較)

 

というメリットが得られたと主張する研究報告[2]が複数発表されているからである。

 

これは、主動筋と拮抗筋の関係にある筋肉対を連続で鍛えることによりストレッチショートニングサイクル(=伸張-短縮サイクル)の効果により、トレーニングパフォーマンスが向上し、その結果トレーニングボリュームを増大させる効果が期待できると考えられているためである(上記論文より)。

 

ポイント
スーパーセットは、主導筋と拮抗筋の関係に無い筋肉の組み合わせ(例えば、広背筋と上腕三頭筋など)でも行うことはできるが、上記理由により、主導筋と拮抗筋の関係にある筋肉対でメニューを組んだ方がより合理的なトレーニングが可能になると考えられる。



スーパーセット のメリット

スーパーセットの最大のメリットは、トレーニングを効率的に行うことができる点にある。

2種目をインターバルを挟まずに連続して行うため、トレーニングを素早く終えることができる[1]。

例えば、ベンチプレス(大胸筋)とベントオーバーローイング(広背筋)をインターバルなしに連続して行えば、それだけトレーニング時間を短縮することができるという訳である。

テストステロン

 

また、スーパーセットを行った場合、通常のトレーニングと比較して、トレーニング24時間経過時点のテストステロン値が高く維持されていたとの報告もなされているが、実験に協力した被験者数が14名と少数であることから、この結果を一般化するにはさらなる追加研究が必要である。

 

 

スーパーセットのデメリット

オーバートレーニング

 

2017年に発表された研究報告[1]によれば、スーパーセットにはトレーニング時間を短縮できるというメリットがある一方で、被験者らが知覚するトレーニング強度が増大することが分かったという。

トレーニング強度が増大するということは、同時に疲労度も増大することを意味するため、スーパーセットを取り入れる場合はトレーニング後の休息期間を余分に設ける必要が生じる可能性があると同研究報告では述べられている。

筋トレのセット数

 

さらに、2014年に発表された研究報告[3]によれば、スクワットやデッドリフトなどの高重量を扱うコンパウンド種目にスーパーセットを適用した場合、通常のトレーニング方法に比べて、トレーニングパフォーマンスがやや低下し、トータルでみたときのトレーニングボリュームが減少することが分かったという。

通常、スクワットなどの高重量を扱うコンパウンド種目を行う場合は、セット間に十分なインターバルを設けることでトレーニングパフォーマンスを最適化することができるため、インターバルを設けないスーパーセットはコンパウンド種目には向かない。

つまり、高重量を扱うコンパウンド種目においてはスーパーセットを組まずに通常のトレーニング方法で行う方が、トレーニングボリュームを効果的に増大させ、筋肥大には合理的な選択であると考えらえる。

 

上記の説明を総括するとスーパーセットのメリットとデメリットは以下のように簡潔にまとめることができる。

メリット

トレーニング時間の短縮

(場合により)トレーニングボリュームの増大

 

デメリット

疲労度の増大

(コンパウンド種目に適用した場合)トレーニングボリュームの減少を招く恐れあり

 

何とも分かりやすい。

スーパーセット

 

スーパーセットを行うことによりトレーニング時間を効果的に短縮できる分、疲労度は増大するということである。

総じて、普段から多忙を極めトレーニング時間を確保するのが難しい人、あるいはトレーニング時間を引き延ばすことなくトレーニングボリューム(つまり、セット数あるいは種目数)をさらに増大させて筋肥大のポテンシャルをさらに引き出したい人は、スーパーセットを積極的にトレーニングに取り入れるのが理想的である。

 

 

スーパーセット の積極的な導入が勧められる人

スーパーセット

 

  • トレーニング時間を確保するのが難しい多忙人
  • トレーニングボリュームをさらに増大させ筋肥大をさらに引き出したい人

 

ここまでのところでスーパーセットのメリット・デメリット、そしてスーパーセットの積極的な導入が勧められる人物像を紹介しました。

ここからは、スーパーセットの具体的なセットの組み方を紹介します。

 

 

スーパーセットの具体例

スーパーセット

 

最も一般的なスーパーセットの具体例をいくつか紹介しよう。

  • ベンチプレス(胸)+ベントオーバーローイング(背中)
  • アームカール(二頭筋)+トライセプスプッシュダウン(三頭筋)
  • レッグエクステンション(大腿四頭筋)+レッグカール(ハム)



ベンチプレス+ベントオーバーローイング

スーパーセット

 

主動筋と拮抗筋のスーパーセットにおいて最も一般的な組み合わせが、ベンチプレス+ベントオーバーローイングの組み合わせである。

ベンチプレスはプッシュ動作、ベントオーバーローイングはプル動作を伴う、最も一般的なプッシュ・プル・スーパーセットの一例である。

レップ数を8~12レップに設定すれば筋肥大によりフォーカスすることができ、一方、レップ数3~6レップの範囲に設定すれば筋力向上によりフォーカスしたトレーニングスタイルとなる。

 

ベンチプレスの代わりにインクラインベンチプレスを取り入れても良いし、バーベルではなくダンベルを使って、ダンベルインクラインベンチを行っても良い。

 

 

ミリタリープレス+プルアップ

スーパーセット

 

もう一つお勧めのプッシュ・プル・スーパーセットの例が、ミリタリープレス(プッシュ)+プルアップ(プル)の組み合わせである。

肩を鍛えるミリタリープレスと、背中を鍛えるプルアップはそれぞれコンパウンド種目に属するため、3~7レップスの範囲で反復限界となる高負荷でメニューを組めば筋力向上により効果的なスーパーセットとなる。

また、筋肥大によりフォーカスしたスーパーセットを組む場合は、バーベルミリタリープレスをダンベルショルダープレスに変更し、プルアップの代わりにラットプルダウンを取り入れることで、トレーニング強度をやや下げ、トレーニングボリューム(レップ数やセット数)を増大させるようにすると良い。

 

 

コンパウンドセット

コンパウンドセット

 

コンパウンドセットとは、スーパーセットとは異なり、同一の筋肉部位を2種目連続して行い(インターバルは無し)、それを1セットとするセット方法のことである。

スーパーセットと同様、セット間のインターバルは1~3分程度設け、合計3~5セット行う。

 

このコンパウンドセットを取り入れることにより、2つの種目を続けて行うため、同一のターゲット部位に多角度から異なる刺激を短時間で与え、強烈な刺激を与えることができるようになる。

コンパウンドセットのメリットはスーパーセットと同様で、トレーニング時間を短縮しつつも効果的にトレーニングボリュームを増大させられる点にある。

 

 

コンパウンドセットの例:上腕二頭筋

スーパーセット

 

コンパウンドセットを組んで上腕二頭筋を徹底的に鍛える方法を紹介しよう。

例えば、プリーチャーカールとインクラインダンベルカールをコンパウンドセットで行う場合、プリーチャーカールでは0~40°の可動域で上腕二頭筋に最も強い刺激が加わるが、インクラインダンベルカールでは80~120°の可動域で上腕二頭筋に最も強い刺激が加わる。

 

つまり、プリーチャーカールとインクラインダンベルカールをコンパウンドセットで行うことにより、より広い可動域にわたり上腕二頭筋を効果的に活性化させることができるのである。

 

一般に、コンパウンドセットはトレーニング中・上級者に適したテクニックとなっており、各種目を行う際にはマインドマッスルコネクションを駆使してターゲットとなる部位に刺激が入っていることを確認しながら動作を行うことが重要となる(マインドマッスルコネクションにより筋肥大が加速することは2018年の研究報告により明らかとなっている)。

 

 

 

コンパウンドセットの組み合わせ例

 

筋肥大に効果的なコンパウンドセットの組み合わせ例をいくつか紹介しよう。

基本的には3〜5セット行い、セット間のインターバルは1~3分に設定する。

大胸筋

  • ダンベルプレス+ダンベルフライ

 

上腕三頭筋

  • スカルクラッシャー+クローズグリップベンチプレス

 

広背筋

  • ラットプルダウン + ストレートアームラットプルダウン

 

三角筋

  • ダンベルショルダープレス+ラテラルレイズ

 

大腿四頭筋

  • レッグエクステンション+ダンベルランジ
  • バーベルスクワット + ダンベルランジ

 

ハムストリング

  • ハムストリングカール+ダンベルグッドモーニング

 

 

コンパウンドセットの具体例:下半身(脚)トレ

オールアウト

 

参考程度に、私が普段行っている脚のトレーニングを例に挙げ、コンパウンドセットの効果的な導入方法を紹介しよう。

脚トレのメニュー(オレンジ色で囲ったところがスーパーセット

  • スクワット
  • レッグプレス(マシン)
  • レッグエクステンション(マシン)
  • ダンベルランジ

 

  • レッグカール(マシン)
  • ダンベルグッドモーニング
  • ヒップスラスト
  • カーフレイズ

 

上記でも紹介したように、スクワットなどの高重量を扱うコンパウンド種目においては、インターバル無しで行うスーパーセットやコンパウンドセットは向いていない。

よって、レッグエクステンションやダンベルランジといった比較的高回数で攻める種目でコンパウンドセットを組むと良い。こうすることで、トレーニング時間を無駄に延長することなく、より多くの種目数・セット数をこなすことができるようになる。

押さえておこう

セット数↑➡トレーニングボリューム↑➡筋肉量↑



 

 

 

スーパーセットとコンパウンドセットのまとめ

 

今回は、スーパーセットとコンパウンドセットについて詳しく解説を行いました。

インターバルを挟むことなく2種目を連続して行うスーパーセットとコンパウンドセットは、トレーニング時間の短縮を図りながらもトレーニングボリュームを効果的に増大させられる優れたトレーニングテクニックである。

多忙を極める人、そして部位あたりのトレーニング種目数(つまりトレーニングボリューム)を増大させたい人は、積極的にスーパーセット、あるいはコンパウンドセットを取り入れてみよう。



参考文献

[1] Weakley, J. J.,et al (2017) The effects of traditional, superset, and tri-set resistance training structures on perceived intensity and physiological responses

[2] Gabriel A. Paz,et al (2017) Volume Load and Neuromuscular Fatigue During an Acute Bout of Agonist-Antagonist Paired-Set vs. Traditional-Set Training

[3] Ciccone AB,et al (2014) Effects of traditional vs. alternating whole-body strength training on squat performance.