筋肉を減らさない 減量 の最速ペースと3つの具体的テクニック

[記事公開日]2018/01/26
[最終更新日]2022/02/08

体脂肪を落としてLean Body(キレた身体)を手に入れたいけど、苦労して手に入れた筋肉が減量により落ちてしまうのが怖くてなかなか減量に踏み切れないという人も案外多いのではないだろうか。

減量

 

そこで今回は、スポーツ栄養学の権威として知られ、“The Protein Book”の著書でもあるライル・マクドナルド博士の“見解[1]”を基に、筋肉量を極力減らさずに体脂肪を効率的に減らす具体的アプローチ方法を紹介しよう。



疑問1.筋肉量を減らすことなく減量することは可能か

体脂肪率5%

 

回答1
正しい方法で減量を行えば、筋肉量(除脂肪量)を(極力)減らすことなく体脂肪を減らすことは可能である[1]。

 

これまで長年にわたり信じられてきた“減量期に筋肉量の減少は避けられない”という根拠の無い前提を定着させてしまったのは、マクドナルド氏によれば、以下に示す理由によるものだという。

 

減量期に筋肉量の減少は避けられないという誤解が生まれた理由

 

初期の頃に行われた多くの諸研究では、被験者に高強度トレーニングを行わせずに低強度トレーニング(短いインターバル)を行わせ、尚且つプロテイン摂取量が推奨量(2.3~3.1 g/体重kg)を下回った状態で減量を実施することが多かったため最終的に筋肉量(除脂肪体重)の減少を招いてしまったと考えられている。

➡つまり、筋肉を落とさずに減量を成功させるには、これから紹介する以下の2つのポイントを厳守することが大きな重要となる。

 

 

 

筋肉を落とさずに 減量 するための2つのポイント

ハードゲイナー
  •  カロリー不足状態の減量期であっても筋トレの強度は維持する
  • 減量期は、増量期よりもタンパク質を多く摂取する

 

 

カロリー不足状態の減量期であっても筋トレの強度は維持する

筋トレのセット数

 

減量期はエネルギー不足の状態が慢性的に続く期間となるため、筋肉が非常に落ちやすい状況となる。

この状況下で、筋トレの強度を下げてしまうと筋力および筋肉量の低下を招いてしまう。

 

減量期間中に筋力および筋肉量を極力落とさないようにするには、減量時であっても普段通りの高負荷トレーニングを行い、トレーニング強度を維持することが非常に重要となる。

こうすることで、カロリー不足により筋肉が落ちやすい減量期であっても身体は筋肉が必要だと判断するため筋肉の減少を最小限に食い止めることができるようになる。

また減量期は、増量期に比べて身体の回復能力が低下するため、この状況下で増量期と同じトレーニング量をこなすのは、普段以上に疲労が蓄積しやすいという点でお勧めできない。

 

➡したがって、減量期のトレーニングは、トレーニング強度を通常通り維持しつつも、トレーニングのセット数をいくらか減らし、身体を必要以上に疲労させないように心がけるべきである。

 

具体例

 

増量期に100 kgのベンチプレスを5セット行っていたのなら、減量期には100 kgのベンチプレスを3セット行うようにする(最大重量は維持すること)。

 

 

 

減量 期には、増量期よりもタンパク質摂取量に敏感になり、推奨量(2.3~3.1 g/体重kg)を確保するように努める

高タンパク質食材で筋肥大

 

減量期には、維持に多大なエネルギーが必要となる筋肉は非常に落ちやすい状態となるので、普段(増量期)以上にタンパク質の摂取に注意を払うべきである。

2014年に発表されたアスリート選手を対象とした研究報告[2]においても、減量期には増量期以上のタンパク質量を確保することで筋肉量の減少を最小限に抑えることができたと報告されている。

 

減量期間に推奨されるタンパク質摂取量:体重1kgにつき2.3~3.1 g [2]より

例)体重80kgの場合、推奨されるタンパク質:184~248 gとなる



 

疑問2.筋肉を減らさずに 減量 を行う場合の最速ペースは?

減量時の摂取カロリー

 

回答2
筋肉を減らさずに減量できる最速ペースは、週当たり体重の0.5〜1%とされている。

 

これ以上速いペースで減量を急激に行うと、基礎代謝量が落ちて痩せにくい体質に変化するだけでなく、筋肉が落ちる可能性が極めて高くなることが諸研究により分かっている。

 

筋肉を落とさない減量の具体例

体重80 kg男性の場合、筋肉を落とさずに減量を行う最速ペースは、週あたり80 kg×0.05=400 g(あるいは80 kg×0.01=800 g)となる。

つまり、週当たり400~800 gの減量、月当たりに換算すると1.6~3.2 kgの範囲で減量を行えば筋肉を極力維持したまま体脂肪を落とすことができる計算となる

 

さらに、インターネットで減量に関して調べてみると「減量はゆっくり行う方が良い」などという情報が散見されるがこのゆっくり行う減量は「筋肥大の観点」からは適切ではない可能性が高い。

 

 

 

減量 期間は極力短く抑える方が良い

 

回答
筋肉を維持したまま体脂肪を効率的に落とすには適切なペース(週当たり体重の0.5〜1%)で減量を行い、可能な限り減量期間を短く抑えるのが望ましい(ライル・マクドナルド氏の見解[1])

 

減量期間を短く取る場合(A)と長く取る場合(B)の2通りの減量方法を比較して、どちらがより優れているかを考えてみよう。

 

A. 短期間の減量の場合

カロリー不足量を1000 kcal/日とし、1.5ヶ月で体脂肪を落とす
落とせる体脂肪量=1000×28×1.5÷7.2=5.8 kg

 

B. 長期間の減量の場合

カロリー不足量を500 kcal/日とし、3ヶ月で体脂肪を落とす
落とせる体脂肪量=500×28×3÷7.2=5.8 kg

 

A、Bとも最終的に落とせる体脂肪量は計算上同じ(5.8kg)である。

 

➡異なる点は、短期間で行う減量Aは、1日当たりのカロリー不足量が長期間の減量の場合の2倍であることと、そして短期間の減量計画ではその期間が、長期間の減量に比べて半分の期間で済むという点である。


減量は短期間で終えた方が良い理由

デッドリフトで筋肥大

 

減量期間を短期間で終えられる最大のメリットは筋肥大トレーニングにいち早く復帰できる点である。

 

減量とは1日のカロリー収支が赤字(カロリー不足)となるように食事管理を徹底することであり、慢性的にカロリー不足が続く減量期間において筋肉量の増大は特殊な例を除いて望めない

特殊な例について知りたい方はこちらの記事<筋肥大と脂肪燃焼を両立する方法>を参照していただきたい。

さらに、慢性的にカロリー不足が続く減量期間中は、筋肉量減少のリスクも少なからずあるのは確かである。

 

➡したがって、減量を短期間に抑えることで筋肉量減少のリスクを最小限に抑えることができるだけでなく、筋肥大トレーニング(バルクアップ)に素早く復帰することができる。

 

 

減量期間を短く抑えるには

リーンバルク

 

減量期を短期間で済ませるためには、極力脂肪を付けない方法で筋肉量を着実に増やす増量方法<リーンバルク>を選択するのが良い。

増量期に蓄積し過ぎた体脂肪はいずれ時間をかけて落とさなければならないのだから、普段から脂肪を極力付けないようにして増量を行えば、後に待ち構えている増量期間を短く済ませることができるだけなく、増量期間を短く抑えた分だけ増量期間を長くとることができ、筋肉量を効率的に増大させていくことができる。

詳しいリーンバルクの方法については以下のページを参考にしていただきたい。

 

 

筋肉を落とさない減量方法のまとめ

ワキ毛

 

今回は、筋肉を減らさずに体脂肪だけを効率的に燃焼させる減量方法について取り上げてみました。

筋肉を大きく成長させるのはそう簡単ではないからこそ、正しい減量のペースおよびその具体的方法を熟知しておきたいものである。

上記ポイントをしっかりと守ってキレッキレのカラダを手に入れよう!



苦労して手に入れた筋肉・筋力を落とすことなく体脂肪だけを効率的に落とすための摂取カロリーおよびPFCマクロバランスの設定方法(完全ガイド)については以下のページからご覧ください。

 

 

減量についての補足

減量

体重80 kg男性の場合

 

筋肉量を落とさない減量の最速ペースは週当たり(80×0.01=)800 gの減量(月当たり約3 .2kg)となる。

 

この減量を1ヶ月半行うと

84.5 kg(体脂肪13%・除脂肪体重73.5 kg)(2017年9月のinbody記録)から、4.5 kgの体脂肪が落ちると計算されるので、

1か月半後は、体重80.0 kg体脂肪8%・除脂肪体重73.5 kg)という身体になっているはずである。

 

なお、週当たりに800 g減少するには体脂肪1 gあたりのカロリー数が7.2 kcalであることを考慮して、メンテナンスカロリー数から1日当たり(800 g × 7.2 kcal/g ÷ 7日=)823 kcalを差し引いたカロリー数を1日の摂取カロリー数とすればよいことになる。

減量時の摂取カロリー数 = メンテナンスカロリー - 823 kcal

 

メンテナンスカロリーの最も精密な求め方についてはこちらの記事で求めることができます。

参考にしていただけたら幸いです。



➡<こちらもオススメ>筋肥大と脂肪燃焼を両立するための3つの具体的方法

<こちらもオススメ>【 ミニ減量 】リーンバルクでつき過ぎた脂肪を効率的に落とすミニ減量の具体的方法

参考文献

[1] Lyle McDonald (2015) Size of Deficit and Muscle Catabolism – Q&A

[2] Helms ER,et al (2014) A systematic review of dietary protein during caloric restriction in resistance trained lean athletes: a case for higher intakes