ふくろはぎ(以下、カーフと呼ぶ)は多くのトレーニーにとって弱点部位でもある。
その主たる理由として考えられるのが、”カーフを鍛える頻度が不十分であること”、”カーフを鍛える強度が不十分であること”、そして”遺伝的にカーフが発達しにくいこと”のうちのどれかである場合が多い。
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カーフは遺伝的に発達しにくい場合がある
カーフは発達しづらい筋肉部位であると言われることが良くあるが、そう言われるのには主に以下の2つの理由が考えられる。
1.カーフはテストステロンが作用しにくい筋肉部位
2000年の研究報告[1]によると、カーフはテストステロンが作用しにくい筋肉部位であることが示されている。
つまり下半身のさらに下半分に位置するカーフにおいてはアンドロゲンレセプター量が極めて少なくなるため、テストステロンが作用しずらく、筋肉の発達が起こりにくいと考えられるのである。
2.遺伝的にアキレス腱が長い場合
個人により程度には差があるが遺伝的にアキレス腱が長い場合、必然的にカーフ(筋肉)の長さが短くなり、結果としてカーフの体積が小さくなってしまう。
アキレス腱が長いとカンガルーのようにジャンプ力には恵まれるが、カーフを大きく発達させたい人にとってはそれがどうしても弱点となってしまう。
もちろん、カーフとアキレス腱の長さの割合は遺伝的要因によって左右されるが、継続的かつ適切にカーフを鍛え続ければある程度はその弱点をカバーすることができるはずである。
カーフの構造
出典:dailybandha
カーフは別名”下腿三頭筋(かたいさんとうきん)”とよばれ、腓腹筋(外側頭・内側頭)とヒラメ筋の3つの筋肉群で構成されている。
つまり、カーフ全体をくまなく鍛えるには腓腹筋(外側頭・内側頭)とヒラメ筋のそれぞれにアプローチを取ったトレーニングメニューを組む必要がある。
それでは、腓腹筋とヒラメ筋の決定的な構造の違いを理解してカーフトレーニングの質を高めよう。(超簡単)!
腓腹筋(ひふくきん)とは
腓腹筋はカーフの表層部に位置し、カーフの盛り上がりをつくる筋肉群である。
もう少し詳しく見てみると、腓腹筋は脚の内側に位置する腓腹筋内側頭と脚の外側に位置する腓腹筋外側頭の2つの筋肉から構成されているため、カーフレイズなどを行う際は両足の距離を変化させて鍛え分ければ良い(後ほど紹介)。
ヒラメ筋とは
ヒラメ筋は、その大部分が腓腹筋に覆われており、深層部に位置する筋肉群である。
深層部に位置しているのなら外から見えないのだから、「鍛えなくてもいいのでは?」と思われるかもしれないが、ヒラメ筋の体積は腓腹筋よりも大きいため、カーフ全体のサイズアップを図るにはヒラメ筋にアイソレートしてアプローチを取る必要がある。
腓腹筋とヒラメ筋を鍛え分けるには
腓腹筋とヒラメ筋は、足関節を底屈させる(つまり、カーフレイズなどのつま先立ちの動作)作用を持っている。
つまり、カーフレイズを行えば、腓腹筋とヒラメ筋の両方を鍛えることができる。
腓腹筋は、膝関節と足関節の2関節に跨る筋肉(二関節筋とよばれる)であるため、膝関節の屈曲作用と足関節の底屈作用を持つ。
一方、ヒラメ筋は、足関節だけに跨る筋肉(単関節筋とよばれる)であるため、足関節の底屈作用しか持たない。
これらの事実より、腓腹筋とヒラメ筋の鍛え分けについては以下のように簡単にまとめることができる。
腓腹筋:”スタンディング”で行うカーフ種目
ヒラメ筋:”シーテッド”つまり座って行うカーフ種目
を取り入れると良い。
つまり、カーフを構成する筋肉群をすべて鍛えるにはスタンディングとシーテッドの(少なくとも)2種類のトレーニング種目を採用するのが合理的な選択となる。
カーフの筋トレ 方法と3つのポイント
これまでの知識をフルに活用してカーフを鍛える筋トレ種目およびポイントを順番に見ていこう。
カーフのオススメ筋トレ種目
第1種目:スタンディングカーフレイズ
- ターゲット部位:腓腹筋
立って行う”スタンディングカーフレイズ”を行う場合、スミスマシンを使って行うスタンディングカーフレイズか、レッグプレスマシンを使って行うスタンディングカーフレイズを行うと良い。
レッグプレスマシンを使って行うスタンディングカーフレイズを行う際は、両足をくっつけるように足幅を狭めて動作を行えば腓腹筋外側頭(外側)に、足幅を肩幅程度に広めて動作を行えば腓腹筋内側頭(内側)により強い刺激が加わるようになる。
(上の写真では、腓腹筋外側頭をターゲットにしている)
腓腹筋に限った話ではないが、カーフのサイズアップを目指していくには段階的にウエイトを増やしていきオーバーロードを確実に達成できるようにトレーニング計画を立てることが重要となる。
第2種目:シーテッドカーフレイズ
- ターゲット部位:ヒラメ筋
座って行う”シーテッドカーフレイズ”はヒラメ筋をターゲットとする場合に取り入れると良い。
事実、2012年発表された研究報告[2]においても、膝を曲げて座った状態でカーフレイズを行った場合、ヒラメ筋の活性度合いが顕著に上昇したことが示されていることからも、シーテッドカーフレイズはヒラメ筋のアイソレーション種目として選択するのが良いと考えられる。
冒頭でも述べたようにヒラメ筋は腓腹筋よりも大きな体積を持っているので、シーテッドカーフレイズはカーフ全体のサイズアップには必ず取り入れたい種目といえる。
カーフを鍛えるときの3つのポイント
1.フルレンジで行う。
カーフを鍛えるときはフルレンジで行う。
というのもカーフは普段の生活での使用頻度が極めて高く、負荷に対する耐性が非常に強い。
しかし、普段の生活ではカーフをフルレンジで使用する機会は滅多に無いため、カーフトレーニングの際にはフルレンジで強烈に鍛え上げることが何より重要となる。
さらに、2003年に京都大学から発表された研究報告[3]によると、カーフレイズを行う際はボトムポジション時に最も強いトルクを生み出すことができると示されている。
つまりカーフレイズ時は、かかとの位置を可能な限り下げ、ボトムポジションで一旦静止してからマインドマッスルコネクションを駆使して爆発的に動作をフルレンジで行い、もうこれ以上無理!というところまで動作を行うようにする。
爆発的に動作を行うとはボトムポジションで力を貯め込んで半ば”ジャンプするように”勢い良くトップポジションまで動作を行うことをいう。
2.トップポジションで静止させる
カーフレイズを行う際、ボトムポジションから爆発的に動作を行った後、トップポジションで1~2秒ほど静止し、筋肉の緊張状態を維持するようにすると良い(ピークコントラクション)。
これにより、カーフの緊張持続時間(TUT)を長くとることができ、トレーニング強度を高めることができる。
ご存じのとおり、カーフレイズ自体の動きは可動範囲があまり大きくないので、何となく動作を行うとあっという間に動作が終わってしまうので、TUTを意識してトレーニングを行うことが効果的である。
3.反動を使わない
カーフレイズを行う際、トップポジションからボトムポジションに戻る時はゆっくりと動作を行うようにする。
また、ボトムポジションで反動を使ってトップポジションにすぐさま移行するのではなく、ボトムポジションで1秒ほど静止させてカーフを完全にストレッチさせてから、爆発的に拳上を再開するようにする。
ボトムポジションで1秒、ピークコントラクションで1~2秒静止させれば、1セットにつきTUTを30~40秒ほど取れるはずである(8レップの場合)。
カーフ筋トレの最適なトレーニングボリュームと頻度
2007年に発表されたトレーニングボリュームに関する有名な研究報告[4]を基にすると、カーフの筋肥大を最適化させたい場合には1回のトレーニングで合計70レップ、週に3回程度のアプローチが合理的であると結論付けられている。
また、カーフの筋肥大に効果的とされるレップ数は意見の分かれるところであり、低負荷高レップトレーニングと高負荷低レップトレーニングの両方を取り入れた方が良い。
カーフのトレーニングメニュー例
- スタンディングカーフレイズ:6~8レップ×4セット
- シーテッドカーフレイズ:12~15レップ×3セット
- 合計約70レップ
週3回のカーフトレーニングは少々現実的では無いようにも思えるので、週1~2回スタンディングカーフレイズとシーテッドレイズの2種目を行うと良い。
カーフの筋トレ のまとめ
今回は、カーフの筋トレにフォーカスをしてみました。
カーフを大きく発達させるためには、やはり忍耐強くカーフに対してアプローチを取り続ける粘り強さが大切なのではないかと思います。
普段、カーフの筋トレに意欲的に取り組んでいるトレーニーはそう多くないため、見事に発達したカーフを手に入れることができればそれだけで注目の的になるはずである。
週2回の70レップスで見事なカーフを手に入れてみよう!
参考文献