筋肥大 のカギを握る栄養摂取(プロテイン)の タイミング は 筋トレ前

[記事公開日]2018/01/10
[最終更新日]2018/03/24

筋肥大のポテンシャルを最大限に引き出すには、アナボリック状態をいかに長く維持できるかが大きなポイントとなる。

アナボリック状態を維持することにより、四六時中、筋タンパク質合成のスイッチをオンにすることができる。


 

特に、筋トレ直後の“栄養摂取のゴールデンタイム(アナボリックウィンドウとも呼ばれる)”にプロテインを摂取することがいかに重要であるかはトレーニーであればもはや揺らぐことのない“常識的事実”となっていることだろう。

しかし、トレーニング直後の栄養摂取よりも重要な栄養摂取のタイミングがあるとしたら?

今回は、筋肥大をさらに加速させる重要な栄養摂取のタイミングを確認してみよう。

まず始めに筋肥大について軽くおさらい。

筋肥大 とは

 

トレーニングで損傷を受けた筋繊維は、適切な栄養摂取を行うことにより、以前よりも強く、そして太く発達する。

これが筋肥大である。

 

カタボリックとアナボリック

 

筋肉内では、カタボリック、アナボリックと呼ばれる相反する2つの作用が常に起こっている。

 

  1. カタボリック(分解作用)・・・筋肉を分解して必要なエネルギーを取り出す作用
  2. アナボリック(同化作用)・・・筋肉を合成する作用

 

トレーニングにより最終的に筋肉量が増加するのか減少するのかは、このカタボリック状態とアナボリック状態の最終的なバランスにより決まる。

カタボリックが優勢:筋肉量が減少

 

カタボリック>アナボリックとなる状況下では、分解される筋肉量が合成される筋肉量を上回るため正味の筋肉量は減少する。

 

これは我々が避けるべき事態である。

 

アナボリックが優勢:筋肉量が増加

 

アナボリック>カタボリックとなる状況下では、合成される筋肉量が分解される筋肉量を上回るため正味の筋肉量は増加する。

 

つまり、筋肥大を効率的に達成するには、アナボリック状態が優勢となる時間を可能な限り長く維持することが最も重要になる。

 

ポイント

特に、高強度・高ボリュームトレーニングの最中はアナボリック作用とカタボリック作用の両方が活性化された状態となり、筋肉合成と筋肉分解の両作用が活発になる。

この状況下でどちらの作用が優勢になるかは、トレーニング前の栄養摂取の内容とタイミングによって決まる。

 

筋肥大 のカギを握る栄養摂取のタイミングは 筋トレ前

 

筋トレ前 のストレッチ
事実
トレーニング前に栄養摂取を怠ると、トレーニング中はカタボリック状態となる。

 

トレーニング前に適切な栄養摂取を行わないでトレーニングを行った場合、トレーニングのカタボリックが優勢状態となり、筋肉に十分な栄養を供給できないままトレーニングを行うこととなる。

 

➡その結果、トレーニングパフォーマンスが低下するだけでなく、トレーニング中からトレーニング後にかけてカタボリックが優勢となる状態が続くため、こうした状況は筋肥大になんら有益な状況を生み出すものではないため、なんとしても回避したい事態である。

 

こうした状況を回避し、かつ四六時中アナボリック状態を維持するには、必ず押さえておくべき重要な栄養摂取のタイミングを理解しておくことが何より重要。

 

そのタイミングとは、ズバリ、筋トレ前および筋トレ後である(特に筋トレ前)

これらのタイミングがなぜ筋肥大の観点から重要なのかを見ていくことにしよう。

 

①重要:筋トレ前 の栄養摂取について

 

ポイント
筋トレ前に栄養摂取を行うことで、トレーニング前・中・後の全てのタイミングにおいてアナボリック状態を維持することができる。

 

2001年に発表された研究[1]では、必須アミノ酸(BCAA)と炭水化物をトレーニング前に摂取した被験者ら(グループA)と、トレーニング直後のみに摂取した被験者ら(グループB)のアミノ酸バランスを測定した。

 

アミノ酸バランスが負(-)の場合はカタボリック状態、アミノ酸バランスが正(+)の場合は、アナボリック状態と理解してもらいたい。

 

その結果、グループAでは、トレーニング中および後の両タイミングにおいて正(+)のアミノ酸バランスとなったのに対し、グループBでは、トレーニング中は負(-)のアミノ酸バランスを示し、トレーニング後の栄養摂取後にようやく正(+)のアミノ酸バランスに転じる結果となった。

 

つまり、トレーニング前に適切な栄養摂取を行っておかないと、トレーニング中はカタボリック状態に陥り、筋肉量は減少するという事実があるのだ。

 

したがって、トレーニング中におけるカタボリック状態を回避するには、次のポイントを押さえておくと良い。

 

ポイント
筋肥大を目的としたトレーニングを行う場合は、1~2時間前までに炭水化物とタンパク質(プロテインパウダー20~30g)を含む食事を摂っておくことで、トレーニング前・中・後の全てのタイミングにおいてアナボリック状態を維持することができる。

 

 

②筋トレ直後の栄養摂取について

 

 

驚かれる方もおられるかもしれないが、“アスリート選手を対象とした、筋トレ直後にプロテインを摂取することで筋肥大が促進される”という仮説に対して決定的な根拠を与える研究報告は現在のところなされていない。

トレーニング直後のプロテイン摂取の習慣は、マーケットが作り出した戦略であると考えることもできる(悪気は全くないので悪しからず)。

これらの状況を踏まえた上で、筋トレ直後の栄養摂取が特に推奨されるケースを考えてみよう。

 

筋トレ直後の栄養摂取が特に推奨されるケース

 

 

何らかの理由で筋トレ前に十分な食事を摂らずにトレーニングを行っ(てしまっ)た場合は、筋トレ前・中・後のカタボリック状態からいち早くアナボリック状態に転換させるために、筋トレ直後にタンパク質と炭水化物を素早く摂取するのが望ましい。

一方、筋トレ前に十分に栄養補給を行っておくことで食後5時間程度はアナボリック状態を維持できるため、筋トレ直後に慌てて栄養摂取を行う必要性はあまり無く、トレーニング直後~トレーニング2時間以内に栄養摂取を行えば十分に筋肥大を最適化できると考えられる。

 

筋トレ直後のプロテイン摂取に関する現在の科学的見解
筋トレ直後の素早い栄養摂取が筋肥大に与えうる影響度:少~中程度

 

 

結論:1日に必要となるタンパク質を確保することが最優先

 

筋肥大を効率化する上で、栄養摂取のタイミングよりも重要なポイントは以下の2点を厳守することである。

 

  • 1日に必要となるタンパク質摂取量を確保
  • 総摂取カロリー数が総消費カロリー数を上回るように食事管理を徹底

 

最も重要なポイントは、筋肥大に必要となるタンパク質量(体重(kg)×2~3g)を確保しつつ、総摂取カロリー数が総消費カロリー数を下回らないように食事管理を行うことである。

 

ポイント
筋トレにより損傷を受けた筋肉は、筋タンパク質合成により、以前よりも太く大きく回復するが、この筋タンパク質合成は筋トレ終了後24時間~48時間(最長)は持続するため、トレーニング直後の栄養摂取のタイミングよりも、長期的なスパンで栄養摂取を継続的に行えるかどうかがより重要なポイントとなる。

 

➡筋肥大に最適な高タンパク質源については、筋肥大に最適な高タンパク食材5種とそれらの効果の記事を参考にしていただきたい。

 

 これまで、トレーニング前の栄養摂取にあまり意識を払わなかったトレーニーは、トレーニング前の栄養摂取を十分に行うことで、以前よりも筋肥大を最適化できるだろう。

筋トレ前には十分に栄養摂取をおこなうべき


筋トレ直後にプロテインなどの栄養摂取を素早く行うことは、筋肥大を最適化する上で重要であるため、筋トレ直後に栄養摂取を行う習慣のあるトレーニーはこれまで通り、栄養摂取を行っていただきたい。

➡筋トレ直後~2時間以内に栄養摂取を行うと”なお”良い

 



参考文献

[1] Tipton KD,et al (2001) Timing of amino acid-carbohydrate ingestion alters anabolic response of muscle to resistance exercise.