HMB は筋肥大効果があるのか

[記事公開日]2017/12/25
[最終更新日]2018/02/05

そもそも HMB サプリとは

 

HMBとは3−ヒドロキシイソ吉草酸(β‐ヒドロキシ‐β‐メチル酪酸)という脂肪酸であり、必須アミノ酸の1種であるロイシンが代謝される際に生成される物質である。

 

HMB サプリが持つとされる効果

 

  • 筋肉量増大(筋肥大)
  • 筋分解の抑制(カタボリックの抑制)
  • 筋力アップ
  • 体脂肪量減少

 

これらの効果のメカニズムについてごく簡単に触れておこう。



HMBサプリの効果のメカニズム

  • 筋肉量増大(筋肥大)および筋力アップ

➡HMBはインスリン様成長因子(IGFs)および成長ホルモンの分泌を増大させる

 

  • 筋分解の抑制(カタボリックの抑制)

➡HMBは筋核の破壊を抑制する

 

  • 体脂肪燃焼

➡HMBは酸化代謝を促進する

 

このように、HMBが持つとされる効果は、トレーニーであれば喉から手が出るほど欲しくなるような素晴らしい効果のオンパレードである。

しかし、それらの効果について「待った!」の声がかかった。

 

最新の調査ではHMBの効果は認められないと結論

 

今回、2017年に発表された最新のメタ分析(複数の研究成果を統合して行う分析)[1]によると、トレーニング初心者およびトレーニング経験者の両者においてHMBサプリの摂取による上記の効果は認められなかったと結論付けられている。

 

HMBサプリ発売から日を追うごとにその効果は否定される傾向に

これまでにも、複数の研究報告を統合しMHBサプリの効果についてより高い見地から分析を行うメタ分析が行われている。

HMBの筋肥大効果に対する見解を年代順に紹介しよう。

 

2002年のメタ分析[2]
HMBサプリは、トレーニング初心者およびトレーニング経験者において筋トレと併用することで筋肉量増大および筋力向上に効果のあるサプリメントであると結論。
2009年のメタ分析[3]
HMBサプリは、トレーニング経験者において僅かな筋肉量の増大効果が認められ、トレーニング初心者においては多少の効果が認められると結論。
2015年のメタ分析[4]
 HMBサプリは筋トレと併用することで高齢者において筋肉量の減少に効果があると結論。

 

日を追うごとにHMBサプリの効果に疑問符
このように、HMBサプリに関する研究が進められるにつれ、次第にその効果に疑問符が付けられていくようになってきた。

 

最新のメタ分析では HMB サプリメントは効果なしと結論

 

そして今回の2017年に発表された最新のメタ分析において、HMBサプリはトレーニング初心者およびトレーニング経験者の両者において筋肥大や体脂肪減少および筋力向上といった効果は認められないと結論付けられてしまった。

➡今回のメタ分析では、主として20代(前半)の男性を調査対象とし、彼らのトレーニング歴も4年以上となっており、これらの調査報告を我々に適応するのは何ら問題なさそうである。

 

HMBサプリのまとめ(2017年12月現在)

これまでに発表された研究報告を総括すると、トレーニング経験者において筋肥大や筋力向上といった効果はHMBサプリには認められず、HMBサプリの効果を高める目的でクレアチンなどのサプリメントと併用したり、サプリの摂取量を変えるなどして、その効果に関する様々な調査が行われたが、いずれにおいてもHMBサプリの効果をサポートする結果は現在のところ得られていない。

 

➡しかしながら、今回のメタ分析において調査対象となった論文数はわずか“6”であり、HMBサプリの効果についてのさらなる分析が必要であると考えられる。

 

液体状HMBサプリに関しては更なる調査が必要

 

さらにこれらの研究では、一般に吸収速度が遅いといわれるタブレットや粉末状のHMBサプリが主に使用されており、次世代HMBサプリとよばれる吸収速度の速い液体状の“遊離酸型HMBサプリ”を使用した場合にもたらされる結果に関しては、さらなる研究が必要であると述べられている。

 

HMB の効果について補足

 

HMBサプリは高齢者には効果あり

 

 

今回の分析では、特に筋肉の衰えが顕著な高齢者が、筋トレと併用してHMBサプリを摂取することで、ある程度の筋肉量増大効果を享受できる可能性があることを示唆している。

我々のようなトレーニング経験者(および初心者)においてその効果が認められない理由として挙げられているのが、次の通りである。

 

トレーニング経験者にHMBサプリ効果が認められない理由

 

 

一般的なトレーニーであれば、トレーニング、栄養摂取、そして休養といった筋肉の発達に必要な要素に関してしっかりと注意を払い、そしてそれらの要素はほぼ最適化されているため、サプリメントが活躍する余地がないと考えられているためである。

 

考察

 

今回のメタ分析の発表から導き出せるひとつの“考え”として、サプリメントはその名のごとくサプリメント(supplement:栄養補助食品 )であり、それ以上でもそれ以下でもないという点である。

これは、世の中に広く普及しているサプリメントのひとつ “マルチビタミン&ミネラル“が置かれている状況に良く似ている。



HMBサプリとマルチビタミンサプリ

 

 

2012年に発表された“マルチビタミン”に関するメタ分析[5]においては、マルチビタミンサプリメントの摂取による死亡リスク低減に効果は認められないとされ、さらに2006年のメタ分析[6]においても、ガンや心臓病といった病気の予防にマルチビタミンサプリメントが有効であるという根拠はないとしている。

 

さらに、マルチビタミンサプリメントに含まれる成分の一つであるビタミンB12について例を挙げると、1日に必要なビタミンB12の摂取推奨量は、2.4 ugであるが、牛肉100 g当たりビタミンB12は1.3 ug含まれており、牛肉を200 g摂取するだけで1日に必要な量を摂取することができる。

 

やはり食事から摂取するのが一番

 

 

このように、筋肥大や筋力向上は普段の適切な栄養管理と適切なトレーニングを確実に行うことで実現されるのであり、サプリメントの力を過信し過ぎることはあまり賢明とは言えなさそうである。

サプリメントの手助けを適度に借りて筋肥大を目指していこう。



参考文献

[1] Sanchez-Martinez Javier, et al (2017) Effects of beta-hydroxybeta-methylbutyrate supplementation on strength and body composition in trained and competitive athletes: A meta-analysis of randomized controlled trials.Journal of Science and Medicine in Sport https://doi.org/10.1016/j.jsams.2017.11.003

[2] Nissen SL, et al (2003) Effect of dietary supplements on lean mass and strength gains with resistance

[3] Rowlands DS, et al(2009) Effects of β-hydroxy-β-methylbutyrate supplementation during resistance training on strength, body composition, and muscle damage in trained and untrained young men

[4] Wu H, et al (2015) Effect of beta-hydroxy-beta-methylbutyrate supplementation on muscle loss in older adults: A systematic review and meta-analysis

[5] Helen Macpherson, et al (2012) Multivitamin-multimineral supplementation and mortality: a meta-analysis of randomized controlled trials

[6] Huang HY, et al (2006) The efficacy and safety of multivitamin and mineral supplement use to prevent cancer and chronic disease in adults: a systematic review for a National Institutes of Health state-of-the-science conference.